研究園の湿地の茂みの中に見慣れないものを発見。まだ開花していないのでキク科植物とはわかっていても大まかな見当止まり。周辺に開花株はないかと探しましたがずっと先にいてようやく開花直前の株に出会いました。ミズギクデす。オゼミズギクという変種がありますから、これはオゼミズギクになるのでしょう。
歩き始めていきなり木道上に何者かに食べられた後のミズバショウの実が転がっていました。昨夜、山小屋の人が、クマがミズバショウの実を食べに来るのでミズバショウを刈っているという話をされていました。前日ここに来るまでに見たミズバショウの刈り払いの跡を見たときの疑問がこの話で得心しました。そんな話が冷めやない中、目の前にある新しい食痕ですから付近にクマがいる?のではと思い少し背筋がスーッとします。とはいえ実はシカもミズバショウを食べるという話を聞いていますから犯人はクマとばかりは言えないと思い研究園を歩くことにしました。
食痕脇にはまだ食べられていない果実もあります。7月ですからもかなり種子は成長しているのではないかと思います。間もなく実はぐちゃぐちゃに壊れ種子が水の流れなどで散逸していくことになります。動物に食べられて種子が散布されることも重要な作用ですから、クマでもシカでもミズバショウにとってはありがたいことなのではと思う次第です。他に大きく種子を移動させる手段は見当たりません。
中部以北の深山の沢筋など少し湿った場所に見られるオニシモツケです。大型の多年草で白いふわふわした花穂が目立ちます。普通は群生していますからなかなかの存在感があります。個人的にはこの種も深い山に来たなぁと実感するものの一つです。その昔、磐越西線の日出谷駅から長いルートを大日岳に向かい、その後飯豊山・北股岳・門内岳を経て湯の平に出たとても長い山行を行ったことがあります。私の山人生の中でも最大級のイベントでした。天候が悪く散々な思いをしたものでした。湯の平の山小屋で河原の露天風呂に入って一息入れたのもつかの間数時間後には増水によりこの露天風呂が水没するという怖い思いもしました。翌日も雨の中で、これも長い加治川沿いの下山道を延々と歩いてようやくこの山行を締めくくったものです。この加治川沿いの沢を渡るところに群生していたオニシモツケが妙に記憶の中に刷り込まれています。苦しくつらいイベントがようやく終わったという癒しをこの花が与えてくれたようです。
この種はバラ科のシモツケソウ属の種です。バラ科の花というのがなかなか馴染めない向きもあるのですが、一つ一つの花はとても小さくとも近づいてよく見るとバラ科の花であることが頷けます。5枚の花弁と多数のしべが認められます。
登山道の脇の藪の中にミヤマトウバナを見つけました。小さい花ですから一般の人は気づかないような地味な種です。里で見るトウバナよりは大き目な背の高い個体です。ただ、花の大きさはあまり変わらず花穂が長いのが目立った違いです。また、ヤマトウバナは西日本ミヤマトウバナは東~北日本とざっくり押さえています。
トウバナの仲間はよく似ていて小さい花でもあり判別が難しいものです。しかし、がくに毛があるかないか開出毛かどうかなどで区別できます。この個体にはがくに短い毛が見られいわゆる長い開出毛は見られませんから類似種のイヌトウバナではありません。
実をいうと個人的にはイヌトウバナとミヤマトウバナは葉では区別できません。この当たりの種の区別はどうでもよいような気になってしまうことが良くあります。しかし、分布を気にかけていると種の違いは結構重要な要素ですからないがしろにはできません。
いろいろな場所で見る種なのですが微妙に場所によって感じが異なる種です。あまり低い場所には見られませんが低地から亜高山帯まで出現します。雌雄異株の種でふさふさとした感じの花穂は雄株、ほっそりした花穂は雌株ですので遠目でも雌雄は判別できますが、このふさふさ度が場所によって違うような気がしています。尾瀬の山道にはところどころ自生が見られました。ここの個体は新潟でみるものと大体同じようです。