千手が浜の湖畔に目を見張るような純白になっている樹がありました。見事な花盛りのシウリザクラです。シウリザクラを見る機会はほとんどありませんからとても感動しました。里山には同じ属のウワミズザクラがありますが、花の大きさには見劣りがあります。まさに圧巻!でも、周りにはこの樹に興味を示してくれる人がいませんでした。クリンソウも素晴らしいものですがそれに劣らずすばらしいものだと思うのですが・・。
バラ科のウワミズザクラ属の種ですから一つ一つの花はサクラ属にも近い構造をしています。ほとんどが白い色の花なのですが花穂に一つか二つ赤味がかったものが混ざっていました。理由は分かりませんががくやおしべの基部が赤くなっています。
シウリザクラはやや北方の種で新潟県内では自生は少ない種です。調べてみると苗場山と糸魚川の黒姫山に採集記録がありました。さらに、佐渡に何カ所かで採集されていて面白い分布をしています。かつて尾瀬の鳩待峠周辺で沢山見た記憶がありますが花の季節は今回が初めてでしたから圧倒されました。
日光植物園に行く予定で日光の地に足を踏み入れました。おりしも千手が浜のクリンソウの群落が見ごろというので立ち寄ってみました。特に開花タイミングを合わせたわけではないのですが以前から気にしていたところでしたから日程に入れてみました。ところが前日にNHKの全国放送に載ってしまいかなりの混雑を覚悟しなければならない状況。こちらの都合もあって遅い時間にシャトルバスの発着場の赤沼について現地に向かいます。午後の遅めの時間でしたから千手が浜行きは空いていましたが現地は人であふれていました。帰りはかなり混んだ状態で帰ってきました。千手が浜には船で行くこともできるのだそうで、ここが波止場です。背景の山は男体山。
今年はシカの被害も少なく群落はいい状態なのだそうです。バスの終点から1kmほど歩いた場所に管理されまとまって生えている場所がありました。いろいろな色彩の花が観られとてもきれいなものでした。ほぼ自生株で自然に生育しているようです。どれくらいあるのか調べそこないましたがざっくり1000m2くらいの場所に開花株で3000株程度?もっとあるかな?実は園内を回りきっていません。帰りの時間が気になってゆっくりと散策できない事情がありました。
群生地近くのクリンソウの自生状態です。実は千手が浜の波止場からは浜沿いに散策路が作られていて小さな沢を横断するあたりから木道がになっています。この木道から見たもので生育する場所には近づけないのですが周囲はかなりの高径の草本がありその中で生育しているという光景です。おそらく群生地あたりはこれに近いものではなかったかと思います。被圧する植物を抜き取りながらクリンソウだけの群落を作ったと思いました。多少は植栽したものもあるかもしれません。
日本産のサクラソウ属の中で最も大きい種とされます。栽培しやすい種で家庭や公園の花壇などでもしばしば目にします。しかし、自生地となると少なく見つかると持ち帰られてしまう運命にあるのではないでしょうか。花色は白から濃桃色まで中には絞り状になるものもあるそうですが、かなりカラフルです。花には毒があるとかでシカは花を食べないが花茎を食べるのだとシャトルバスの運転手さんのガイドでした。
かつては茶畑だったようです。成長したスギの根元にチャの樹が細々と生きていました。林床にチャの樹が見られる場所は間違いなくお茶畑として利用していた場所で、維持管理ができなくなってスギの植林地にしたのだと思います。茶畑の時代はもっと豊かな植生だったと思いますのでそれを維持できなくなった労働や経済的な問題があったことと推察しています。