森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

枯葉にうずもれるタツナミソウ

2006年11月30日 | 自然観察日記
 季節外れということになるのだろうか、タツナミソウ(シソ科)が花を付けている。枯葉の布団に包まれてまるで暖を取っているかのようである。心なしか色も薄く花も小さい。
 もともと春の花なのだが我が家ではもう雑草状態で至る所に住み着いていて、花数は減るがいつでも花を咲かせている感じがある。本来の自生地では秋に見かけることはまず無い気がするが、どうだろうか。生息する環境が変化すると新たな適応のスタイルが発揮されるのかもしれない。命の逞しさを感じさせてくれる可愛い花だ。

ツルアリドウシ(アカネ科)の実

2006年11月29日 | 自然観察日記
 先日、カラタチバナを「百両」ヤブコウジを「十両」という話題をとりあげた。その際「一両」はアリドウシであるという話をさせてもらった。アリドウシは越後にないのでピンと来ないが、太平洋側や西日本ではアリドウシの栽培も盛んなようでごく普通に受け入れられているようである。
 写真はアリドウシでなくツルアリドウシという。花の時期にも紹介した気がするが、こちらはブナの多い越後にはごく普通にある。林床に生育する常緑草本で可愛い赤い実が落ち葉の間から覗いている。
 アリドウシが無い越後でこれを「一両」にしたてるには「アリドウシ」という名がついているが草姿でヤッパリ無理があるようだ。ちなみに、アリドウシは鋭い棘をもつ低木である。もちろん赤い実を付ける。

イソギク(キク科)

2006年11月28日 | 自然観察日記
 イソギクの花が咲き始めた。長岡の地にイソギクはちょっと似合わないのかもしれないが、毎年この時期に半分落ち葉に埋もれながら花を見せる。20年も前の話で、沼津の友人の家に集った時に海岸通りの崖にへばりついていたものを連れてきたものである。
 伊豆の海岸通りにはごく普通に見られる。葉の裏が綿毛で白い。海岸の岩場は生育環境としては厳しいところだろうから、そこで生きる術としての綿毛なのだろう。
 もともと西日本太平洋側の海岸沿いの崖に生えているもので、越後には見られない。園芸的な価値が高いわけでないから園芸店などでも売られているものではない。越後においては我が家のイソギクは結構貴重な代物ということになるのだろか。

シュウメイギク(キンポウゲ科)

2006年11月27日 | 自然観察日記
 中国原産の古い移入植物で、別名キブネギクとも言われる。多くの家庭で植えられていて馴染み深いもの。「キク」とあるがキク科でなくキンポウゲ科の花である。もう花の時期はとうに過ぎているが、今は実がはじけ種子が飛び出しているのが観察できる。花後の丸い実がはじけて、きめの細かな綿毛を持った小さな種子がもこもことあふれてくる感じである。ふっと吹くとフアァと飛び散っていった。
 シュウメイギクの花はキンポウゲ科の性質を受け継いでいるから、花弁のように見られるものはがくで真の花弁ではない。

ヒマラヤシーダーの散った雄花

2006年11月26日 | 自然観察日記
 今はご覧の通り、地面一面に咲き終わった雄花が散乱している。常緑で風媒花である針葉樹の受粉は冬場であってもかまわない訳だから晩秋に開花していても不思議はないが、ここにも遅咲きの種がいたのだとあらためて教えられた。

ヒマラヤシーダー(マツ科)

2006年11月26日 | 自然観察日記
 成長が早く雄大になるから公園や学校の庭に好んで植えられている。見慣れた樹木だが在来種ではない。先月、ある公園で見かけた雄花でまだつぼみが固い感じがしたのだが、もう今はほとんど散ってしまっている。
 雄花は低い枝にも沢山ついているが、雌花が見当たらない。上のほうに昨年のものだと思われる球果が点々と付いているから、おそらくそのあたりに目立たないようについているのだろう。

バオバブ(パンヤ科) その3 種子

2006年11月25日 | 自然観察日記
 封筒に同封されてきた種子である。正直言って発芽しそうにない雰囲気だから、このまま感想標本にしておこう。
 現地の人から聞いた話ということでは、種子は火などの刺激があると発芽するのだそうである。オーストラリアにも似たような性質を持つものがある。バンクシアの仲間は砂漠に近い場所に生活しているが、野火の発生で樹木が火災に合わないと種子が弾けないのだそうだ。
 バオバオも写真から見るとかなり乾燥した大地に生えていることから、野火の刺激がその生態に大きく影響しているのかもしれない。

バオバブ(パンヤ科) その2

2006年11月25日 | 自然観察日記
 日本国内にある熱帯温室でバオバブを栽培してあるところがいくつかあるが、せいぜい4~5mくらいのものしか見たことが無い。葉は大型の掌状複葉であった。何処かの温室で花が咲いたそうだが、眼にしたことが無い。温室でみてもこの写真の個体をイメージするには至難の業だ。直接行って直に触って来たい思いに駆られる。
 世界は広いものだと思う。不思議な不思議な植物がいくらでもある。命あるうちに一つでも二つでもそれらが息づいているところに訪れてみたいものである。友人の手紙には、マダガスカルの風景は意外と日本の田園風景に似ているとある。バオバブの巨木も減ってきているという。グローバル化は一応に世界の隅々にまで押し寄せているのだろうか。

バオバブ(パンヤ科) その1

2006年11月25日 | 自然観察日記
 友人からもこもことした封書が届いた。中を開けると写真と種子と手紙が添えられている。
 悠悠自適な彼はマダガスカルのバオバオツァーに参加して来たとのこと。延々とその状況が語られ、写真の説明がされていた。
 まことに羨ましい限りで当面はそういう環境にないわが身を残念に思っているが、必ずや私もいつかは訪れたい場所である。
 バオバブも何種かあって、一般に「木を引き抜いて逆さに地に突き刺した」ものというのはマダガスカルにある。写真の光景はしばしば雑誌などで見るバオバブの大木が多く残されている場所だそうである。今では観光の重要ポイントらしく、人も多いと記してある。

ウメモドキ(モチノキ科)

2006年11月24日 | 自然観察日記
 モチノキの仲間は赤い実をつけるものが多い。冬場、関西を旅するとクロガネモチの赤い実に圧倒される。花はほとんど目立たない樹木だが、実の時期は違う。大木になるからなおさらで越後にはない景色でとても羨ましく思ったことがある。
 ある庭先に鈴なりの実をつけたウメモドキが誇らしげである。これもモチノキの仲間。越後では、新潟当たりにはモチノキやクロガネモチも時に植栽されてはいるが、長岡当たりではウメモドキが主流だろう。葉がなくなるともっと存在感が出てくるのだが、もう雪囲いもしなければならない時期だから、このご家庭もいいところを鑑賞できなくなるのだろうか。

ヤブコウジ(ヤブコウジ科)

2006年11月23日 | 自然観察日記
 「百両」があれば「十両」もある。ヤブコウジをそういうらしい。こちらは庭にはびこってときどき虐めてやらないと我がもの顔もはなはだしい。でも、1~2個の赤い実を葉の下から覗かせている姿は可愛らしい。ましてやこの時期のわびしい気分の時はホッとするものがある。
 そろそろ白いものに覆われる季節になるが、クマ同様冬眠を余儀なくされることがなんとも耐え難い面持ちである。友人がこの秋埼玉の雪の無いところに転居した。昨年の大雪にとうとう耐えかねて老後の安息を求めての決断である。そういう大仕事ができることを羨むとともに雪のない世界を羨んでしまう。
 ところで「一両」というのは何を当てるのだろうか?赤い実を付けるヤブコウジよりもか細いものを俄かに思い浮かべられないで入る。

 こんなメモを見つけた。
『一両(アカモノ)、十両(ヤブコウジ)、百両(カラタチバナ)、千両(センリョウ)、万両(マンリョウ)で、年中お金が「有り通し」(アリドオシ)。』

 そうか!なるほど!ツツジ科のアカモノを「一両」にしている。あるいは、アカネ科のアリドウシを当てるのだそうだ。いい案である。

カラタチバナ(ヤブコウジ科)

2006年11月23日 | 自然観察日記
 年末が近づくにつれて赤く色づいた実をもつ鉢物が目立つようになる。マンリョウ(ヤブコウジ科)やセンリョウ(センリョウ科)をはじめこのカラタチバナも登場する。鉢に植えてたままほとんど世話をしないでもこの時期にちゃんと赤い実を付けてくれているから、お正月のちょっとした飾りに重宝している。こぼれた実が発芽成長もするから、増えることもないが消えることもない。
 ところで、このカラタチバナを「万両」「千両」に対比させて「百両」ということはご存知の方も多いだろう。赤い実を付けたボリュームでの区別のようだが、日本人の心を表した一つの文化的な表現なのだろう。

ビワ(バラ科)

2006年11月22日 | 自然観察日記
 この時期に花咲くものにビワがあった。越後ではほとんど見かけないビワだが、たまたま通りがかった街角に塀越しに庭からビワの花がのぞいている。よくよく観察すると5枚の花弁などバラの仲間だということが納得できる。中国原産の果樹だけれど、雪の降る長岡は死ぬことはないけれど、花が咲くまでにはなかなかいかない。私自身果実を食した後の種を植えては育て始めるが、雪の重みで枝が折れるなどして満足な結果を生んだためしがない。
 この花は長岡の隣、三条のある家の庭の木だが上手く雪対策を行っているのだろう。それに、雪の量が圧倒的に長岡より少ないのも影響しているのかもしれない。
 長岡で作れない果樹が柑橘類とビワ。温室でも持てるようになったら挑戦しようと思っているものである。

タマミクリ(ミクリ科)

2006年11月21日 | 自然観察日記
 夏に開花するものだが、秋に雪国植物園で撮影したものでやや痛んでいるが、写真の中央に丸い実がいくつか並んでいるのが判ると思う。タマミクリの名前の由来で、本州中部以北の湿地に生育するものだ。しかし、急速に減少し現在は絶滅危惧種に指定されているもので、私自身野生のものを見たことがない(もっともあまり湿地を観察することがないことも原因しているのであろう)。
 ともかく、今は何が大切なのかをしっかりと学習しその保護のために微力ながら尽力していきたいと考えている。

ツノハシバミ(カバノキ科)

2006年11月20日 | 自然観察日記
 ヘーゼルナッツでおなじみのセイヨウハシバミの仲間。実が口ばし状というか角状というか出っ張っているからツノハシバミという。越後の里山にはごく普通にあるが、実を確認することは少ないかもしれない。ヘーゼルナッツの仲間だから美味しいのだろうと食べたことがあるが確かに美味しいものだが、この実を包む外皮に結構硬い棘が密集していて皮をむくときに手に刺さる。これがいただけない。細かい折れた棘の先がいつまでも皮膚に残り閉口した。ハシバミという種もあるが越後では見ない。