亜高山帯に行くとよくこの種が出てきます。花は小さくアカネ科の優しい感じの種ですが、名前を尋ねられて種名が思い出せません。「ヨツバムグラ、オオ何とかヨツバムグラ・・」と答える始末で、「オオバノ」がどうしてもその場では出てきませんでした。いつも見ているものですから分かっているつもりでもうろ覚えのものが多くありますね。
久しぶりの出会いです。以前長野の栄村の奥で観て以来のこと、しかもその時は花がない季節でしたから自然界で花を見るのはこれが初めてのような・・・。花の色が濃い青色で、これも新鮮な感じがします。あいにく、木道から下で目の高さがかなり上。木道から降りたいのですができそうにありません。見かけたのはこの数株だけで、もっと出てきてもよさそうなものですが尾瀬のミヤマスミレは個体数が少ないのでしょうか。なかなかの群落を形成することのある種ですから、花が咲き揃うまとまった群落を見てみたいものと思います。
ネットの何かを見たのか、「尾瀬にエゾイチゲがある」というのを真に受けて見慣れないイチリンソウをエゾイチゲと思い込んでしまいましたが、どこかおかしい!持ち帰っての調べでサンリンソウと判明しました。過去に一度サンリンソウを観た経験はあるのですがその時の印象とも異なっていましたからストレートには結び付来ませんでした。こにあるサンリンソウもかなりの個体変異のようなものもありガクの大きさなどにも幅があります。
紛らわしくさせているのがニリンソウです。所々に自生しています。サンリンソウと並んで生育していればその以外を明確にわかるのですが、ところどころの出現では時に混乱をしてしまいます。しかし、今回同行された方はニリンソウはしっかりと識別することができていました。
鳩待ち峠から山ノ鼻に下る登山道沿いにシラネアオイの小さな群落が柵に囲まれて花を咲かせていましたが、カメラを向ける気にはならずそのまま歩き続けると一株のオオサクラソウが花をつけていました。山の中でこの花を見るのは久しぶりのことで、ちょっとした興奮状態です。かなり前に焼山に向かったことがありますが、そこにはかなりの個体があったことを思い出し、このあたりにももっとあるのだろうと見渡しましたが木道沿いにはこの個体以外には見当たりません。木道から離れて沢沿いを探せばきっともっと自生しているとは思いますが、場所が場所だけにまた人を案内している最中では勝手な行動はできません。目の前の個体は出会えた唯一の個体でそれも開花中、一時の感慨にふけります。
コウモリソウ属の種が複数観察できました。ヨブサマソウと近縁のイヌドウナです。茎に翼が発達していることが決め手です。深山の比較的湿った場所に時に群落を作って生育しています。花は7月下旬頃からで、この季節はまだつぼみも確認できません。東北では「ボンナ」といい山菜として重要な存在のようです。
コウモリソウ属の種でもい一種。イヌドウナやヨブスマソウではないと確信はしていたものの持ち帰って調べてコウモリソウと分かりました。自然界で確認したのは初めてで、書で学んだコウモリソウと現場で観た種が一体になってようやくコウモリソウを理解できたという思いです。葉の柄には翼がなく、また茎をだくこともありません。葉は浅い5裂。今までの認識はコウモリソウはどちらかというと太平洋側の種というイメージでしたから、尾瀬にあることがこれもまた驚きなのです。
写真で見ると実に愛らしい湿原の花の代表種のような感じがするのですが、尾瀬ヶ原の中では存在感がまるでありません。花が小さく木道が高くいため目に入らないのです。木道がもう少し低く目線に近ければ感激も違うのですが、遠くから見て想像を膨らませるしかありません。
それでもなんとか足元にある花を木道にしゃがみ込んで写真を撮りました。往来する人が少なかったのでこういうことができるのですが、ラッシュ状態では不可能な話。シャクナゲという名前が付いてはいますが、全くの別属。しかし、シャクナゲと同じ常緑のツツジ科の低木です。ツツジ科の草本は知りませんが、ツツジ科の種は実にいろいろな環境に適応しいろいろな形態に変化しています。小型のツツジ科の種は寒冷地に適応した種が多くその中でヒメシャクナゲは寒冷の湿地に適応したものと考えられます。
やや遅めの花が見られました。サトイモカの植物ですから、白い花弁様のものは苞に当たり、中の棍棒状の表面に出ているたくさんの突起構造が一つ一つの花になります。両性花で花弁などはなく雌しべと4本雄しべでできています。