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夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「しんしんと・・・―聡―4」

2007-02-28 23:48:06 | 自作の小説

手筈通り カシム一行は帰る(あくまでフリだ)

仁慶・美智留夫婦は自分達の寝室 栄三郎と珠洲香さんも同じ棟

俺は酔い潰れて一人寝

てなふうに見せる

そして午前二時

きっちり罠にかかった襲撃者を待っていたのは 早智子さんのフリした軍人

早智子さんと史織さんは 俺の隣りの部屋で グレートデンに守られていた

どうカタをつけたものか 後日カシムは 言い逃れなどできない証拠と人間押さえ きっちり脅し付けた

それだけ言って笑った

何がどうなったか細かいことは分からない

ただ 多分もう安全なのだろうということ

こんなにあっけないほど

しかし裏では巨大狸 狐の駆け引きが 百万回はらわたがねじれるほど 行われたのだろう

「原爆をうちこんでさしあげる」

非公式の話だが―とカシムが愉快そうに笑う そうカシムの父が お食事会で陰険笑顔で言ったそうな

あの夜の襲撃チームは全員 アジトまでもパーフェクトに押さえられた

「だから あとは あなただ」 そうカシムが笑う

「なん?」

「絶対安心てワケじゃない 史織ちゃんと早智子さん 僕が国へ連れていってもいいのかな」

それは ただでさえ少ないチャンスが無くなる―ゼロになるということか

「俺は ただの肉屋なんだよ」

「好きか嫌いか 簡単な問題だと思うな」 カシムは クスクス笑うのだ

「僕が頑張ってイイ男になっても それで好きな子に 同じよに思ってはもらえない でも 何らかの行動起こさなきゃ 相手に気持ちも通じない

ね あなた ほんと手がかかるオッサンだね」

「まったく」力なく笑うしかない かなわない11才だ カシムは

「励ましの言葉感謝 玉砕の覚悟で行ってまいります」

そう言うと「骨は蹴飛ばしてやるからね」と全く 憎たらしい

しかし今まで女性を口説いたことなく 女心に響くシチュエーションなんて考えつかない どうしよう?!

デートに誘うにも 史織ちゃんを一人にするわけには いかないんだ

保育園へ史織ちゃんが行っている時間なら 早智子さんは一人だ

朝なら早智子さんは史織ちゃんを保育園へ送っていく

唐突でもストレートに ぶつかってみよう

早速 次の日の朝 保育園近くの道で 早智子さんを待った

車が停まる 史織ちゃんを送って 早智子さんが降りてくる

不安そうに辺りを見回しながら

いつも あんな怯えた目を あの人はしていたのか

一人なんだ あの人は 俺は あの人を守れるか せめて怯えず歩けるように してやりたい

一歩 彼女に近付いた 史織ちゃんを見送っていた早智子さんが俺に気付く

少し表情が明るくなった気がする

その事に勇気づけられ 俺は言った 「お茶飲みに行きませんか?」