Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

さよなら夏のリセ

2013-03-03 | 映画(さ行)

■「さよなら夏のリセ/Surprise Party」(1983年・フランス)

監督=ロジェ・バディム
主演=フィリピーヌ・ルロワ・ボーリュー クリスチャン・バディム カロリーヌ・セリエ

50年代のフランスを舞台にした青春映画。80年代に「ロードショー」を購読していたソフィー・マルソー世代は、「あーこれ雑誌の片隅に載ってたよな~」と懐かしいこと必至。何のCFだったか忘れたけど、フィリピーヌ・ルロワ・ボーリューは当時日本のCFにも出演していたと記憶している(知ってる人教えてください)。もちろん僕も彼女めあてで観ました。

大学入学資格試験(バカロニア)に合格したらアンリ4世のベッドで(女同士で)愛し合おうとか、初体験は好きな人でないと・・・とか、妊娠騒ぎとか。描かれるのは性をめぐって悩める若者たちの姿。しかし、悩める大人達も妙に印象に残る。しかもフィリピーヌの母親はミレーヌ・ドモンジョ、友人の余命短い父親はロベール・オッセン、親ドイツ政権の元大臣にモーリス・ロネという、青春映画とは思えない配役だったり。

しかしどのエピソードも今ひとつ消化不良。フィリピーヌの父親の市長選出馬の話は最初だけだし、クリスチャン・バディムと母親の近親相姦的なムードもよくわからないし・・・。唯一おぉと思ったのは、冴えないおデブちゃんが、妊娠して悩んでいる娘に「僕の子供ってことにして結婚しよう!」と言って愛を勝ち取るラスト。あまりの涙ぐましさに泣けてきた。それにしても、ロジェ・バディムが何故青春映画?と観る前に思った。でもヒロインのヌードをなめるように撮るカメラ・・・それはやっぱりバディムの視線だった。


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クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦

2013-03-02 | 映画(か行)

■「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」(2002年・日本)

●2002年毎日映画コンクール アニメーション映画賞
●2002年文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門大賞

監督=原恵一
声の出演=矢島晶子 ならはしみき 藤原啓治 こおろぎさとみ

 世のお母様方には「子供に見せたくない番組」の上位にランキングされる「クレしん」。”ぞ~さん”とか”ブリブリ~”とか我が子にして欲しくない気持ちは(痛いほど)わかるけど、それだけを理由にこのシリーズを否定する奴らを僕は許せない。そんな世の中の風評に対して、本作は文化庁が賞をあげちゃった。やるじゃん!お役所!。ファミリーで楽しめるこれはまぎれもない傑作である。

1.ここには家族愛がある。
戦国時代にタイムスリップしたしんのすけを追って野原一家が車に乗り込もうとする場面。「しんのすけのいない世界に何の未練があるんだ。」という父ひろしの台詞に、僕はモーレツに目頭が熱くなるのを感じた。クライマックスの死闘、決死のみさえの姿はどうだ。もうこれを書いていて泣けてくる(おバカ)。
2.ここには銀幕でしかなし得ないスペクタクルがある。
往年の大作時代劇をアニメでここまでやっちゃったことに拍手を贈りたい。「天と地と」なんかよりよっぽど興奮したよ。それに侍やそれをとりまく人々の台詞は大人の鑑賞にも堪える本格派。「矢弾を馳走してくれるわ。」とかガキにはわかんねぇだろう。「侍はこの世に未練があると十分な働きができない。」といういじり又兵衛(すごい名前)の台詞がなかったら、きっと「ラスト・サムライ」はなかったに違いない(ウソ)。
3.そしてここにはドラマがある。
大国に媚びるのを止める決断をする殿様の決断。今の世界情勢を思わずにはいられない。ラストの又兵衛の姿にはまた涙してしまう。さらに、現代に文(ふみ)を送って危機を伝える挿話がなかったら、マイケル・クライトンは「タイムライン」を書かなかったかもしれないゾ(ウソ×2)。

 宮藤官九郎が映画「アイデン&ティティ」のパンフに寄稿して、「ギャグマンガの方がトチ狂って書いたシリアスなマンガが好き」と述べている。手がこんでもいないし、上手な絵でもない。そんなマンガで人生の意味を考えるような瞬間って経験ないだろうか?。この「戦国大合戦」はまさにそれなのよ。世のお母様方、四の五の言わず黙って見てくれ!(ついでにこちらも)。




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sex / 石田衣良

2013-03-01 | 読書
書店でレジに持って行くのをためらってしまうストレートなタイトル。でも文庫が出たときに、ちょっと惹かれてた。それは帯に書かれていたひとこと、「好きな人とたくさん」。そう、セックスって身体だけのつながりじゃなく心のつながりである。「好きな人とたくさん」するのはとても幸せなことだし、お互いを認めあって、時間や気持ちを共有する大事な時間。あ、この本はいわゆる官能小説じゃないんだ。中も見ず、予備知識もほぼなしに僕はそう思った。ためらわず手にしてレジに向かった。隠すために別な雑誌持って行くとかもなしに(笑)。

世の中は性の話題だらけだ。若い女の子であることがアイドルという名の商品にされていたり、お年頃の男子たちにとっては性に関する情報はあちこちに転がっている状態だ。でも世代によっても、置かれた状況によっても、健康状態や、年齢によってもそれぞれが抱える性にまつわる悩みや思いは違う。石田衣良の「sex」に収められた12編の短編に登場するのは年齢も世代も違う様々な人々だ。若い男女から始まって、中学生、死を間近にしている男、最後のデートをする男女、男性としての自信を失った初老の男性、子供を亡くした夫婦などなど。sexをテーマにしているだけに、おそらく多くの未読の方々は、世間でよく売られている官能小説のようにカギカッコの中に母音や記号が並べ立てられた台詞や、身体の部分をやたら肉感的に表現した言葉が並べられたものを想像することだろう。この本はまったく違う。それぞれの登場人物が執着する行為や嗜好は、丁寧に言葉を選んで綴られている。

12編の中には共感できるものもあれば、いわゆる官能小説的に生々しく感じられる部分もある。二つめのエピソード「文字に溺れて」は、性描写がある小説を図書館で読みまくっている男子中学生が主人公だ。彼は同級生の女子にそれを見つかるが、彼女もそういう本を読むのが好きだと言う。かつて僕もツルゲーネフの「はつ恋」のキスシーンばかりを読み返し、村上春樹の「ノルウェイの森」のラブシーンをついついリピートしてしまったことがある(恥)。ちょっとレジに並べば生々しいものが手に入る今の時代に、こういう中学生ってイヤらしいかもしれないけど、ちょっと好感。また年齢を重ねた男性の悩みと再生を綴った「落葉焚」も素敵な作品。

する話ばかりではない。できない人々の物語もある。妻に近寄ることもできないセックスレス夫婦を描いた「絹婚式」も涙を誘う一篇。また性は何もかも忘れさせて人を虜にするものでもある。そんな一面を描いた「クレオパトラ」や「ダガ-ナイフ」も印象的。若い男女がもつれ合うものよりも、悲哀やドラマを感じさせる作品が好きだ。衝撃作「二階の夜」はダメじゃん!とハラハラしながらも、悶々として寝床にもどる主人公を思うと何故か落語のオチのようなおかしさを感じてしまう。

そして最後の「純花」には涙した。事故で子供を亡くした夫婦の物語。不幸な出来事で子供を亡くした夫婦が、(世間が思うより)意外に早く次の子供を授かることがある。そうした話を聞いて、「どうしてその気になれるんだろう」と思う人は少なからずいると思う。僕も実際そう口にする人たちを見てきた。「純花」にはその答えがある。骨壺を枕元に置いて抱き合う夫婦に、涙を流さずにはいられなかった。

「好きな人とたくさん」は、作者が自ら考えたスローガン。このコピーがなかったら僕はこの本を手にしていなかったろう。読み終えて、抱き合うのに理由なんていらないかもしれないけど、抱き合うのに意味を考えてみてもいいんじゃないのかな・・・そう思えた。最後に、通勤中の読書にはおすすめしません!(笑)。

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石田 衣良

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