夏や秋には夜の訪問者が多いわが家に、冬のさなかにやってきたのは…。1cmもないような小さな昆虫だった。カマドウマかバッタの子どもだろうかと何気なくカメラで撮ってみたものの、正体不明だった。まもなくそれは、「クモガタガガンポ」(ガガンポ科)とわかった。北海道では普通に見られて別名「ニッポンユキガガンポ」ともいう。画像は排卵官があるのでメスのようだ。赤ちゃんのようにちっちゃい顔や産毛のある体もかわいい。巨大な蚊の仲間とはとても思えない。
足が長いところはガガンポだけど、翅が退化していて飛べない。北海道では雪の上を歩くガガンポをよく見かけるという。その歩くさまとか毛深いところから「クモガタ」という冠が付いたのかもしれない。しかし、のっそり歩いていたらほかの昆虫の餌食になってしまう。氷河期の生き残りというくらいだから、生き残り戦略は長けているはずだ。それはやはり冬を味方にすることで外敵から身を守るという生き方を選択したようだ。だから寒さにも強い。背中に「平均棍」がちらりと見える。
昆虫の翅は4枚が標準だが、ハエに近いクモガタガガンポは翅が退化したものの残りの2枚を「平均棍(コン)」という機能を進化させて体のバランスをとっているようだ。。2枚羽のハエは、急発進して曲がったり止まったりのスピードをこの「平均棍」で機能させているが、飛ばないでスピードもめざさないクモガタガガンポには平均棍は必要なのだろうか。
なにしろ、ガガンポの研究者が少なくてクモガタガガンポの種類や生活史は謎だらけだそうだ。図鑑にも載っていないのは致し方ないかー。(上の画像は「岐阜大理科教材データベース」から)