Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

紳士協定

2022-02-06 | 映画(さ行)





◼️「紳士協定/Gentleman's Agreement」(1947年・アメリカ)

監督=エリア・カザン
主演=グレゴリー・ペック ドロシー・マクガイア ジョン・ガーフィールド セレステ・ホルム

オスカー受賞作である本作は1947年製作。日本で初公開されたのは1987年。時間はかかったけれど、これは意外とタイムリーだったのかも。折りしも1980年代後半は南アフリカのアパルトヘイト政策への批判がエンタメ界でも高まった時期。人種差別をテーマとした作品は数多く製作、公開された。アパルトヘイトがテーマの「遠い夜明け」、アイルランド系移民への差別を扱った「十字砲火」(これも1947年製作)が日本初公開、KKKが登場する「ミシシッピー・バーニング」もこの後だ。

社会派作品も多いエリア・カザン監督の「紳士協定」は、アメリカ国内での反ユダヤ主義に真正面から取り組んだ映画である。製作当時はホロコーストの記憶も生々しい時代。ナチスドイツのユダヤ人虐殺は許し難いものだが、あなたはユダヤ人をどう思っているのか?。それを観客に突きつける勇気ある作品だ。

グレゴリー・ペック演ずる主人公はジャーナリスト。ユダヤ人に対する差別について記事を書く為に、彼は自分はユダヤ人だと周囲に嘘をついて実態を探ろうと思い立つ。ところがその思いつきが、友人、恋人、母、息子を巻き込む事件に発展していく。

ユダヤ人には部屋を貸さない、商売をしないといったことが暗黙の了解となっている地方もある。ユダヤ人だと偽っていることで受ける仕打ちの数々を経験した主人公。差別をなくしたいと言っていながら、それと戦おうとはせずに紳士協定の内にいる人間だと気付かされることになる。友人のユダヤ人の助言で反ユダヤ主義に立ち向かおうと決心し、疎遠になっていた友人や恋人との仲を取り戻す。

意地悪な見方をすれば、正義漢が似合うグレゴリー・ペックのイメージあっての映画。しかし映画が訴えるメッセージは、同様のテーマを扱う他の映画よりもずっと強い。スクリーンのこっち側に、あなたも紳士協定に与するのかとの問いを突きつけられているようだ。決して理想に走らず、説教くさくは感じなかった。鑑賞当時、大学生の僕は、「教授の授業より基本的人権がよくわかる」と生意気なことを言っていたっけな(恥)。

主人公の母、ラストのひと言。
「みんなが差別を乗り越えることで、今世紀がEverybody's Century(みんなの世紀)となる」
その"今世紀"はすでに過去のもの。21世紀になっても解決すべき問題はたくさんあるのが悲しい現実。





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