今回のカヤノ平の散策は花訪ねる意味合い以上に粘菌という不思議な生き物に出会う旅でもあったのかもしれません。それぞれの種については全く知識はありませんが、粘菌は不思議な生活をする生き物であることは学びました。しかし、フィールドで観察することはほとんどなくその不思議さも薄っぺらいもの。足早に歩いた割には数種の粘菌が目に留まりました。カヤノ平の大径木のブナ林は粘菌の種類が多い場所なのかもしれません。色彩は赤や黄色や白色と多彩でこれだけ見ていても楽しいもの。南方熊楠の話を聞いたときは粘菌の世界に入ろうかとも思った若い頃がありました。この年ではすでに遅いと思いますが機会があれば粘菌の世界をのぞいてみたいものと思っています。
簡単な生活史を振り返るだけで謎はいくつも出てきます。実験室で培養しながらその謎を追求する手法も重要ですが、私はフィールドで粘菌に出会ったときにゆっくりと観察をしながら知識を積み上げていくことにします。
粘菌は動物とも植物とも言えない存在です。もっとも生物を動物と植物に分けようとする考えがそもそも間違えで、どちらにも属さない新たなものがあるのだとかんがえなければいけません。ある時は単細胞のアメーバのような生活をして単独で生きているにもかかわらず、何かの信号で一斉に集まって伸縮する集合体になり動物のように移動でします。そして、それが固着して胞子を作る個体へと変化し多数の胞子を空中に飛散させます。この胞子が地面に落ちて発芽して最初のアメーバのようになるとされます。
カヤノ平北ドブ湿原の散策道脇にレイジンソウが多く見られました。薄黄色の花で周囲と同化しているため気づきにくい花です。中部から北主に日本海側の山地の湿った場所に生育するとされ、カヤノ平はまさにそれに当てはまります。麗人草という名前に反して今回の草姿は見る個体すべてがだらしなく倒れていて花茎も途中から屈曲している始末です。強風か大雨にでもあったのでしょうか?美しい花姿の個体に出会えなかったのが残念です。
倒れ掛かった草藪の中からオオレイジンソウの葉を探し出して記録にと写真を撮りました。葉を見る限りトリカブトの仲間というのは納得できます。日本海側の山地に生育するとある文献にありましたが、私が県内を歩いている範囲では全く見ていません。そこで、採集記録を調べてみると苗場山や糸魚川の県境にわずかに記録されている程度で「日本海側の山地」というのはあまり当てはまらないように思いました。
今年のカヤノ平はニッコウキスゲはハズレ年。それでも花のない個体が沢山ありますから来年は多くの花が期待できるかもしれません。それに代わってミズギクが華やかでした。黄色に埋まるカヤノ平のポスターにはかないませんが、緑の湿原に点在する黄色いミズギクの景観は素朴な自然の趣があって私は好きですね。
細めの舌状花がたくさん並んだ頭状花。1つだけつけます。根元には葉が残っているそうですが、今回は確認できずです。オグルマの仲間とされますから里山のサワオグルマの近縁種。似たような葉があることでしょう。草丈は30~40cm位でしょうか。
葉は三角状で基部はへこみ耳が幾分張り出します。さらに、葉の先が尖っているのが特徴です。やはり大きめの葉で25cmくらいです。この種も幾分湿った場所に見られるようですが、林の縁などでも時々生育しています。
同属にオタカラコウという種があり、マルバダケブキとともに似たような場所で見かけますからうっかりすると間違えてしまいます。オタカラコウの花はこれほどの頭花はまずありませんから、尾状に沢山の頭花をつけていればメタカラコウで間違いないと思います。
時には大きな群落になる大型のマルバダケブキが迎えてくれました。1回目はまだつぼみでしたが2回目は満開の花を見せてくれました。深山の湿った場所などに生育しています。葉が大きくフキのようです。長く伸びでた花茎の先にこれもやや大型の頭状花が存在を鼓舞しているようです。