娘が嫁いだ先の実家には、伝統的なお神楽集団がある。各地の公演に招かれるほどの実力を誇っている。
孫三兄弟も、夏休みの納涼祭や秋の大祭には、毎年実家におよばれ。
散々大騒ぎした挙句、優雅なお神楽見物に夜も更けるのを忘れて楽しみながら成長してきた。
そんな環境の中、お神楽に一番興味を持ったのは、兄ちゃんでもなく、好奇心の人一倍旺盛な二男でもない。まだ2歳だった三男坊の悠雅君が見事にお神楽にはまった。
母親が、地元集団のお神楽ビデオを買って、家で繰り返し見せたのも、大きくはまるきっかけとなった。
ビデオを見ながら、お囃子の太鼓や笛に合わせて舞うと言ったら舞う。座敷狭しと舞っていた。
3歳になったころから太鼓が欲しいと言い始めた。「太鼓と言われてもね~」てな調子で、大きな孟宗竹を叩かせることでその場をしのぎ、ごまかしてきた。
そのごまかしもとうとう効かなくなった。「じいちゃん、太鼓が欲しい。買ってよ・・・」と迫る。
ついに重い腰を上げて、ここから50kmばかり走った山あいにある「和太鼓製作所」を訪ねてみた。
なんと、直径9寸という決して大きくないものでも、片手をはるかに超えるン万円。それはそれは、立派なケヤキの丸太をくりぬいた本格仕上げの逸品。音もいい、金属音のような響きがあるのがよくわかる。
そうはいってもねー、いつ飽きるかわからない子供のおもちゃ。いくらなんでも手がない。手の代わりに足が出る。ついでにあごも冷や汗も出る。途中にある道の駅で昼飯食って早々に引き上げる、手ぶらのドライブとなった。
「でもな~、あれほど熱心に欲しがってるのに・・・」「買ってやったらどんな顔して喜ぶのだろう・・・」
改めてインターネットで調査開始。あるはあるは。それこそピンからキリまで。値段も色々。
ない袖は振らぬ主義のジジとババ。太鼓の大きさも値段もお手頃を厳選。ついに清水の舞台から飛び降りた。
幼稚園から帰るや、段ボールの箱を開ける手間を惜しむほどに満面の笑みで手伝ってくれる。
「この笑顔を見たくて・・・」。 いざ太鼓が出てきて、真新しいバチを手にするとちょっと照れとはにかみが顔に出る。
最初のひとバチ、ドーン!あとはもう叩く叩く。両手首を器用にしならせて、お神楽よろしく横打ちも縦打ちも。
徐々に慣れてくると「ヤマタのおろちが出てくるところ」ドドドドドンドン。「次は大江山」「こんどは紅葉狩り」と、生意気にお神楽演目の代表格を叩き分けて聞かせる。
こちらの耳にはどれも同じに聞こえるが、本人至って大真面目。「ここが違うんよ・・・」などと講釈を。
そして「この太鼓は何の太鼓?」と尋ねる。「お神楽の太鼓よ」と説明すると、神社やお祭りの太鼓ではないことに安心した様子。何故か、自分が叩くのはお神楽用の太鼓でなければいけないこだわりがあるような。
バチを両手で合わせ高く上げ、うやうやしく低頭してからでないと叩き始めることはない。
見よう見まねの太鼓師デビュー。さていつまで続けてくれるやら。新たな応援活動の始まり始まり!!
御見事なバチさばきですねぇ。
力強い音が聞こえてきそうでーす。
演目に従っての叩き分け、いや、楽しみです。
じいちゃんばあちゃんも嬉しい応援団長期戦ですよ~。
大喜びで連日バチを振っています。
ご近所迷惑かえりみず・・・。しばらくご勘弁をお願いしましょう。
自身の頭の中では、演目によって叩き方を変えているのでしょうが・・・。果たして?
いろんな理屈を述べながら叩いて見せてくれます。
本気で叩き始めると、家じゅうに響きますから、お隣さんから苦情が来なければいいが、と。
応援団長期戦、覚悟が要りそうです。