中部日本の高山から北海道にかけて生育する高山植物として扱われている種ですが、日本海側の新潟県ではそれほど高山というわけでもない場所にも見られる種です。いわゆる深山の沢地でしばしば大きな群落を見ています。「カラマツソウ」という名がついていますが、カラマツソウ属とは異なる属です。がくは早落性で花弁がなく花糸が目立ちカラマツソウ属の花とうり二つ。葉を見ないとその違いは分かりませんね。この個体はまだつぼみの状態で何か葉以外に特徴はないかと記録に撮っておきました。
朝露に濡れたモミジカラマツの花です。花弁はなく目立つのはやや幅広くなった雄しべの花糸。雌しべは中央にかたまってあるのですが、なんとなくわかりますね。実は金平糖状になりカラマツソウ属の実とは趣がかなり異なります。
月山に登った時期が7月で、まだ残雪が多くみられましたからその周辺がまだ早春。そんな中にショウジョウバカマがありました。見た季節もそうですが、こんな高い場所にも生育しているということに驚きです。里山の低山帯から高山帯まで生育するという極めて垂直分布が広い種です。こういう生態を持つ種も珍しい存在です。水平分布も広いようで九州から北海道まであるそうですから、日本全国どこにでもあるという話になってしまいます。まるで帰化した雑草のような印象になりますが、しかし、この花は煙たがられることもなく春告げ草として誰からも愛される不思議な花です。
どこにでもある花とはいえ、その地域地域で受ける印象がかなり違いがあります。この春、北信濃で観たショウジョウバカマは大変スマートな草姿で越後の里山で見るずんぐりむっくりとは格段の差がありました。色合いも紫色が強く、越後の桃色が強い系統とは違っています。月山の個体は色彩や葉の細さは北信濃の個体に近い印象です。
久しぶりの出会いでした。スミレの中でも変わった名前の持ち主で、葉の形が「駒の足跡」に似ていると思われた方が名付けたのでしょうか。こういう発想をする人の頭はどうなっているのか・・とこちらの方に興味が移ってしまいます。それはそうと、黄色いスミレは越後にはオオバキスミレがいっぱいありますね。個人的にはこれは「越後の宝」などと言って自慢話をすることがあります。黄色いスミレは太平洋側の低山にはきわめてまれにしかありません。学生の頃静岡県の焼津の山でイチゲキスミレを見たことくらいしかありません。この時も、ここにしかない貴重なものだとか言われての観察でした。太平洋側に住む人にとっては黄色いスミレを見たかったら高山に行けという感覚ですが、越後なら春になれば里山を散歩すればたくさん見られますから自慢したくなる気も分かっていただけるのではあなあいでしょうか。
形態はスミレの花の一般的な形状で、花が黄色というのが最も大きな特徴でしょう。花弁は先が幾分とがり気味なところも特徴的です。月山にはキバナノコマノツメ以外にスミレで気づいたのはツボスミレの仲間くらいでした。
月山8合目の登山口から間もなくすると姿を見せ山頂まで所々にまとまった群落などもあり個体数の多い種です。花の咲きだしのころで舌状花が目立ちます。さしずめ小さなひまわりといったところ。黄色の色が澄んでいます。小さな花が多い高山では目立つ花の一つで、紛らわしいものももないので遠くからでもそれと分かります。
シュロソウの仲間ですがつぼみの色が気になります。それを除けばアオヤギソウでいいとは思うのですが・・・。9合目下のお花畑付近から気づいて、以前どこで観たかを思い出そうとしながら登り続けました。白馬山塊だったか三国山付近だったか・・。その時はつぼみの時期ではなかったようですからこういう色具合のイメージを思い出すことができません。タカネアオヤギソウといわれる種もありますからそれかもしれません。花が赤紫色のシュロソウはこんない大型ではなかったはずだし・・・。アオヤギソウは花が緑色のはずですからこんなに色素が気になるというのはおかしい・・・。
ササ原のへりに開花している株を見つけました。花は全体が緑色ではなく花弁に褐色の筋が入りまるで二重の花弁のようです。過去に観たアオヤギソウならこの線が無かったと思いますから、違う種でしょうか?アオヤギソウでないなら何でしょう?。手元にある資料やネットで検索しても該当するものが見当たりません。そこで今の段階ではアオヤギソウの変異の幅の一つの形態として扱っておくことにして、今後の野外観察の宿題に残しておきます。「タカネアオヤギソウは背が低い」というイメージがありますから目の前の個体は幾分高径の個体ですから決めつけるわけにはいきません。そういえば、タカネアオヤギソウの花をしっかりと見た記憶がありません。月山には不思議な種がいろいろと生育している場所のようで、また、来る必要がありそうです。
標高の高いところに来ればごく普通に見られるゴゼンタチバナ(といっても私が登る越後や信州の高山帯が中心なのかもしれません)、多くは針葉樹林帯の亜高山帯で見かけることが多いのですが、針葉樹林帯を欠く月山でも見ることができました。小さな草本でありながら比較的花が大き目で存在感があります。
この種の花はざっくりとみることが多くそれで観た気でいるのですが、拡大してみるときちんと観ていないことに気づかされます。いろいろな気づきがありますね。
ミズキ科の種でハナミズキによく似た構造をしています。花弁様の白いものはほう葉で、花はその上に乗る細長い一つ一つのもの雌しべや雄しべも確認できます。4数性のはなとされますから、小さな花弁や雄しべも4個。少々画像が不鮮明で分かりにくいですが・・・。
ミズキ科の種でハナミズキによく似た構造をしています。花弁様の白いものはほう葉で、花はその上に乗る細長い一つ一つのもの雌しべや雄しべも確認できます。4数性のはなとされますから、小さな花弁や雄しべも4個。少々画像が不鮮明で分かりにくいですが・・・。
オオコメツツジです。最近認識したのですが、新潟県内ではコメツツジ(花弁が5枚)とオオコメツツジと2種があり両種の分布が興味深いのです。オオコメツツジは苗場以南に分布が途切れている部分もありますがほぼ南から北まで県境の高海抜の山地に自生していますが、コメツツジは魚沼の県境の地域に分布していて他地域には確認されていません。山形県の分布がどうなっているの資料がないので不明ですが、オオコメツツジは新潟の分布につながるものでしょう。日本海型の分布をする種と考えています。
(糸魚川の白馬山系の種はチョウジコメツツジタイプとされます)
(糸魚川の白馬山系の種はチョウジコメツツジタイプとされます)
100%ではないのですがオオコメツツジは花弁が4枚です。雄しべも花弁が4枚の花は4本です。先日、縁があって京大の元名誉教授のT先生にいろいろ教えていただく機会がありました。その中の一つが、同系統の種に花弁が5枚だったり4枚だったりする場合の一つの考え方として、「進化すると花弁の枚数は減る」という傾向があるそうで、無駄なエネルギーを使わないようになるためではないかというのです。それに当てはめれば、コメツツジを基本とすれば、日本海側に適応したオオコメツツジは一つの進化をとげ今の形質を身に着けたことになります。「進化すると数が減る」というのはいろいろなところで見られるということですが、私の認識にはありませんでしたからこれからはこの視点も使って自然観察を行っていきたいと思います。興味深い新たな発見がありそうです。