森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

トウダイグサ(トウダイグサ科)

2006年04月30日 | 自然観察日記
 東京ではごく普通にみられる野草だが、越後では見慣れないものだからつい見入ってしまう。同じ仲間のノウルシやナツトウダイというのが越後にもあるのだが、初め見たときどこか違うなぁという感覚で対面した。「トウダイグサ科」の科名になった植物である。「燈台草」という字が当てられるのだから灯台と関係があるのだろうが、名前の由来は判らない。
 トウダイグサは関東以南の暖地に生育する植物で、植物体を傷つけると白色の乳液を分布する、有毒植物である。

ヘビノボラズ(メギ科)

2006年04月29日 | 自然観察日記
 小石川植物園で楽しい植物を見つけた。何が楽しいかというとそのネーミングである。表題の「ヘビノボラズ」を読むときほとんどの人は「ヘビノ」「ボラズ」と読むようだが、何のことかさっぱりわからないで、「変わった名前だなぁ」くらいにしか考えていない。
 実は「ヘビ」「ノボラズ」と2+4にわけて読むとその語源が判明する。「蛇登らず」の意味で、茎の各葉腋のところで鋭い棘を下向きに1対出している。この棘ではさすがの蛇も登れないだろうということで付けられたものと思われるが、誰がつけたのかそのセンスに頭が下がる。
 しっかりとした黄色の可愛い花が数個垂れ下がる。実物の花を見るのは初めてで興味深く観察することが出来た。メギの仲間には薬草が多いのだがこのヘビノボラズもそんな使われ方をしていたのだろうか。

ハンカチノキ(ハンカチノキ科)

2006年04月28日 | 自然観察日記
 小石川植物園でちょうど花盛りで、このゴールデンウィーク頃がいいのだそうだ。まだ全国的にも珍しく知られていない樹木だろう。この小石川植物園の個体はかなり大きいから持ち込まれたのはかなり前ということになる。
 中国原産の樹木で貴重なものらしい。一見葉などはミズキの仲間かと思われたが、花の様子からまるで異なるものであることが判る。類似の種は日本には無い。花のような白いものは苞葉が変化したものであろうが、大きく発達し、まさに白いハンカチのようにみえる。言い得て妙の名前である。
 写真で見て知ってはいても、私も初めての観察で感激もひとしおであった。咲き終わった花がハンカチごと散るのだが、それを拾って大事そうに持って行く人も見られ、この植物園での人気のスポットになっていた。

オオアマナ(ユリ科)

2006年04月27日 | 自然観察日記
 長いこと思い描いていてなかなか実現しなかったことが一つ実現した。東大の小石川植物園に遊びに行く機会が持てたのである。都会の植物園という思い込みで凄く整理された園内であろうと考えていたが、正門前に立ったときにその自然性に意表を突かれた。訪れる人も常連なのか服装からストレッキングスタイルでザックさえしょっている。ここは、人工的な要素はあるにせよその歴史からかもう自然そのものに近い印象である。
 園内に入ってまず目に入ったのがアマナの群生である。種はオオアマナといい帰化植物で日本在来種ではないが、ここではいかにも自生地であるかのような振る舞いで至る所に咲いている。日本のアマナはどれも控えめで咲く時期も一瞬、これほど幅を利かせて傍若無人な感覚を与えないのだが、このアマナの群生を見たとき自分の辞書に無い光景で少しうろたえた。太平洋側にはこのようなアマナが自生していたのかと不勉強を恥じていたが、帰化植物と判ってどこか安堵したものである。
 とにかく、小石川の植物園の印象は強烈でなぜもっと早くに訪れなかったか悔やまれるところだが、何度来ても見飽きないし、時期をずらすことによってまた違った側面を見ることが出来るから、これから上京する楽しみが増えたというものである。しばらくは、小石川の植物園で出会った植物を紹介することにしよう。


フタバアオイ(ウマノスズクサ科)

2006年04月24日 | 自然観察日記
 徳川家のご紋の元になった植物。この葉が3枚組み合わされている。しかし、実物は双葉葵だから普通対になって葉が展葉する。その2枚の葉の間に小さな花が付く。
 ウマノスズクサ科の花はどれも特徴的であるが、このフタバアオイやカンアオイの仲間は春早く落ち葉にうずもれた状態で地際に目立たない花を咲かせるから、あまり気づかれることがない。植物の観察会などで教えてあげるとたいがい驚きや感嘆の声が上がる一品である。
 このフタバアオイは我が家の樹木の下の日陰で今年も花を見せてくれた。もう長い付き合いになる。

新しい友達  キジバト(ハト科)

2006年04月23日 | 自然観察日記
 雪消えとともに庭での作業が多くなって結構忙しい。我が家にはいろいろな小鳥やタヌキなどの動物が立ち寄る。いつもは気にせず過ごしているのだが、数日前からキジバトが私の周りに付かず離れずいることに気づいた。数日前の酷い雨の日は軒先の一輪車の上でスズメと一緒に雨宿り。ガラス越しに私がいても警戒する様子は無い。庭で作業をしていて近づいても逃げる様子が無いし、偶然2mくらいまで近づいても野性の反応を示さない。悠然と庭をあちこち移動しながら何かをついばんでいる。
 ちょうどいい友達が出来た。不安を与えない距離を保って口笛を鳴らしたり手をたたいたり話しかけたりしながら、急ぎもしない庭仕事の合間に相手をしている。キジバトは庭先で営巣したりするから、人には慣れやすいのだろう。ごく馴染みのある野鳥であるが、私にとってこんなに近い距離で目を合わせられるキジバトは始めてだからこれからのコミニュケーションを大切にとっていくことにしたい。どういう名前を付けてあげようか。長く友達でいたいものだ。

アカヤシオ(ツツジ科)

2006年04月22日 | 自然観察日記
 これは30年くらい前に静岡の山中から連れてきたアカヤシオの花である。成長が遅いから、30年経っても1mにも達しない。かなり前から花は見せてくれるけれども、出来たつぼみがみんな開花してくれることは無い。あまり越後が好きでないようである。雪の少ない冷涼な場所が彼らの住処である。
 アカヤシオは昨日のミツバツツジに近い種であるが、より高所に生育し大木になる。かつて静岡の山中で直径30cmを越し、枝振りが10m四方もあるものを見たことがある。これがツツジであるから驚きである。もう一種シロヤシオというツツジもあってこれも大木になる。桃色のアカヤシオ、白色のシロヤシオが群れて咲くところが太平洋側の山塊にところどころあるが、花の時期に出会えればそれはt「楽園」という表現以外に無い空間になる。いつか訪れたいが、今年は実現するだろうか。
 現地で咲き出すのは5月中ごろなのだが、ミツバツツジと一緒に栽培してみるとアカヤシオの方が早く咲き出すから、より低温で開花のスイッチが入るのが判る。我が家のミツバツツジはようやく苞から花弁が顔を出し始めたところである。いづれにせよ越後も春が急ぎ足でやって来た。

ミツバツツジ(ツツジ科) ①

2006年04月21日 | 自然観察日記
 中央道を南下する車窓から切り立った谷間の山腹にムラサキ色の花が目に付きだした。ミツツバツツジであることは容易にわかるが、冬枯れの雑木林にムラサキ色が美しい。越後でも雪消えの雑木林ではところどころに散見されるけれど、木曾の谷間ではとても良く目立った。
 一般にツツジはサクラが終わった5月ころの花といわれるけれど、このミツバツツジの仲間はとても早い。途中通過した南木曽ではミツバツツジの群生地があって周囲にサクラが配置されて公園になっていた。おそらく、ミツバツツジを除いてその他の雑木を伐採しながら育ててきたのであろう。植え込んだものではなく野生のツツジだが純粋に自然状態で群落が出来たのではない。
 ところで、このミツバツツジは分類が難しい。毛があるかないかなどで様々な種が日本各地に生育している。越後ではユキグニミツバツツジとかサイコクミツバツツジなどが生育しているのだが、一見しただけでは判別しにくい。今回目撃したものは場所からしてトウゴクミツバツツジになるのだろうか。いずれにせよ葉が三枚、輪性状にでることに由来するが、種が多いということはこのミツバツツジが今まさにこの日本で進化し続けている証拠と考えてもいいだろう。日本はサクラの国でもあるが、ツツジの国でもある。