◼️「ウディ・アレンの夢と犯罪/Cassandra's Dream」(2007年・イギリス)
監督=ウディ・アレン
主演=ユアン・マクレガー コリン・ファレル ヘイリー・アトウェル トム・ウィルキンソン
ウディ・アレンがイギリスで撮った三部作の第3作。サスペンス色が強かった「マッチポイント」、コミカルなコメディ「タロットカード殺人事件」に続く本作は、シリアスな人間ドラマ。
事業に手を出す野心家のイアン、ギャンブル好きでなかなかやめられないテリーの兄弟。テリーが抱えた多額の借金返済とイアンが投資資金を工面するために、羽振りのいい叔父に相談した二人。ところが叔父からその対価として持ちかけられたのは殺人だった。
人が殺人に手を染めるきっかけはいろいろあるのだろうが、この映画の兄弟は、大それた犯罪が目的でも、相手への積もり積もった殺意でもない。自分が叶えたい身近な欲望の為に殺人を決行する。それが引き起こす悲劇。
二人が購入した船につけられた名前は、カサンドラズドリーム。ギリシア神話に登場する悲劇の王女で、予言を誰にも信じてもらえなくなる呪いをかけられる。アレン先生はこのギリシア悲劇をひっかけて、兄弟の過ちを現代の寓話のように描いていく。借りものの高級車で虚勢を張るイアンの投資話も、テリーが当てようとする大穴も、人には簡単には信じてもらえない話。それを実現しようと躍起になることから起こる悲劇。ラストは二人の間に起こった真実すら、誰も見つけてくれないのだ。
ユアン・マクレガーのギラついた情熱型キャラと、コリン・ファレルの心配性なのに自制の効かないキャラ。弟を説き伏せて犯行を計画するが具体的な策を出せない兄に対して、燃やせるピストルのアイディアを冷静に出すのは弟。二人の揺れる関係と、クライマックスの船上の二人にハラハラさせられる。テリーの彼女役は「ブルー・ジャスミン」でも好助演だったサリー・ホーキンス。叔父役トム・ウィルキンソンは、物語を大きく動かすキーパーソンで一人勝ちの貫禄。
日頃のアレン映画を期待すると、ニヤリと笑えるところもない。小粋なジャズも流れない。そこで好き嫌いが分かれる映画だと思う。虚飾のハリウッドと古巣ニューヨークを離れたアレン先生は、得意の色恋沙汰コメディを排除したイギリス三部作で、「簡単に人を信じちゃダメだよ」と言ってるように思う。
そしてわれらがアレン先生は、この後再び男と女のドラマに戻ってくる。「結婚って何なの?」と僕らに突きつける快作「それでも恋するバルセロナ」だ。
事業に手を出す野心家のイアン、ギャンブル好きでなかなかやめられないテリーの兄弟。テリーが抱えた多額の借金返済とイアンが投資資金を工面するために、羽振りのいい叔父に相談した二人。ところが叔父からその対価として持ちかけられたのは殺人だった。
人が殺人に手を染めるきっかけはいろいろあるのだろうが、この映画の兄弟は、大それた犯罪が目的でも、相手への積もり積もった殺意でもない。自分が叶えたい身近な欲望の為に殺人を決行する。それが引き起こす悲劇。
二人が購入した船につけられた名前は、カサンドラズドリーム。ギリシア神話に登場する悲劇の王女で、予言を誰にも信じてもらえなくなる呪いをかけられる。アレン先生はこのギリシア悲劇をひっかけて、兄弟の過ちを現代の寓話のように描いていく。借りものの高級車で虚勢を張るイアンの投資話も、テリーが当てようとする大穴も、人には簡単には信じてもらえない話。それを実現しようと躍起になることから起こる悲劇。ラストは二人の間に起こった真実すら、誰も見つけてくれないのだ。
ユアン・マクレガーのギラついた情熱型キャラと、コリン・ファレルの心配性なのに自制の効かないキャラ。弟を説き伏せて犯行を計画するが具体的な策を出せない兄に対して、燃やせるピストルのアイディアを冷静に出すのは弟。二人の揺れる関係と、クライマックスの船上の二人にハラハラさせられる。テリーの彼女役は「ブルー・ジャスミン」でも好助演だったサリー・ホーキンス。叔父役トム・ウィルキンソンは、物語を大きく動かすキーパーソンで一人勝ちの貫禄。
日頃のアレン映画を期待すると、ニヤリと笑えるところもない。小粋なジャズも流れない。そこで好き嫌いが分かれる映画だと思う。虚飾のハリウッドと古巣ニューヨークを離れたアレン先生は、得意の色恋沙汰コメディを排除したイギリス三部作で、「簡単に人を信じちゃダメだよ」と言ってるように思う。
そしてわれらがアレン先生は、この後再び男と女のドラマに戻ってくる。「結婚って何なの?」と僕らに突きつける快作「それでも恋するバルセロナ」だ。