会友のM氏が野うさぎの子を捕まえた事を聞いていたから、野うさぎの生息は承知していたが、痕跡を確認したのは初めてである。
すっかり乾燥していたし、表面も風化していたので新しくはないけれど見覚えのある兎の糞だった。
少年時代、三月も近づくと晴れの日が多くなり、朝の冷え込みで雪の表面が凍結する様になる。こうなると雪の平原を何処までも歩いていける。
畑と藪の入り混じった広大な原に出向くと、林や藪の中に多く見られたものだ。時折は姿を見かけ追いかけた事もあったが、捕まるほどやわな相手ではない。原に出かけた理由は「熟し柿」を食べんがためである。放置された渋柿はトロトロのおいしいデザートだった。
糞とデザートを結び付けてしまう感覚もどうかと思うけれど、実態は「一本道」なのだからよしとしよう。