森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

サギソウ(ラン科)

2006年08月31日 | 自然観察日記
 先日、雪国植物園を訪れたときに見たものである。見事な造形で、なお名前も花姿にぴったりで日本の誇るべき木花である。
 園芸的にはたくさん流通していて、鉢植えで飾られているものはたくさん見ているだろうが、野生のものを眼にすることはないであろう。私も未だに自生のものを見たことは無い。しかし、県内にも僅かながら自生地は存在している。知人のある方は分布地点の地図を作成しているのだが、地図原本には記載せず地図上にトレーシングペーパーを当ててその上に記しているという話をしていた。園芸業者などに知れたら直ちに絶滅してしまうという危険がある。貴重な野生植物を守るには最新の注意をしなければならないのである。
 雪国植物園には水辺の一角をサギソウ畑にして栽培管理している。もう時期が遅いかもしれないが野生の面影を見ることが出来るから一度訪れてみてはいかがだろうか。
 

ヤブツルアヅキ(マメ科)

2006年08月31日 | 自然観察日記
 夏の後半から秋にかけて咲くごく普通の野草で、河原などの草むらにはこの蔓が絡んだ光景をよく見かける。澄んだ黄色の花で、じっくり眺めれば面白い花だ。マメ科だから蝶形花なのだが、クサネムのように整然としたものでなく、全体にゆがんでいる感じで美形ではない。出来損ないというのは可哀想かもしれないが、率直に言ってそんな花である。しかし、その愛嬌がいい。
 アヅキとあるが「小豆」との類縁に関する知識をまだ持ち合わせていない。ご存知の方があれば教えていただきたい。

オトコエシ(オミナエシ科)

2006年08月30日 | 自然観察日記
 黄色のオミナエシに対比させ白いのはオトコエシという。オトコエシは野山にたくさん自生していて憂える状態にはなっていない。白といっても澄んだ色でないせいか庭に植える気にならないのだろう。オミナエシはとり尽くされるがオトコエシは残っているという図式である。
 男と女、やっぱりオトコのほうが美しくないということになるのだろうか。真相は定かでないが、大型のオトコエシのほうが遥かに生命力が高いことは確かなようだ。白い花を「米粒」にみたてて、「メシ」→「エシ」と転じオトコエシとなったとされる。オミナエシを「女郎花」と書きオトコエシは「男郎花」と書く。

オミナエシとカマキリ(オミナエシ科)

2006年08月30日 | 自然観察日記
 秋の七草のひとつオミナエシにカマキリが留まっている。花による虫を餌にしようと待ち構えてでもいるのだろうか。私も、ごく近づくまでカマキリの存在に気が付かなかった。こんな荒っぽい作戦でも餌食になる虫が結構いるのだろう。
 オミナエシもすっかり野生では見なくなった。庭先にはたくさん咲いていて馴染みの植物なのだが、フジバカマと同様急激に野生では見なくなったものである。この写真は長岡市内にある雪国植物園にあったものである。雪国植物園では秋の七草が咲き出していたからこの機会の訪れてはいかがであろうか。
 ついでに、雪国植物園の入口にあったお店で「縄文カレー」があったが、有機米を使ってくるみやピーナツを使っていてなかなか美味しくお勧めである。

カワラケツメイ(マメ科)

2006年08月29日 | 自然観察日記
 花を見なければ全種のクサネムと区別が難しい。ほとんど同じような場所に生えていることも紛らわしい要因。しかし、花は明らかに違う。色はクサネムが紅色を帯びた白色なのに対してカワラケツメイはきれいな黄色である。形もクサネムは蝶形花なのに対してカワラケツメイは花弁がほぼ同形の放射状の花をつける。蝶形花より原始的なものとされるから、マメ科の中にあっては下位に属する。しかし、薬用として古くから利用されていて日常生活にたくさん使われている。ハブ茶というのはこの植物の製品であるという。

クサネム(マメ科)

2006年08月29日 | 自然観察日記
 各地の湿った場所にごく普通にあるマメ科の草本。ネムノキと同様、夜間葉を閉じる。花は典型的なマメ科特有な蝶形花で果実は鞘を作る。次種のカワラケツメイと草の姿は似ていて紛らわしいが花を見ると一目で区別できる。
 クサネムの葉は閉じたり開いたりを毎日繰り返す日周運動をするが、その刺激源は特定の方向性を持たない明るさである。植物が示すこのような運動を傾性と呼ぶ。カタバミの葉も同じような傾性を示す。
 

ナンブアザミ(キク科)

2006年08月28日 | 自然観察日記
 アザミの仲間は区別が難しい。春に咲くアザミは1種のみで分かりがいいのだが、秋のアザミは多種多様である。地域や標高で分布する種が異なり頭を悩ませる。
 越後などの雪の多い地域にはナンブアザミが多くある。大型のアザミで2mにもなる。葉の切れ込みはほとんどなく棘もあまり気にならない。沢近くに大群落がよくあって沢釣りをするときなど掻き分け掻き分け進むことがある。

ヌルデ(ウルシ科)

2006年08月28日 | 自然観察日記
 この時期雑木林を散策すると林縁にヌルデの樹が目に付く。花をつけている樹木がそれほどないから地味な花ながら目立つというわけだ。漆の仲間で傷つけると白い樹液が出る。これを器具に塗って利用したことからこの名がある。中にはかぶれる人もいるのだろうが私の近辺ではそういう話を聞かない。ヤマウルシもそれほどかぶれる人が多いものとも思わないが、ヌルデはかなり安全であろう。この仲間で最も危険なのはツタウルシで三小葉の蔓植物がから、覚えておくといいだろう。
 ヌルデの葉は奇数羽状複葉でその中央の軸にヒレがあるのが特徴で、秋の実には塩分が多く出るので舐めると塩辛い。

ヒヨドリバナ(キク科)

2006年08月27日 | 自然観察日記
 先日の猛烈な残暑が終わり夜の寝苦しさから解放された折、秋の七草を紹介したのでその関連でもう一種。フジバカマといいたいのだが、これはヒヨドリバナ。県内に野生のフジバカマはないのではないだろうか。全国的のも激減して、絶滅危惧種に指定されている。ごく身近な植物であったフジバカマが環境の変化によって存在そのものが危ぶまれるほどになる。今はそういう時代だということを肝に銘じて、種の保存を図る手立てを講じなければならない。
 話は少しそれたが、フジバカマと思われているものはほとんどこのヒヨドリバナかサワヒヨドリ、ヨツバヒヨドリである。幸いこの3種は平地性のフジバカマに比べ山手が好きなようで、県内には多産し健在である。秋の七草を愛でるに十分代役を果たしてくれる存在であろう。

ハギ(マメ科)

2006年08月27日 | 自然観察日記
 秋の七草の一つハギ、爽やかな秋風が感じられるとふと目に留まる花だ。落葉低木で種類が多く分類が難しい。全国至る所にあって、荒地にもよく適応するから土留めを目的に法面に植えられることもある。
 写真はケハギで、ミヤギノハギの変種とされる。葉が全種に比べ丸く、野生の萩の中では最も花が大きいのだそうだ(比較していないのでよく判らない)。山にあるからヤマハギでもいいのだが、越後のハギは格が上ということで太平洋側のヤマハギと区別しケハギとしておこう。

オオウバユリ(ユリ科)

2006年08月26日 | 自然観察日記
 あでやかなユリ属の中にあっては、どちらかといえば地味な感じである。園芸化もされていないのではないか。越後では里山の至るところに生育している。花つきが多く全体に大型であるので、太平洋側に見られる種に対してオオウバユリと呼ぶ。
 かって教えてもらったことがある。ウバユリの語源は「乳母」からきていて、この花が咲く頃は「葉がない」。そのことと「乳母には歯がない」ということをかけてウバユリと名づけられたという説明であった。聞いたときは「なるほど」と納得したのであるが、この写真でもそうだが花が咲いているにも拘わらず「葉がある」のである。いつ頃から乳母には歯があるようになったのだろう。

ハマゴウ(クマツヅラ科)

2006年08月26日 | 自然観察日記
 海辺にある常緑の小低木で、夏の暑い時期に花を咲かせる。きれいな青い花で好きな植物の一つだ。我が家にもあって、残暑の厳しい今ほかの植物が枯れ気味なのを尻目にわが世の春とばかりにきれいな花を咲かせている。根が発達するから、鉢植えで地におくと根が鉢の穴から地面に入り込みまごまごしていると鉢を動かすことが困難になるくらいである。
 あまり世話をしないのだけれど、毎年開花し夏ばての時期を楽しませてくれる貴重な存在である。結構花の時期が長くすべての花が終わる頃、越後では秋を感ずる季節である。

キンミズヒキ(バラ科)

2006年08月25日 | 自然観察日記
 ミズヒキと付いているがタデ科のミズヒキとは縁が無い。こちらはバラ科の植物で、花穂が同じ時期に咲くミズヒキに似て長く立ち上がり黄色の花が点々と咲き連なることから付けられたものであろう。「金水引」という文字を当てる。
 こちらはミズヒキに比べ日当たりのいいところを好むようで、至る所の野山に普通に見られる。

ミズヒキ(タデ科)

2006年08月25日 | 自然観察日記
 林の林床に夏の盛りが過ぎるとスッと伸びだして咲いている。ミズヒキとはのしにかける紅白などの紙紐のことであるが、なぜこの草がミズヒキなのかなかなか理解できなかったが、この花穂を上から見ると赤く見え、下からみると白く見えるところから付いた名前だと聞いて感心した。細かなことをしっかりと観察し、なおそのことから水引を連想するあたり命名者の見識の高さに感じたものだ。
 決して派手ではないが、林の中ではピカッと光る感じで花を付けているから、気付きやすい野草だと思う。お茶の花としても好まれる種である。

ウラジロ(ウラジロ科)

2006年08月24日 | 自然観察日記
 これはシダ植物。伊豆大島では杉植林地の下草にごく普通にある。名前のとおり葉の裏が粉をふいたように白い。大島ばかりでなく太平洋側では、ごく見慣れたもので気になる存在ではないだろう。
 しかし、越後の長岡あたりではまったく見ない。小千谷の山本山で発見されたと聞いたときは驚いた。県内には点々と生育しているようなのだが、私はいまだに合ったことが無い。雪が苦手な植物のようで、これに出会うと暖かい地方に来た感じを私は持つのだ。温暖化で暖かくなっているのならば、このあたりにもウラジロが見られる時代が来るのだろうか。
 シダ植物だから花はないしヘゴの仲間以外には高木になることもない。お正月の飾り物にウラジロが使われているのだが、その習慣が無い越後の人は奇異に感ずるかもしれない。