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キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

グラディエーターⅡ英雄を呼ぶ声

2024-11-26 | 映画(か行)


◼️「グラディエーターⅡ英雄を呼ぶ声/Gladiator Ⅱ」(2024年・イギリス=アメリカ)

監督=リドリー・スコット
主演=ポール・メスカル ペドロ・パスカル デンゼル・ワシントン コニー・ニールセン

前作「グラディエーター」から四半世紀近く経って続編が製作されるという驚き。しかもこれまで「エイリアン」「ブレードランナー」など自作の続編企画になかなか携わらなかったリドリー・スコットが、本作では自らメガホンをとる。そしてハリウッドがCG駆使してアメコミばっかり撮ってるこの時代にローマ史劇だ。リドリー翁がこの時代に撮ったことにきっと意義がある。何か伝えたいことがあるのではないだろうか。

いきなりタイトルバックに前作の名場面を散りばめて、正統な続編であることを強く示す。ラッセル・クロウの勇姿も前作の映像で何度も映し出される。それは登場人物の関係と、前作の同様に奴隷からの復活劇が再び展開され、因縁めいた物語として印象づけたい狙いがあるのだろう。

コロッセオでの闘いは前作以上に激しさを増す。いきなり凶暴なヒヒとの闘い、サイに乗って突進してくる剣闘士。闘技場に水を張って海戦を再現するシーンも登場し、船から落ちればさらなる脅威が。前作でもコロッセオは死をエンターテイメントとするクレイジーな場として描かれるが、双子皇帝の悪政下となってさらにエスカレートしている。確かに暴力的なシーンではあるが、前作と同様にここで主人公の才覚が示される。そして民衆の心と映画を観ている僕ら観客の心も掴むのだ。

ところが前作と大きく印象が異なる点がある。それは人間関係の複雑さだ。前作は信頼されず愛されなかった者と信頼され愛された者の対比が貫かれた。単純な図式にすれば善と悪だった。狂ったホアキンをどう止めるというお話だった。だが、本作では主人公が仇とするローマの将軍は、皇帝に対するクーデターを企てている張本人でそれを助ける存在が前作にも登場する皇帝アウレリウスの娘。さらに2人の皇帝の力関係や、奴隷商人も前作とは違った立ち位置で描かれる。単純に勢力を二分して登場人物を対比させる構図になってはいないのだ。かと言って小難しい話にはなっていないのは監督の手腕なんだろう。

それぞれが胸に抱く信念がある。それは彼等にとってみれば彼等の正義で、人の数だけ正義がある。それをまとめ導くのが理想とされたローマの政治なのだろうが、共和政から帝政へと変わってきたローマでそれはうまくはいかなかった。前作でアウレリウス帝が説いた"ローマの夢"。その理想は、この続編では夢物語だ、ローマは滅びゆくのみと語られる。一方でそれでも"ローマの夢"を信じる人々がいる。

対比されるはずの陣営の中に組織でまとめきれない様々な意見があり、対立関係と見られる陣営の中にも様々な思惑がある。そんな2020年代の各国の政治状況や世界情勢に、映画はどこか通じるように感じる。大きな選挙の直後だからなおさら。映画の裏側に政治的なメッセージを感じるかどうかは受け止め方次第だが、少なくとも映画はそれでも理想を信じたいと締めくくる。

ポール・メスカルの熱演。他の出演作何を観たっけ?と思ったら、「異人たち」でドアの影に吸血鬼はいないよー♪と言って迫ってきた彼氏か。印象がずいぶん違うので見違えた。前作とつなぐ存在であるコニー・ニールセン、24年前の前作と変わらず美しい。カラカラ帝が出てくるんだから、浴場のエピソードが欲しかったかも。まぁ、それを入れると映画の尺が無駄に長くなっちゃうw





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