東京では久しぶりの大雪だが、オラたち界隈は思ったより多い雨の日となった。予定していた農作業ができないので、前から気になっていた「髑髏城の七人」(劇団「新感線」)の舞台DVDを観る。時代は秀吉が天下統一を狙っているころ、関東ではその隙間から権力をめざす髑髏党の蛮行があり民衆は命がけで暮らしていた。その理不尽を変えるべく立ち上がった戦士らの物語という設定だ。前半は「劇団新感線」らしい漫画チックな内容が気になっていたが、後半からは見ごたえあるシーンに引き込まれていく。
1990年に初演して以来、舞台は勿論若者を中心に人気が広がり、テレビ・映画・小説などにも進出していく。中島かずき作、いのうえひでのり演出。いわゆる現代版の「いのうえ歌舞伎」の登場だ。見どころは、殺陣のキレのよさ、ダンスのような華やかさ、が目立つ。とくに、早乙女太一(蘭兵衛)と森山未来(天魔王・党首)との殺陣、主演の小栗旬(捨之介)と森山未来との殺陣の迫力は圧巻だ。また、ミュージカルのような群舞・集団の仕草などの見事さは、困難でハードな練習を共有してきた仲間意識の形成が感じられた。
(画像は劇団新感線から)
後半からどんでん返しがあり、高齢者にはついていけない複雑な展開になってしまうが、単純な物語にキャストの苦悩を強いるところの煩悶も見どころかもしれない。主演の小栗旬が「みんなに支えられてできた」舞台だったと言い切ったが、そのふるまいはそのまま彼の謙虚さ・包容力そのものが演技に醸し出されていた。また、周りから出演者の屋台骨だったと言われた小池栄子(極楽大夫)は、その風格・存在感は確かにその通りだった。ふだんは無口ではにかみ屋の早乙女太一の殺陣は出演者のみんなが認める鮮やかさだった。
テンポの速さ・ロック調の音楽・照明の多用・アップテンポなダンス・ギャグなどは現行の歌舞伎を越えるものがあるが、それが若者の心をつかむ要因でもある。衣装の派手さは歌舞伎と似ている。
天魔王による血をドバっと流すような残酷な殺戮シーンもあったが、それは彼が信長親衛隊だったこともある。が、信長のジェノサイドを見てきた捨之介や蘭兵衛らはむやみに敵を殺戮しないところに救いがある。68回の公演をやってきただけあって、軽薄そうだがみんなの心をつないでいく兵庫役の勝地涼のパワーや熱量は、舞台上だけではなくまわりの尊敬と感動と元気とを与えていたのも特筆すべきことだった。きっと、生の舞台を見ていたらその熱量を作品全体から感じるに違いない。