畑に吹く風

 春の雪消えから、初雪が降るまで夫婦二人で自然豊かな山の畑へと通います。

退職しました

2011-12-15 05:56:44 | 暮らし

 五年半ほど続けいてたパートの仕事を昨日限りで退職しました。
これは自宅にお送りしたオジーちゃんから、そっと手に握らせられたキャラメル。

 無口で何時もニコニコとされていた、オジーちゃんからの餞別です。
最後に固く手を握り「身体を大切にね、また会いましょう」と別れを告げました。
他にも靴下とか、下着のシャツとか色々な物をそっと手渡されました。


 スベルべママが最後の午後の出勤時に、買い物を頼むかもしれないから財布を忘れずに。と、言われた。
パートの終了時刻に買い物の内容を携帯で訪ねると「退職祝いにトーちゃんの食べたいものを買って来て」と言う。
 スーパーに立ち寄り、美味しそうな「天然ブリ」と「天然鯛」の刺身を買う。

 ついでに398円也のブリのアラを買うところは何時ものいじましいスベルべトーちゃん。
これで美味しい「ブリ大根」を作るのです。
夕食時には妻からねぎらいの言葉をもらいました。

 さて嬉しい事に、「切ねーのー(切ないねー)」と言う言葉を何人ものオバーちゃんから頂きました。
「オラーハレーがネーテー(私は張り合いが無いねー)」と言う言葉も。

 五年前は退職後の新たに始めようとした仕事の計画が挫折。
結構重度の「鬱状態」いえほぼ鬱病の中で始めた仕事でした。
お年寄りの皆さんは、新人運転手のスベルべを温かく迎えて下さいました。

 お年寄りを励ますどころか、反対に私が元気を授けられたのです。
送迎の都度、皆さんが集うお部屋に上がり込み、お茶を頂きながら会話を楽しみました。
私が畑仕事の話をすることも、畑仕事経験の多い皆さんには受けたようです。

 折角のお付き合いだから、こうして一緒に会話をするのも仕事かな。
なんて、思っていたのでしたが、二年ほど経って聞かされた言葉に驚いたものでした。
「今までの運転手さんで、こうして部屋に上がって頂いた人は初めてだった」と。

 私は一介のパートの運転手とは言え、この介護予防と言う分野の仕事は、
温かな会話を交わすことも仕事の内と信じて疑わなかったのでしたから、今となっては可笑しい話です。

 一週間に三回の施設利用の制限が設けられているから、曜日毎に参加のメンバーは変わります。
今週は、私の後任(同級生)の訓練を兼ね、二人で乗務していました。
そして、顔を合わせるのが最後になるお年寄りとは全てしっかりと手を握ってお別れをしたのです。

 昨日、最後の仕事はさすがに辛いものが有りました。
裏では、利用者全員で負担し餞別を。と言う話も立ち上っていたようです。
さすがにこれは「前例がない」と言うことで、諭されて中止になり、その話題だけが、
そっと私に耳打ちされていたのでした。

 こんなに長くお付き合いをしていると、家庭の事、嫁と姑の関係など、
聞かされなくても自然に分かってくるものです。
出来るだけ遅く帰宅したいと言う人は、お送りする順番を考えてもっとも遅くしたりもしていました。

 「さようなら、お達者で、風邪を引かないようにね」
「はい、あんたも身体を壊さないようにね、あんたは働き過ぎるから心配なの」
そうです、いつもぎりぎりに働くスベルべは随分皆さんにも心配されてものでした。

 温かな、そして筋張った小さな手を握って別れを告げ、
運転席に戻ると、涙があふれて困ったものでした。
さようなら、愛すべきお年寄り、いや、友人たちよ。
私は大丈夫です。皆さんも何時までも元気で暮らして下さい。
コメント (8)
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