Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ネイキッド・タンゴ

2022-02-26 | 映画(な行)

◼️「ネイキッド・タンゴ/Naked Tango」(1990年・アメリカ)

監督=レナード・シュレーダー
主演=マチルダ・メイ ビンセント・ドノフリオ フェルナンド・レイ イーサイ・モラレス

1920年代のアルゼンチンを舞台に、タンゴを通じて繰り広げられる男と女の物語。タイトルバックには、当時の映画スタアであるルドルフ・バレンチノの「黙示録の四騎士」が使われている。美女と踊る男を退けたバレンチノが、足が絡み合う華麗なタンゴを踊る映像にクレジットが重なる。

高齢の判事の妻となったステファニー。タンゴを踊るのが好きな彼女を、判事は「他の男と踊るな。お前はタンゴが分かっていない」と子供扱いする。ブエノスアイレスに向かう船上で、身投げする女性を目撃したステファニーは、彼女になりすまして夫の元を離れようと企てる。しかし死んだ女性アルバの嫁ぎ先のユダヤ人男性は、外国から招いた女性を娼婦として売買する裏社会の組織に関わっていた。初夜に迫ってきた男を斬りつけた彼女は、華麗な足取りの謎の男チョーロに娼館へ連れて行かれた。チョーロが興味を持つのはタンゴだけだと言う。

20年近く前に地上波深夜枠で放送された録画を自宅で見つけた。2022年2月に、初めてレンタルビデオで観た1993年以来の鑑賞。マチルダ・メイは好きなフランス女優の一人。地球外吸血鬼映画のせいでおっぱいが魅力の人と思われがちだけど、歌って踊れる才女で音楽活動もやっている。英語詩で歌ったアルバムもリリースしていて、少年のような歌声がいい。

この「ネイキッド・タンゴ」でも、マチルダのタフでセクシーなヒロインが素敵だ。チョーロを演ずるヴィンセント・ドノフリオにタンゴのパートナーとして惚れられる役どころ。目隠しで踊る場面、全裸で踊る場面、豚の血を蹴り上げながら屠殺場で踊る場面、相手にナイフを突きつけて踊る場面。ダンスシーンがこれ程スリリングで緊張感に満ちた映画ってなかなかない。チョーロにとって、踊ることは「生」であり「性」。裏社会を生きる彼につきまとう「死」を振り切るために踊るようでもある。彼が屠殺場で踊るのは、死の空気の中で生を実感したいからではないだろか。

アルゼンチンタンゴ特有の絡み合うステップ。足元をアップで撮るカットはさすがにプロがやっているのだろうが、もつれ合うようなダンスがとにかく絵になる映画。娼館の赤いライトと夜の闇のコントラストが美しい。もっといい画質で観てみたいな。

クライマックスは彼女をめぐる3人の男たちが激突。夫である判事を演ずるのは、「フレンチコネクション」の悪役で知られるフェルナンド・レイ。若い妻を愛しながらも心を掴みきれない切なさがうまい。愛を知らない男と言われるチョーロは、
「持って生まれた美貌はではなく、お前が創り出す美しさがいいんだ」
と言って彼女を抱こうとしない偏愛ぶりも心に残る。不器用な男の愛し方。抱き合って踊る血まみれのラストダンス。悲しくも美しい。
コメント
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