園内の枯草のかなりの部分がきれいに取り除かれていてそろそろ次年度へ向けての整備も感じられる状態でしたが、ヤマシャクヤクの結実した株がぽつんと残されていました。とても人気がある山野草で自生の個体はほとんど見られなくなってしまい、管理されたところで観察する以外に手段はありません。できるだけ野生の状態を維持して展示してほしいものですが、園の都合もあるのでしょうヤマシャクヤクよりも見る人の方に配慮して植栽されています。
種子の黒と種子を包んでいた果皮の赤が独特なコントラストで強烈な印象を与えます。鳥などの種子を運ぶ相手に強くアピールしているのでしょうか?不安定な構造でありながら赤い色彩が失せるまで果皮が割れてよじれても種子が落下しないようにできているらしく、このあたりの工夫が面白い・・・。そういえば、この赤と黒の配色はツクバネソウにもあって、種子の黒とそれを乗せている花床の赤が思いだされます。全く系統の異なる種ですが、種子の散布を行いたい場面で同じような形質が見られるのも興味深いことです。
越後はもう春になってきたとはいえ山歩きなどの散策ができていないので話材が準備できませんから、もうしばらくは以前の思い出を基にブログをつなぎます。
実は秋にも上三依の植物園を訪れています。春や夏と違い訪れる人はまばらで閑散とした園内を時間をかけてゆっくり歩きました。10月の半ば、ちょうど晴れた日でしたから満ち足りた静寂の時間を堪能しました。華やかではないにしろこの季節の草花たちの顔がありとても楽しいものです。
実は秋にも上三依の植物園を訪れています。春や夏と違い訪れる人はまばらで閑散とした園内を時間をかけてゆっくり歩きました。10月の半ば、ちょうど晴れた日でしたから満ち足りた静寂の時間を堪能しました。華やかではないにしろこの季節の草花たちの顔がありとても楽しいものです。
園に入って正面石積みがありますが、その中に五代目ミュートンのリンゴの木というのがあります。五代目というからには実生で増やされたものと考えたのですが、脇にある説明版によるとそうではないようで接ぎ木された子孫のようです。どういう繋がりがあるのか正確にイメージできないのですが、万有引力の法則を発見したとされるニュートンのリンゴの木と遺伝的につながっていると解釈して、特別な存在であることに感心。ここでも生育は順調なようでした。
ヤマガシュウの隣にはマタタビも見られます。変哲もない山道脇の藪にも目を凝らせばいろいろなものが出てきて面白いもの。ここにある蔓には豊作とは言えないものの青い実がぽつぽつと見られ、熟した実を食べたら美味しいだろうなぁと思った次第。ところで、瓶詰にした青いマタタビを見ることがあっても、熟したマタタビを知らない人が意外に多いのに驚きです。熟した色も知らないようです。オレンジ色に熟し甘く何とも言えないコクもあります。サルナシが甘さだけを感じるのと少々異なります。そういう私もここ数年いい状態のマタタビの実を口にしていません。山歩きのタイミングが大切ですね。
いわゆる虫こぶ。タマバエの1種のマタタビミフクレフシが産卵した結果生じたものとされています。時にはほとんどの実が虫こぶになってしまったものもあるのですが、この蔓にはそれほど多くなくいくつかが散見される程度。薬効があるそうで結構珍重されます。そういえば、虫が関わった食材はそれほど日本にはありませんが、世界の食糧事情を考えると昆虫食をもっと考えるべきという発想のもと昆虫食の体験活動をされている方がおられます。個人的には気持ちの中には抵抗がある一人ですが、古くから日本人も昆虫を食材やそれに関するものに利用してきたという文化や歴史があるわけですから、ジビエが注目されてきたと同じ次元で考え方や行動を見直していく必要がありそうです。
この葉をマタタビと言える人はよほどの人でないといないのではないでしょうか。しかし、花の季節に葉が白くなるときはほとんどの人はマタタビとわかります。同じ葉でも季節季節で顔が異なることの面白さですね。たとえ植物であろうといろいろ工夫を凝らしていることがわかります。
木本のようですが多年生の草本としたほうがいいようなグループの一角。ヤマガシュウという新潟では珍しいつる植物を見つけました。サルトリイバラと混同しがちですが、葉が異なります。サルトリイバラの脈は3本が普通で先端はへこむのですが、ヤマガシュウは5本の脈がはっきりしていて先端はとがります。新潟の分布を調べました。興味深いことが分かり今まで気にも留めていないことが悔やまれます。採集の記録がある地域は妙高周辺から南部、糸井川周辺に限られていてその他の地域は資料(新潟県植物分布図集;植物同好じねんじょ会編)ではありません。しかし、福島県の採集記録は阿賀野川に沿って県境あたりまで記録が残っています。群馬県の県境近辺にも少数ながら採集された記録があります。似たような分布をする種がいくつかありますが、この種も新たな新天地を求めて周辺の県からじわじわと分布範囲を広下てきているというように見えてしまいます。面白いですね。福島の県の詳細はわかりませんが、阿賀野川沿いには生育していますし、ここ大内宿にも見られるくらいですから広く自生しているのではないでしょうか。
ヤマガシュウの実がたわわに実っていましたが、緑色のためほとんど気づきません。雌雄異株の種ですからこの株は雌株。残念ながら熟した実を見たことがないので、その場ではてっきりサルトリイバラと同じく赤くなるものと勝手に思い込んでいました。家に帰って調べてみると黒く熟しことをしりました。地味な色です。赤くサルトリイバラのようなら生け花などで使われ、もっとヤマガシュウという言葉を耳にすることがあったかもしれませんね。
アワブキの仲間のミヤマハハソがありました。切通にできた藪の中にそれほど大きな樹ではないのですが白い花をパラパラと咲かせていました。まだ花の盛りには少し早かったようですね。ミヤマハハソに出会うときは名前の通り結構山奥です。もちろん新潟県内にも奥山や山里の周辺で自生しています。葉がコナラ(古名ハハソ)に似ているからとこんな名前になったとか。花序はけっこう大きな房状ですからコナラ類とはまるで異なります。大内宿はミヤマハハソが普通に見られるくらいの奥深い山里なのだと改めて思い知らされます。
ある農家の庭先に合ったものですが、おそらく山取りしてきて植えてあるものと思います。気になったことが、新潟ではアケビは意外と少なくほとんど見かけません。というと違和感を覚える方もおられると思いますが、見かけるアケビはほとんどミツバアケビでゴヨウアケビがその次に目にする程度です。いわゆるアケビはむしろ希なのです。自生する場所は海岸に近い比較的温暖な場所です。福島の事情は少々異なっているようです。大内宿と言えば福島県のほぼ中央で内陸も内陸です。人が手をかけた栽培の環境にありますから、実際の分布とは異なる可能性がありますが、アケビという種の面白い面を見た気がします。