森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

クズ(マメ科)

2006年09月13日 | 自然観察日記
 秋の七草をいくつか取り上げてきたが、まだのものが2つあって、そのうちの一つがクズ。厄介者のつる植物であるが、せめてこの時期は花など愛でてやってもいいのではないか。紫色の花は少し控えめに大きな葉の影に隠れて咲いている。
 厄介者扱いはされるが、大切な働きもある。本来、森の端は順次樹高や草丈が低くなる形になっていて、森を構成する植物の葉が森全体を包み込む構造になっていると考えられる。したがって森林内部は閉鎖された空間になり、湿度などが一定に保たれ安定した環境になる。つまり、外部からの風などが森の中に直接吹き込まないようにガードしている植物群があるのだ。森本体の高木林を外側から保護する働きをするものをマント群落と呼ぶが、その構成種の重要なものがクズなどのつる植物でもあるのだ。
 森の樹を伐採するとこの構造が崩れ、乾いた風が森の内部に入り樹木が枯死する現象が起こる。ひと頃、配慮がなされないまま高山観光道路開発が行われ、貴重な森が数多く死滅した事実がある。
 それ以外に、吉野葛で有名なクズでんぷんの原料でもある。私は甘党で葛餅が大好きである。

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