■Sunset Kiss/Pao
関連作品=「リトル・ロマンス/Little Romance」(1979年・米)
監督=ジョージ・ロイ・ヒル
主演=テロニウス・ベルナール ダイアン・レイン ローレンス・オリビエ
70年代末期から80年代初めを少しでも知る方ならご存じと思う。当時、本編に全く関係のないイメージソングなる曲が、映画宣伝やエンドロールに付けられることがよくあった。最近でも、日本版だけ「007/ワールド・イズ・ノットイナフ」のエンドロールに何故かLUNA SEAが流れたり、韓国映画「TSUNAMI」ではAKB48が流れたりもした。また80年代には、ジャッキー・チェン主演作では日本独自に主題歌がつけられていたりもする。あれもその類だけど、当時のイメージソングたちは今とは違う。本編で流れないのだ。映画予告編に使われたイメージソングで、最も有名なものが「ナイル殺人事件」の Mystery Nile だろう。♪みーすてりー、なぁ~いる というそのフレーズはニーノ・ロータのスコア以上に有名で、何を間違ったか映画音楽全集みたいな企画ものレコードにも入っている程だ(無論日本だけだが)。このように強烈なインパクトで本編の音楽を食ってしまったものも多いのだ。
・・・前置きが長くなったが、われらがダイアン・レイン主演作「リトル・ロマンス」の宣伝にも、そうしたイメージソングが使われた。モデルとしても活躍したサビーネ金子を中心とした日本のグループ、パオが歌う Sunset Kiss なる曲である。哀愁漂うメロディは当時の僕らに強く印象づけられたものだった。本編はジョルジュ・ドリュリューのスコアとビバルディなどクラシックが使われていて、これも素晴らしい(アカデミー音楽賞受賞)。しかし、日本ではCFで大量オンエアされていたから、Sunset Kissの方が焼き付いている人、きっと多いと思うのだ。
ベネチアの”ためいき橋”の下で夕闇の中キスをした恋人は永遠に結ばれる・・・というデマカセ(注↓)を信じた映画少年テロニウスと高IQ少女ダイアンが、ベネチアへ恋の逃避行。今にして思うとなんとも初々しい初恋映画。映画デビューだったダイアン・レインの可憐さにとにかく夢中になったもんです。監督はジョ-ジ・ロイ・ヒル。映画少年テロニウスが映画館で「明日に向かって撃て!」や「スティング」を観る場面も出てくる。「スティング」を観た後、映画館を出て彼は「ビンゴ!」と叫ぶ。いやー映画ファンとしてはものすごく共感できる場面なんだよね。僕も「リトル・ロマンス」を観てしばらくは、友達との間で「ビンゴ!」が流行した。
その後ダイアンは「リトル・レター」(ひどい邦題)なる難病アイドル映画に出演した。「リトル」2作で美少女アイドルとしてしっかり僕らに記憶された。80年代になって「アウトサイダー」や「コットンクラブ」などフランシス・F・コッポラ監督作に出演し評価を高めた。僕は80年代のダイアン主演作では「ストリート・オブ・ファイヤー」が大のお気に入りだったなぁ。「愛は危険な香り」や「ビッグ・タウン」でみせた突然のヌードには(ファンとしては)驚いたものだ。何をさておいても、そんなダイアンが今も第一線で活躍しているのは実に嬉しい。2000年代に入ってからは「運命の女」でオスカーにノミネートされたし、出演作も次々と公開されているし。これからの活躍も楽しみ。
※注・本当の”ためいき橋”は、裁判所と牢獄を結ぶ渡り廊下のようなもの。判決を受けて囚人となる者が、最後に世間を見ることができる場所であることからそう呼ばれるのである。
A little romance - movie trailer