■「赤い月」(2003年・日本)
監督=降旗康男
主演=常磐貴子 伊勢谷友介 香川照之 布袋寅泰
なかにし礼の自伝的小説を中国大陸ロケで描く話題作。正直言って面白くない。それはヒロインの行動が何とも理解し難いからだ。香川照之扮する夫に子供2人がある身で、伊勢谷友介の彼女ロシア娘に横恋慕、昔の恋人である布袋寅泰と応接間で抱き合って・・・そこまでの行動に出る理由を観客に納得させる材料は全くないままなのだ。「生きていくには愛する人が必要なのよ。あなたにもいつかわかるわ。」もっともらしい台詞ではあるが、説得力はない。ラストの「ありがとう、満州。」にしても何か伝わらないんだよね。
「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラも恋多き女であったが、彼女の場合はアシュレーへの恋心だのバトラーへの当てつけだの理由があったし、奔放な性格も説得材料ではあった。「赤い月」のヒロインも、きっと満州に着くまではいろいろあったのだろう。でも夫も特別悪い人でも俗物でもなさそうだ(指摘めて決意を示すのはやりすぎだと思うけど)。ともかくヒロイン像に説得力がないのだ。いや、これには予備知識がいる、原作を読んでおくべきと言うならば、それは映画製作者側の怠慢だろう。2時間で納得させられない題材ならば、ドラマでやればよい。昼メロでじっくりやればよい。原作者には申し訳ないけれどこの映画ではお母さんのイメージ悪くしやいないだろうか。
中国大陸にロケした広大な風景を収めたカメラはいい。ひとつひとつが絵になる場面が多いのは印象的。常磐貴子の熱烈なファンであれば観るべきであろうが、僕としてはあまりお薦めはいたしません。東映が製作して色っぽい文芸路線で映画化していたら、また違う面白さがあったのかも。
(2003年筆)
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