森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

クリ(ブナ科)

2006年06月30日 | 自然観察日記
 クリの実なら誰でも馴染みのあるものであるが、花となると詳細を知る人は多くない。写真の中央にあるやや大きなものが雌花でイガの棘の元になるものも見えている。それに続く細長い白い花は雄花である。後方に見える尾状のようになるから、いわゆる尾状花序である。尾状花序はブナ科以外にカバノキ科やクルミ科、ヤナギ科などに見られこれはいわゆる風媒花の基本形であろう。
 しかし、クリの雄花には臭いがある。人にとってあまり良い臭いとはいえないが、臭いは明らかに昆虫を意識した変化だ。つまり、虫媒花の兆しがあるのだ。花のきれいな虫媒花の植物はクリのような植物が起点になって進化したのではないかと思っている。
 ところで、青森市郊外に縄文時代の三内丸山遺跡があるがこの遺跡からクリの大きな柱が出土したり土中から大量のクリの花粉が出土するという。ブナ科の実の中でコナラのどんぐりのような渋味がないから、当時の人にとっては浅海のアサリやシジミと並んで重要な食料であったと考えられている。
 シイやカシの実も渋味がない。縄文の時代は西日本の照葉樹林のシイ・カシと夏緑樹林のクリは食料として貴重であったろう。その、クリが三内丸山遺跡には多量に存在したと考えられている。今も周囲にはクリの木が残ってはいるが、当時に比べ気候の寒冷化によってクリが生育するには厳しくなったのだろう。個体数は以前に比べ減少している。それは、当時の人にとっては食料が欠乏することにつながるから、三内丸山遺跡が放棄されるきっかけになったのだろう。

マルメロ(バラ科) 若い実

2006年06月29日 | 自然観察日記
 以前(5月23日付)ご紹介したマルメロの実である。毛がびっしりついているから、同属のカリンとの違いが判るだろう。肥大成熟するにつれて毛の存在は薄れるけれど、収穫時まで残るがしごけば簡単に取れる。
 南会津地方の只見や南郷で見かけるマルメロはいつも綺麗な実になるのに、我が家のマルメロはいつも凸凹になる。カメムシの被害に合うようだ。

ビオラ(スミレ科)

2006年06月28日 | 自然観察日記
 「ど根性大根」が注目を浴びて以来、各地で「ど根性○○」が取り上げられた。我が家にも負けず劣らず「ど根性」がいる。「ど根性ビオラ」とでも名付けておこうと思う。ビオラのシーズンはもうとうに過ぎたのだけれど、コンクリートの隙間にこぼれた種子が発芽成長しとうとう花を咲かせるまでになった。郵便受けのポールの際に隠れて途中で抜かれなかったのも幸いしたのだろうか。ここまでくると大変愛おしくなり、ちょっとした我が家の話題である。来年、また種子をこぼしてどこかの隙間に住みつくだろうか。可憐な中にもしたたかな生命力を感じて、これもまた好しである。

カシワバアジサイ(ユキノシタ科)

2006年06月27日 | 自然観察日記
 ある街医者に立ち寄った際に、その医院に隣接する家の庭に見慣れないアジサイが満開で釘付けになった。日本の野生種ではない。葉はヤハズアジサイに似ているが花が全然違う。カシワバアジサイと名付けられたこの花は北米の原産だという。
 花一つ一つを見ればアジサイと見間違えることはないが、全体を見るとブッドレアの円錐状の花穂に似て「はて?」と考え込んでしまう。世界は広い。まだまだ知られていないアジサイも多いのだろう。梅雨の時期、日本はアジサイ族に埋まっている感じである。

アサギリソウ(キク科)

2006年06月26日 | 自然観察日記
 梅雨の時期にふさわしい名前ではないか。アサギリソウ(朝霧草)、細かな銀色の葉がなんともいえないすがすがしさを与える。早朝、霧滴を散りばめている姿を眺めていると3000mくらいの高山に登ったような気分になる。しかし、北海道北部の平地ではごく普通に「道端の草」であり、大して気に留められることはない。以前旅したときに知床辺りだったろうか、民家の脇の草地から連れてきたものがしっかりと根付いている。
 北方種だが丈夫で作りやすいから近年ロックガーデンの素材として沢山流通している。中には日本産のものでなく外国種も「アサギリソウ」で販売されているようだ。
 この種は葉を鑑賞する。意外に思われるかもしれないがアサギリソウはヨモギの仲間だ。花は観賞価値が劣るが、夏になるとヨモギの花と同じようなものを点灯するから同じ仲間と判るだろう。

アサツキ(ネギ科)

2006年06月25日 | 自然観察日記
 特に栽培しているという意識が無いが、ちゃっかり花壇に居座っている。山菜としても重宝がられるが花もそれなりに見栄えがする。
 こんなのが川の土手や田んぼ道の各所に咲いていたのだが、最近見ない。除草薬のまかれた道端は枯れた哀れな野草で埋まっている。草刈ならまだしも薬で根絶やしにするのだから、アサツキなどは堪ったものでない。消えていくのも時間の問題である。せめて我が家に逃げてきたものは大切にしてあげたいと思っている。

ヒメシャラ(ツバキ科)

2006年06月24日 | 自然観察日記
 ヒメシャラと最初に出会ったのは静岡の山中で、大井川の源流部にある南アルプスの登山口に向かうバスの中から見たものだった。初めて見る光景だからかなりの驚きで、サルスベリのような樹肌をした樹が林立する光景が脳裏に焼きついている。
 以来西日本の山中で何度と無く出会ったが、中でも屋久島の山中で出会ったものは圧巻であった。葉や花は小ぶりでも樹は大木になるのだが、屋久島の個体は半端ではない。それもスーッと高く伸びているのでなく、くにゃくにゃと曲がりながら、中には地面を這うようにして直径1mくらいの巨木がたくさんある。それが全て赤い樹肌をしているのだから、その光景を想像してもらうと凄さがわかるであろう。もう一度あの姿が見たいと思う。
 我が家の個体の故郷は奈良の大台ケ原近辺。大台ケ原に向かう山道の沢に降りて散策していたとき、川原に芽生えていた幼木を家に連れてきた。今では5~6mの樹に育ち毎年花を見せてくれる。これ以上高木になるとどうしたものかと思案している。
 

ナツツバキ(ツバキ科)

2006年06月24日 | 自然観察日記
 我が家はナツツバキ(シャラノキ)とヒメシャラが並んで生えている。両者が今花をつけていて、その違いを見るのにちょうどいい。花の咲きだしは数日ヒメシャラの方が早かった。「ヒメ」はやっぱり小型のものにつけた名前で葉も花も小ぶりである。
 ツバキの仲間だが花が清楚でくどくないから私は好きなほうである。木肌は共に滑らかだがナツツバキは赤味がっかた灰色でヒメシャラのサビ色に近い赤さだ。丁度サルスベリの樹肌に似ている。
 ナツツバキは越後の海岸山地のところどころに自生を見るが、ヒメシャラは無い。もっとも、ナツツバキの園芸化は進んでいて、公園樹や街路樹に植栽が頻繁である。しかし、ヒメシャラは公園樹としても越後では見ない。この差は何であろうか。ヒメシャラの花は小ぶりだが、樹肌は十分鑑賞価値があるように思うのだが。

コキンレイカ(オミナエシ科)

2006年06月23日 | 自然観察日記
 秋の七草のオミナエシの仲間。ハクサンオミナエシともいい山地の岩場や草地に生育している。姿はずっと小ぶりで与える感じが優しく可憐である。
 夏山のシーズン鬱蒼とした樹林帯から抜けて、岩場が出た辺り、登山道の脇に咲いているコキンレイカに出会えば疲れも一気になくなる気がする。山野の草花は庭にある園芸種と違って元気をくれるものがおおいと思う。
 そろそろそんな花々に出会いに行ける季節、もう少し雨の季節を耐えることにしよう。

クサフジ(マメ科) 

2006年06月22日 | 自然観察日記
 路傍の花もたまには目をやることにして、クサフジを取り上げてみた。つる性の草本で絡み合うように生えている。ちょうど花の盛りで、立ち上がった花穂がかわいい。フジとつくがこの花は垂れ下がることはない。
 咲き出しは青い色だが次第に桃色に変色するようで、アジサイの変化と似ているかもしれない。梅雨の時期は花色の変化に共通性でもあるのだろうか。アントシアニン系の色素で発色する。

ススキのバッタ その1

2006年06月21日 | 自然観察日記
 森林インストラクターとして幅を持たせるために学んだネイチャークラフトの一つ。ススキの葉を使って作るバッタ、それらしく見えるだろうか。仲間から伝授されて自分の得意技にしたい一つである。忘れないためにも時々製作してはカメラに収めている。これは、今年初めての作成である。

ハマナス(バラ科)

2006年06月20日 | 自然観察日記
 日本には原種のバラに本当に素晴らしいものがある。前記事のタカネバラやこのハマナスもそのうちの一つ。ハマナスは越後の海岸線に自生地がいくつかあるが、それ以上に意図的に栽培移植された場所が大変多くなっていて自生がどれか判然としないくらいである。わざわざ選抜して園芸品種化する必要がないということだろう。内陸の公園にも各所に植えられおなじみの植物にもなってきている。
 ハナマスは赤い実を茄子に見立てて「浜茄子」からきたと考えられるが、「浜梨」ではないと思う。食材の一つに利用した歴史があるのではないだろうか。
 

タカネバラ(バラ科)

2006年06月20日 | 自然観察日記
 次のハマナスとの違いが判りますか。花がやや小ぶりで、葉の感じも優しい。高山性の種で海岸にはない。はっきり判るのは実で、タカネバラは長目の実でハマナスは丸く扁平な実である。大きさもかなりの差がある。越後にはオオタカネバラも自生するというが出会ったことがまだない。

ナツグミ(グミ科)その2 実

2006年06月19日 | 自然観察日記
(え)ぐい実からグミになったのだろうが、十分に熟せばそのえぐ味も気にならない。4~5mくらいの木があるが、例年ムクドリなどの大群で色づきだすとあっという間にいたずらされて無残な状態になるのだが、今年は立派な実がたくさん鈴なりである。付近にムクドリがいないわけではないが、いまだ被害にあっていない。
お陰でルビー色の宝石に似た実を舌で味わい眼で楽しむことが出来た。心変わりをしたムクドリが今後も気の変わらないことを祈っている。