■「エターナル・サンシャイン/Eternal Sunshine Of Spotless Mind」(2004年・アメリカ)
●2005年アカデミー賞 脚本賞
●2005年ラスヴェガス映画批評家協会賞 主演女優賞・脚本賞
監督=ミシェル・ゴンドリー
主演=ジム・キャリー ケイト・ウィンスレット キルスティン・ダンスト トム・ウィルキンソン
予告編を観たときにビビッときた。”ジム・キャリーは苦手な役者だがこれは観たらツボにはまりそう”・・・そんな予感がした。公開時には見逃していたのだが、小倉昭和館が2本立てで上映してくれていたので、仕事疲れがあったけど行くっきゃねぇ!と出かけました。結論、当たり!。映画でしか味わえない興奮、胸キュン(死語)なラブストーリーの展開、独創的な映像、さらに頭も使わせる映画。こんな映像体験は滅多にない。脚本のチャーリー・カウフマン作品には「マルコビッチの穴」という大傑作があるけれど、あの映画はアイディアと凝ったディティールの積み重ねでできた映画だった。でも「エターナル・サンシャイン」には、「マルコビッチの穴」にはない情緒がある。そこが決定的な差。その分だけ一般にも受け入れられているし、面白いのだ。
好きだった人と別れた後、相手との記憶を消してしまいたいと思ったこと、誰にでもあると思うのね。メアドやメールのやりとりを消去する、届いていた手紙や写真を処分する、そんな行為でも思い出だけはとても消し去れるものではない。その痛みがわかる人程、この映画は胸に迫ってくるはずだ。別れた女性クレメンタインが自分の記憶を消した、とラクーナ社から届いた手紙で主人公ジョエルも彼女の記憶を消そうと決心する。しかし消去が進む中、彼女との楽しかった美しい思い出たちが自分にとっていかに大事なものだったか、そして彼女がかけがえのない存在だったことに気づいていく・・・。
消去される記憶から彼女を隠すために、幼い頃の思い出の中を逃げ回る場面は実に秀逸。記憶を消す側のスタッフの慌てぶりと、追っ手から逃れて”彼女の存在”を残そうと賢明になるジョエル。ここはその表現に感服しながらも手に汗を握る。そして最後の出会いの記憶まで追いつめられた彼らは「この時を楽しもう」と言う。そう美しい思い出は一瞬のもの、だけどそれは永遠のものなんだよね。崩れゆく海辺の家で別れを告げる場面、泣けます。でも面白いのはその脳髄の世界だけではない。ラクーナ社のメンバーの愛憎劇がジョエルに影響を及ぼしていく場面は、サスペンスが二重三重に畳みかけてくる。特にスタッフの一員を演ずるキルスティン・ダンストがとても印象的だ。彼女が過去を知らされる場面の切ないこと切ないこと。
映画館を出て、帰り道にこれまでの自分の恋愛について思わず考えてしまった。美しい思い出だけが頭に浮かんだ。そんな気持ちがますますこの映画の感動をジワジワと増幅させてくれる。傑作!。
(2005年筆)
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