■「至福のとき/幸福時光(Happy Times)」(2002年・中国)
監督=チャン・イーモウ
出演=チャオ・ベンシャン ドン・ジエ
思えば銀幕を通して観る中国は時代的に少し前のものか、さらに時代がかったものかが多い。僕が多くを観ていないせいもあるだろうが、「フル・モンティ」みたいに操業停止の工場や失業者が出てきたり、ハーゲンダッツが売られている中国を映画で観るのは初めてだ。テレビのドキュメンタリーなんかでは上海の繁栄ぶりなんかはよく放送されているけど、ここで描かれているような中国はお目にかかったことがなかった。
まぁそれはさておき、これは盲目の少女との出会いによって人間性を回復する中年男の物語である。ある女性と結婚せんがためにその少女の就職を引き受けた男。彼は自分をよくみせるために、自分は旅館の経営者だと嘘をつき続ける。だが物語の後半、盲目の少女を元気づけるためにつき続けた嘘はいつしか親子の関係にも似た愛情に変わっていく。「あんたは本当の事を言ったことがない」とののしられた後、男は少女に読んで聞かせる為に”彼女の父親から”とする手紙を書く。本当は父親からの手紙には娘のことなど触れていないのに。それは嘘が真の愛情となった瞬間だった。が、それは彼女の耳に届かない・・・その切なさはグッとくるところだ。でもラストはちょっとなぁ、感動はさせるけど「この先どうなるの?」という心配ばかりが心に残って・・・僕にとって至福の2時間とはちと言い難かった。でもドン・ジエの笑顔には救われる。
(2003年筆)
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