森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

ウスタビガの繭

2006年02月27日 | 自然観察日記
 綺麗な緑色をした天産糸のひとつ。ヤママユの繭と思っていたが、正確にはヤママユガ科のウスタビガというガの繭である。久しぶりに出会ったものだが、3個ほど見つけて標本として活用させてもらうことにした。
 カイコガから作る絹も高価だが、この天産糸を紡いだ布はそれはそれは高価なものになるという。確かに、この繭を自然の中から布が織れるくらいの量を集めるのは至難の業であろう。高価なのもうなずけるというもの。それだけでなく、糸の美しさがさらに高価なものにする要素のような気がする。
 そんな貴重なものに触れられて幸運であった。枯れ木に付いていた繭の色は冬景色の中にあるせいかもしれないが、天女が纏う絹のようである。一時の感動を与えてくれた。

ヤドリギ(ヤドリギ科)

2006年02月24日 | 自然観察日記
 クヌギの大木にヤドリギが目に付いた。これは半寄生植物で、根は大木の中に刺し込み水分や養分の一部を頂いているが自らも光合成をして必要な栄養を作り出している。秋に写真のような実を付ける。これを野鳥が食べて他の場所に運ぶのだが、種子は非常に粘つく粘液に包まれている。これは野鳥の消化管内では消化されないため、枝に止まって糞をしたりすると枝に粘液が絡みつくときに種子も一緒に枝に付着するというわけだ。そこで、発芽しご覧のように高木の至る所に住み着くようになるのである。樹の下に実が散乱していたが、それをつぶしてみると粘つく液が出てくる。
 ところで、ヤドリギの生育する林は至る所にこのヤドリギの塊があるのだが、寄生といってもヤドリギが巣食った樹はさほど衰えない気がする。致命的なダメージを宿主に与えない配慮がなされているのだろうか。