■It's A Long Road/Dan Hill
from「ランボー/First Blood」(1982年・アメリカ)
監督=テッド・コッチェフ
主演=シルベスター・スタローン リチャード・クレンナ
「ランボー」シリーズのメインテーマとなるこの曲 It's A Long Road の旋律、一度は聴いたことがあるだろう。作曲は御大ジェリー・ゴールドスミス。哀感漂うメロディは、祖国に戻っても孤独なベトナム帰還兵たちの哀しみを見事に表現していた。プロデュースとアレンジは、Totoのデビッド・ペイチが担当。歌っているのはカナダのシンガー・ソングライター、ダン・ヒル。グラミー賞候補に挙がったこともあるとか。14才から作曲活動を始め、17才でカリフォルニアへ。75年にデビュー、78年の Sometimes When We Touch(ふれあい) がビルボードで3位を記録した。87年に6位まで上昇したバラード Can't We Try(とまどい) も名曲だ。こちらも是非ご一聴を。
ベトナム帰還兵ジョン・ランボーは、流れ者としてある町へやって来る。だが帰還兵の彼を誰も受け入れようとせず、警察も彼を厄介者扱い。浮浪罪で逮捕し、人間扱いを全くしない。ついに怒りが爆発。山林に逃げ込んだ彼は追っ手を次々とかわしていく。説得にやって来た元上官トラウトマン大佐に、彼は涙ながらに訴える。スタローンが泣き崩れる映画は多くない。この傷だらけのヒーローは、我々にベトナム帰還兵の社会復帰問題を痛烈に訴えた。ただのアクション映画ではないのだ。続編「ランボー/怒りの脱出」でもMIA(戦闘中行方不明者)の問題を取りあげ、国の冷たい仕打ちに怒りをぶつけた。”俺たちが国を愛したように、国も俺たちを愛して欲しい”。ラストの台詞は強く残った。
僕らの世代は、この頃のスタローン作品はたいてい観ている。少し後の世代だと、シュワちゃんがアクションスターの代名詞のようになるのだろう。でも僕らにとってスタローンは単に筋肉に物を言わせ、SFXで見せ場をつくるスターではなくて、今よりも数段”映画人”だったと思うのだ。そりゃあ監督作には失敗作もある。僕らが心底”スタローンすげぇ!”と思っていた頃の映画は、やはりどこか違う。「ランボー」の1作目はそんな映画の1本だと思うのだ。やはりスタローンは、日本のCMで”ハムの人”になる前がよかったよね・・・と言ってたが、「エクスペンダブルス」からの大活躍は80年代を知る僕らにはお涙もん。
※Dan Hillの曲が聴ける主な映画
1978年・「年上の女」 = ♪Sometimes When We Touch
1982年・「ランボー」 = ♪It's A Long Road