落葉盛んな林を通して何やら桃色の色彩が見えた。通常は目にしない色彩なので拠点に上ったのだが色を魅せていたのはタラノキだった。周辺のタラノキは数多くあるのにこの一本だけが特別の装いをしている。タラノキは保全活動に入った当時、山中に残っていた株を移植したのだが、その末裔と言うべきか地下茎を伸ばして新たに発生した子か孫の世代に相当する1本である。
山採用にと移植した樹種では無くて花粉と種子が生物の食料となるために用意したのだが、こういう考えは理解してもらえない。新芽が萌えれば期せずして切り取られ背が高くなれば途中から鋸を入れられ採集されてしまう時期がしばらく続いた。それでも人知られずこういう事を行う輩は恐らく死に絶えて当時よりもタラの芽の生き残り率は良くなってきた。それでも「春の山菜祭り」では会友によっててんぷらの材料にされる運命はそのままなのだ。
孤爺的にはスーパーでトレイに10個ばかり並んで数百円の物を調達すれば良いではないかと思うけれど、そこまでガミガミ言うのも「何ともなあ!」なのである。そんな環境であるがゆえに開花して種子を付けるまでには幾多の困難があるのだがこの樹はそれを乗り越え開花に到ったはずだけれど既に黒い種子は見当たらなかった。まあ、サンゴ色の花火だと思い眺めれば紅葉とは異なる風情があるが「およげたいやきくん」を口ずさんでしまった。しかし風情的には小百合ちゃんの「寒い朝」がマッチする。