■「サラフィナ!/Sarafina! The Sound Of Freedom」(1992年イギリス=ドイツ=南アフリカ)
監督=ダレル・ジェームス・ルート
主演=ウーピー・ゴールドバーグ レレティ・クマロ ミリアム・マケバ
アパルトヘイト問題を扱ったブロードウェイ・ミュージカルの映画化作品。ヨハネスブルクのソウェト居住区に実際にカメラが入り撮影された。ミュージカルは日本でも公演され、好評を博したと聞く。この映画版、南アフリカ現地の空気と差別の実態が盛り込まれた為、アパルトヘイト政策を批判するエネルギーは観ている側にもひしひしと伝わってくる。でも厳しい現実が盛り込まれて、そこを伝えんと力がこもるだけに、ヒロインの成長という人物描写には今ひとつ引き込まれない。でもそれは現実が僕らの想像を超える厳しさであるからだろう。この映画にかかわったスタッフの思いがそうさせたのだ。きっとミュージカルでみたら、ヒロインの成長物語としてもっと素直に感動できたと思う。躍動的なダンスシーンも、重い現実を思うとどうも純粋に楽しめなかった。
白人家庭のメイドとして働く母親の元へ行き、家族を守るために働く母親こそが英雄だとヒロインが語る場面はなかなか感動的だ。またウーピー・ゴールドバーグ扮する先生、歴史の授業での力のこもった言葉は心に残る。朝のお祈りを先生のリードでするミュージカルシーンも前半で忘れなれない場面のひとつだけど、周りで見守る群衆が手拍子ひとつしないのはちょっと残念な気もする。エンドクレジットで流れるのは、ジェームズ・イングラムの One More Time。
(2004年筆)