平茸
何年か前に小千谷の知人から「平茸」を頂いて、その美味しさに驚いた。
栽培物は「シメジ」の表示でも売られる、濃いグレーの美味しい茸なのだ。
しかし、大きくて、肉厚で美味しいその茸が、近くに出るとは思いもしなかった。
その年は暖冬で、十二月になっても中々雪は積もらない。時間を持て余し気味になり、
椎茸の栽培を思い付いた。早速チェンソーを持ち出し、山の畑の脇にある我が家の雑木林に入った。
ふと気が付くと、立ち木に平茸が出ているではないか。半信半疑で採って帰り、
知人に聞いたが、間違い無さそう。
そこで、自分なりに出る場所を推理して、休日に山に入った。目的とした、
中越地震で崩れ落ちた木には全く無かった。しかし、諦め気味に尾根に取り着いて昇ると、
推理に間違いが無かった事に気付く。目を疑うような光景だ。平茸が重なり合って出ていたのだ。
根元から二本に分かれた大きな楢にも出ていた。その間に身体をこじ入れ、よじ登って採った。
何本かの楢の木で平茸を採ると、スーパーのレジ袋は二つ満杯だ。中には手の平の倍、
子供の野球グローブほどもある大きい物も有った。
その年は、それからリュックサックを背負い、
初雪が降ってからさえ、尾根や山中をさまよい「平茸」を採り続けた。
そんな良い思いも、やがて人の知るところとなり、
そして、立ち木が古くなってほぼとして終りになってしまった。