Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

キッチン~3人のレシピ~

2013-01-01 | 映画(か行)

■「キッチン ~3人のレシピ~/The Naked Kitchen」(2009年・韓国)

監督=ホン・ジヨン
主演=シン・ミナ チュ・ジフン キム・テウ

※注・ネタバレあります
 夫サンインと幸せに暮らしていたモレは、ある日美術館で素敵な青年と出会う。彼は、証券業界を辞めてフレンチレストランをひらく夫が呼び寄せたスゴ腕シェフ、ドゥレだった。二人の家に住み込みすることになったドゥレ。次第にドゥレに惹かれていくモレ。幼なじみから結婚した二人に対して、ドゥレは「それが愛なのか」と言い放つ。モレも他の男性を対象として見たことがないだけに、表現しがたいときめきに心が揺れ始める。そして知らぬが花だったサンインが、次第に美術館での出来事の相手がドゥレだと知ることとなるハラハラ。夫と間違えて抱きついたり、シャワーを浴びる姿を見てしまったり。過ちで始まった出会いだけに、モレとドゥレの気持ちはどんどん高まっていく。3人の三角関係の行方は・・・。

 韓国の恋愛映画はとてもスタイリッシュだと常々思う。 そこにはまったくアジア的な情緒とは無縁の洗練された雰囲気が漂う。仮にキムチを漬ける場面があっても、キムチくさくない映画なのだ。しかも姦通罪が存在(当時。2015年に廃止。)し、結婚や不倫に日本以上の厳しさがある韓国だけに、こうした三角関係を描いた恋愛映画はスキャンダラスなテーマであることこの上ない。それだけに、この「キッチン~3人のレシピ~」は、洗練された雰囲気に包み込みながら、妻の恋愛という非日常に観客を連れて行ってしまうのだ。

 「あなたを食べちゃいたい」と言う、結婚記念日を迎える幸せそうな夫婦がいる朝のキッチン。ところが次の場面では、美術館の物陰に隠れた二人が真っ白な壁と光に囲まれる美しいラブシーン。それを「変わった味がした」と夫に告白する妻・・・映画冒頭からええ?こっちまで驚かされる展開。絵になる場面の雰囲気に飲まれて、僕ら観客は非日常の恋愛シュミレーションの渦に巻き込まれていく。ともあれドロドロになりそうな素材を、すっきりと演出しているのは見事。韓国の恋愛映画は、このように現実を忘れさせるような気分にさせてくれるの が巧いよね。しかし、自分に置き換えて共感できるようなリアルな恋愛映画を好む人にとっては、現実味が感じられな くて好まれないかもしれない。銀幕の非現実をそのまま受けとめられるか、「オレにはありえん」と思うか。

 天真爛漫だった彼女が身を引くラスト。あれしかとるべき方法はなかったんだろうけど、それはそれで切ないね。結婚って何なのだろう。人が人を好きになる思いは抑えることができないものなのに。それにしてもチュ・ジフン、かっこよすぎ。彼のファンにはたまらない映画でしょう。そして劇中登場する料理の数々。モレが料理で思いを伝えようとする場面は印象的だった。



コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パイレーツ・ロック

2013-01-01 | 映画(は行)


■「パイレーツ・ロック/The Boat That Rocked」(2009年・イギリス=ドイツ)

監督=リチャード・カーティス
主演=フィリップ・シーモア・ホフマン ビル・ナイ リス・エヴァンス ケネス・ブラナー

 音楽と映像が調和する映画が好きだ。それは以前から思ってたことだし、映画の感想に何度も書いてきた。その映画の為にかかれた曲もある。既製の曲が、まるでその場面の為にかかれたかのように見事な使われ方をしていると、嬉しくて仕方ない。「リトルダンサー」のCosmic Dancer、「キル・ビル」の新・仁義なき戦いのテーマ、「あの頃ペニーレインと」のTiny Dancer、「死ぬまでにしたい10のこと」のGod Only Knows…。そんな映画と音楽の幸せなコラボ。「パイレーツ・ロック」もそんな幸せな調和がある。しかも既製曲が、グッとくる使われ方をしているものばかりだ。もう劇場の椅子にじっとしていられなかった。カリスマDJギャヴィンが船にやって来る場面のJamping Jack Flashは一緒に歌っていたし、All Day And All  Of The Nightは立ち上がりたくて仕方なくって(他にお客さんがいなかったら確実に立ってた)、カールのベッドイン場面にThis Guy's In Love With Youで幸せな気持ちになる。

 「パイレーツ・ロック」は実際に存在した海賊放送局の物語。世の中はポップスやロックが流行っているのに、BBCは1日45分しか流さない。レディオロックは北海に浮かぶ船を拠点に、1日中ロックを流し続ける海賊局。個性的なDJたちが実に魅力的。これを規制しようとする政府の対応。ケネス・ブラナーが楽しんで悪役やってるのがいいね。

 大好きなロックが全編に流れるだけでも嬉しい。でもこの映画のラストには、それ以上に涙を誘うよな感動が待っている。そるは音楽がいかにみんなに愛されているかということ。おまけに音楽のためなら死ねると言い切っちゃう男たちの姿。な、なんてかっこいいんだろう。それは音楽に対する純粋な愛。リスナーが、ラジオの前で踊ったり笑ったり、涙したりするところがちゃんとあるのが素敵じゃない。僕らの生活に音楽はたんなるBGMじゃない。人生をいろどるサウンドトラックなんだ。エンドクレジットが終わって僕はスクリーンに向かって拳を高く突き出していた。「ロックンロール!」って一緒に叫びたかった。

 他にもキリがないくらいに好きなところがある。ギャヴィンとカウントの二人がマストの上でチキンレースをやる場面にマカロニ・ウエスタンが流れる場面。街をみんなで闊歩する場面。沈みゆく船で必死でレコード箱を放さないボブ。そのボブが大事に持っていたレコードを「つまらない」と捨ててしまう場面。カールの母親シャーロットの存在感!(エマ・トンプソンってところに驚いた)。そして英国ロック満載の映画なのに、DJカウントが沈みゆく船の中で最後に流した曲はビーチボーイズのWouldn't It Be Nice(素敵じゃないか)!。このセンスの良さには参りました。愛すべきロックムービーがまたひとつ生まれた。音楽の神様、映画の神様、ありがとう。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする