「修禅寺物語」は面打ちの父親が幾ら打っても死相が出る面に 悩みますが 後日その相手が暗殺されたことを聞きその運命を 己の腕が悟っていたことに気付く 娘とその死ぬべき男との恋と
そんなお話だったように記憶しています
他にも記者時代に「番長皿屋敷」を書き上げたというからその才能に 舌を巻きます
そんな才気溢れる綺堂先生が 下巻に選んだのは
まずはアーサー・コナン・ドイル作「北極星号の船長」 きりりとした容姿で男らしい船長を悩ませたいたものは―船に同乗した医学生が船長の死までの怪異を記し
医学生の父がさらに付記する構成です
幻想文学の雄 ホフマン作「廃宅」 愛する男が妹の夫となり誇り高い娘は 妹夫婦を呪った その経緯から始まる不思議
アナトール・フランス著「聖餐祭」 死者の会う時間 若くして死んだ婚約者に出会った老女に訪れた死は 優しかったのだろうか
詩人としても有名なキップリング作「幻の人力車」 不倫の恋の挙句 男を思い切れず人妻は死んだ
その未練は男にまといつき 遂に死へと導く
怪奇小説は得意なクラウフォード作「上床(アッパーバース)」 船室の窓は勝手に開閉し 何かが訪れる その船室に眠る者は死ぬと言う
アンドレーフ作「ラザルス」 1度埋葬された男が戻ってきた やがて人々は彼を怖れ始める
フランスの文豪モーパッサン作「幽霊」 再会した友人から頼まれ 訪れた部屋に現れた亡霊は 髪を梳いてほしい―と願った
男は願いをかなえるが
次はイギリスの作家マクドナルド作「鏡中の美女」 青年は鏡の中に現れる美人に恋をし 呪いから解き放つ為に 己が命を捨てた・・・
「女か虎か」で有名なストックトン作「幽霊の移転」 これは波津彬子先生に漫画化をお願いしたいような ユーモア溢れる佳品です
最後は「牡丹灯記」作家名が携帯からは打てない漢字なのでした く宗吉(そうきつ)作 どうやら中国は明の時代の人らしいですが その生年没年は明らかでない―とのこと
日本では「牡丹灯籠」と換骨奪胎された物語になっています
懐かしいような幽霊話 スプラッタはありませんが そんなに恐くないところも 夜の読書に安心してオススメできます 長いばかりが怪談 恐怖小説ではありませぬ 読了してから 更にその先を読者に想像させるものこそ 本当の怪談なのだそうです
最後にひとひねりのショートショートにも一脈通じるものがありますね
あら 後ろから肩を叩く人は誰ですか? 振り向き仰ぎ見ても安心な・・・存在でしょうか 聞こえるはずない音が 何処かから近付いてはいませんか
大丈夫・・・ですか・・・