この花も越後の名花だと思います。初夏の一時里山を派手さはないのですがぱぁ~っと明るくしてくれます。湿り気のある半日陰がお好みのようで林の縁などに生活しています。ときどき大きな群落になっている場所がありますが、種子が小さく発芽して大きくなるにはかなりの幸運に恵まれないと難しいようです。そのせいか競争の少ない湿り気のある崖などに根付いています。案外こうしたところに大きな群落が成立しています。根付いて数年すると塊根は立派なものになり簡単には消えそうにない大株になりますね。同じように小さな種を持つトリアシショウマも塊根を作り、塊根が発達すると山菜として取られても消滅しないほどの逞しさをもつようです。根を太らせる戦略は野草の多くに見られますが、栄養や水分をため込む重要な仕組みのように思えます。これが完成すると長きにわたり生活できますが、ここまでたどり着く種子はごくごく少数なのです。
6月に入って昆虫の活動が活発になってきました。その中で蝶の飛翔が目立ちます。仲でもアカシジミとウラナミアカシジミが例年になく多く見かけるようになっています。昆虫の発生も波があって今年はこの2種が目立つのでしょうか。アカシジミはゼフィルスといわれる一群の一つで若かりし頃これにあこがれてネットを振った記憶があります。まだ、ミドリシジミ類が目撃されていませんから興奮もいまいちなところがありますが、里山が昔ながらの蝶の乱舞する場所になってほしいと願っているところです。
丘陵公園の里山の水辺に手を加えた一角にヒツジグサが植栽されています。ヒルムシロの被圧を受けながらなんとか根付いた模様。とはいっても絶えず手を加えていかないといけないのが現状です。これが一面には生育する状態になるにはひと山もふた山もありそうです。今年は大渇水状況で湿地に流れ込む水がありません。気温の上昇と共に水質の悪化が懸念されていて大量の雨水が欲しと願っています。
ヒツジグサはスイレン。以前は別物という意識がありましたが、「スイレン」というのはかなりあいまいなくくりのようで生物種としては使えないのではないかと感じています。スイレンといわれても結局はヒツジグサのことが多く、もちろんスイレンには園芸化されたものが含まれています。ところで、ヒツジグサの名前の由来はなかなか言いえて妙ですね。「未(ひつじ)の刻に咲く花」という意味で、今の午後2時ころに咲く花で習性も面白い種です。園内にはアサザが生育していますが、アサザは午前中に咲いてちょうどヒツジグサが咲くころからしぼみ始めますから両種の入れ替わりも観察できます。
里山フィールドミュージアムの湿地に手を加えて様々な種を植栽した中で一番うまくいっているのがアサザのようです。急激な増殖力を見せわずか2年で植栽した池を覆い尽くしています。水草の増殖力に舌を巻きますが、ツボにはまると奇跡が起こるのです。ところでアサザはかつては低地の沼などにはごく普通にあった水草だったそうです。私が植物に慣れ親しみ始めた頃にはもうその面影はなく、絶滅危惧種扱いされるほどになっていました。事実県内で自生している個体を見たことがなかったのです(実際は自生いている池に足を運ばなかった)。農薬を使わないで昔ながらの環境維持をしていると絶滅危惧種が復活するということを身をもって体験しました。
アサザもヒルムシロも水草としては同じですが、花景観を作るにはアサザの方が圧倒的に好まれます。ヒルムシロは害草でアサザは貴重種扱い。ここで見ていると、アサザの猛威はかつては人から嫌われたのではないかとさえ思えてきます。それはそうとここは公園ですからアサザの繁茂はありがたい誤算で、新潟県内ではこれほどのアサザの群落は見られないと思います。隣接する池にも進出する気配ですから、近いうちに丘陵公園の里山はアサザの里などといわれるかもしれませんね。早朝の花景観は見事ですよ。この花の花期は長くこれから秋まで楽しめます。午後にはしぼみ始めますから、午前中ですね。
「金鳳花」。金色に輝く花は個人的には好きな野草ですが、あまり周囲の人の評価は高くありません。高山種なら目の色を変えそうな人も反応はいまいちです。ウマノアシガタなどという別名も災いしているのでしょうか。しかし、これをせっせと増やして花修景を作ればきっと見直してくれると思っています。
キンポウゲ科の名前にも使われているキンポウゲの花。小粒ながらも素敵な花です。農道などにごく普通にあるのもいいですね。花弁は5数性で雄しべ雌しべは多数あります。実の形状がそれぞれ独特な科ですが、このキンポウゲは小さな金平糖様です(いわゆる金平糖の実を付けるのはキツネのボタン)。有毒植物ですから牧場などでは馬や牛は食べませんから大群落になっているところもあります。
今年もまた新たな帰化植物がフィールドミュージアムに侵入してきました。キレハイヌガラシで畑の一角にきれいな花の塊りができていて、意図的に残されたようでした。大目に見ているハナニガナと混同しているふうで、指摘すると間もなく除去されました。この種も至る所で猛威を振るうようになっていますね。気が付けば公園の周辺にも黄色の花の塊りがみられました。
古来からの雑草として有名なイヌガラシより花は見ごたえがあることは確かで、つい残したいと思うのも無理からぬことかもしれません。ヨーロッパ原産のアブラナ科帰化植物。葉が切れ葉状になっていることが特徴です。
夏から秋に花が見られるツリガネニンジンです。一部で山菜として利用しているという話ですが、私はまだ口にしたことがない気がします(どこかで食べているかもしれませんが記憶が残っていません)。公園の一角に自生していますから少しだけ移植しようと持ち出したものです。
ニンジンというからにはそれなりの肥大があるとは思っていましたが、かなりの肥大した根で少々驚きでした。根ほりを充てる位置が悪くて傷をつけてしまいましたが立派な塊根が取り出せました。地下にこれほどの塊根がある種ですから、刈り払いなどの抵抗性が強いものと思います。公園ばかりでなく里山の農道周辺によく見られます。結構湿り気の好きな植物ですね。
「いずれアヤメかカキツバタ」。アヤメかショウブかひとしきり話題になる季節ですが、本物のショウブのが目につきましたから取り上げてみたいと思います。ショウブはショウブ科でアヤメ科ではありませんから世の混乱がちょっと滑稽ですね。ショウブは端午の節句で「菖蒲湯」に利用する薬効のある草本で、地域によってはこの葉をヨモギの葉と共に軒に飾る風習があるそうです。厄除けですね。
これが本物のショウブの花です。ご存知の方も多いのでしょうが、説明すると驚きをもって受け取られる方がまだまだ多いですね。世に「菖蒲園」というのがありアヤメの仲間をたくさん展示していますが、これはいかがなものでしょうか。「アヤメ園」なら許されるのですが・・・。ノハナショウブという種があってこの葉がショウブに似ているために「ショウブ」という言葉が使われるようになったのでしょうが、ノハナショウブの方に先にふさわしい名前が付けられていれば今の混乱はないのでしょうね。昔は「花を見る」ことより「薬」の方が大切なことだったのでしょう。薬になる植物が最初に市民権を得たと考えています。
花はサトイモ科の特徴をした形質を有しています。緑色の先端が雌しべの柱頭、周辺の黄色ものは葯です。仏炎苞は持ちませんがミズバショウの花と同じ構造になっています。
花はサトイモ科の特徴をした形質を有しています。緑色の先端が雌しべの柱頭、周辺の黄色ものは葯です。仏炎苞は持ちませんがミズバショウの花と同じ構造になっています。