「こごめ」
待ちわびた春となり、まず一番は「蕗の薹」、次いで「こごめ」が顔を出す。
和名は「クサソテツ」と言う。処によっては「こごみ」とも呼ぶようだ。
昔からの、曲がりくねった暴れ川で、春秋の出水時期には田を荒らし、
農民を泣かせたが代償に大鯰、大鰻、大鯉その他色々な魚が生きるある意味では素晴らしい自然の川が近くにあった。
その川が、流行の河川改修とやらで、水量の割にやたら川幅のある、大きな土提を持った立派な川となり、
三十年余りの月日が経った。
歳月は何時の間にか別の自然を育て、提内地とも呼ぶべき川端には、「こごめ」の群生が見られるようになった。
なに、家から歩いて何分もかからない所である。
他人に自慢するのに、鍋を火にかけてから採りに行くと話す。
茹でてシンプルに醤油、マヨネーズ、又胡麻和え、
淡白でそれでいて野の香りのする「こごめは」いくらでもお腹に入ってしまう。
長くて辛い冬を越え緑の命を貪り食らうのだ。
近くの魚野川の河原にも群生し、多くの人たちを喜ばせていた。
時には関東地域のナンバーを付けた自動車さえみかけるようになっていた。
しかし、三年前の「新潟福島豪雨」により、「こごめ」が群生していた河原は跡かたも無く消え去ってしまった。
また何時の日か「こごめ」が発生する時が来るのであろうか。