学年だよりで引用した、芦田宏直『努力する人間になってはいけない』(ロゼッタストーン)は、定価が2800円。
家族には絶対あかせないくらい本やCD代をつかっている自分でも、ちょっとためらう値段だった。
三分の二くらい読んで、折ったり線をひいたりした箇所の多さや、一節からわいてきた発想の量を考えると、たぶん近年まれにみるCPの高い本だと思う。
「学年だより」ネタにあと10回くらい使ってしまうかもしれない。
「人生に〈師匠〉がいない人、必読です」と津田大介氏が帯に書いてるが、たしかに、この本のどこを開いても、その人のその日の状態に応じて何らかの啓示を与えてくれると思う。
「学校と仕事と社会の新人論」と副題が付されているが、とくに教育関係者は読んで損はない、といおうか2800円まじ安くね? と同じ感想をもっていただけると思う。どうですか、きくち先生。
~ みなさん、できるだけ規模の大きな企業への就職を目指しなさい。それは中小企業は良くないという意味ではなくて、まずは大きな企業で学ぶべきことを学びなさいという意味です。
… 大きな企業は、人材評価を複数の系列から汲み上げるノウハウを有しています。直属の上司と折り合いが悪くても必ず直属の上司共々評価の対象にする仕組みを有しています。したがって、人間関係で失敗する可能性が少ない … ~
芦田氏が指導する専門学校の生徒さんに、就活出陣の言葉として述べている言葉の一節だ。
大企業、有名どころ、誰もが希望するところを狙うな、って言いそうじゃないですか。
まして、専門学校生あいてだから、やみくもに一流企業を目指しても意味ない、自分にあったところがあるとか、今トップにいる企業は10年後には落ち目の可能性高い、とか。
大きなところをまず目指せ、ここで一発逆転を目指せという言葉、そしていくつか語られるその理由を読み、なるほどそうに違いない、やるだけやってみよう、「自分」に逃げ込んだりしないようにしようと、なぜか力がわいてきた。
「やりたいこととか、自分にあったところとか、あまえたこと言ってんじゃねえよ、いっこでも偏差値高い大学目指せばいいだけなんだよ!」という自分の進路指導を、自信をもって継続していこうと思えた。
その続きで収められている「就職活動への檄 20箇条」は、旺文社赤尾先生の「受験十箇条」にまさるともおとらない完成度の高さだ。
~ そもそも就職は「私の夢」を実現することではない。まずは自分を会社に買ってもらうわけだから、〈夢〉を語る前に、自分に何が「できる」のかをはっきりさせねばならない。(檄四) ~
~ ノウハウ本で就職できるような会社はすぐつぶれる会社。何も勉強してないバカな自分を入社させてくれる会社は、それ自体がバカな会社だ。(檄六) ~
就職活動の経験はないに等しいが、就活って大変なんだね。娘を見ててもそう思う。
二十数年前、「何も勉強してないバカな自分」を入社させてくれた本校の懐に広さに、あらためて感謝の思いがわいてきた。
だから、いただいている給料の何%かを本やCDや演奏会に惜しみなく費やしてもなんの問題もないかもしれない。