夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

あさのあつこ著「鬼を待つ」 (光文社文庫)

2021-03-17 10:14:52 | 本と雑誌

 

昏い過去を持つ若侍は江戸の町で商人の娘おりんと出逢い 救われ遠野屋の清之介として生まれ変わる

だが過去は追いかけてきて おりんは死んだ

おりんの死により関わることとなった同心の木暮信次郎と木暮が使う岡っ引の伊佐治

悩ましくも深い三人の関わりが続くシリーズ

「弥勒の月」

「夜叉桜」

「木練柿」

「東雲の途」

「冬天の昴」

 

「闇に巣くう」

 

「花を呑む」

「雲の果」

 

そして「鬼を待つ」まで続き 少しずつ遠野屋清之介を取り巻く人々の顔ぶれも変化してまいりました

今回 あくどい方法で遠野屋を潰し その商いに取って代わろうとする大店の主人が出てまいりますが

思いのほか呆気なく殺されてしまいます

その殺され方が 少し前に死んだ大工の棟梁と殺され方と同じ

誰がどうして そういう殺し方をしたのか

喉を裂いておいて首に釘を打ち込む

 

清之介の死んだ妻おりんと生き写しの口がきけないというおよえ

清之介の生まれ故郷の・・・・・人々の生死

おりんの死に関わった男の死

混み合った物事を解く木暮の頭脳の明晰さと反比例するかのような言動 人柄

伊佐治の家の商売で出て来る料理も美味しそうで真似したくなります

闇 血の匂い 魅力ある人々 料理 季節変化

彼らはこれからどうなっていくのだろうと 読了後も想像せずにはいられません

 

とっかかり 起きる事件

これに遠野屋がどうかかわるのか 何処で木暮が遠野屋と遭遇するのか

木暮の毒舌すら癖になります

育ててくれた人間が死んで それで遠野屋に押しかけ奉公に来た 清之介に恋心持つおちや

妻は亡きおりん一人と決めている清之介

物語を表現する文章も深いです 香気あるというか

 

解説は竹山康彦氏

誠実さを感じさせる内容です

解説の最後ーいつの時代も、どんな困難に見舞われても、本は、物語は、人を勇気づけ奮い立たせてくれる。

私にとっては、あさのあつこという作家と「弥勒」シリーズがそんな作品なのだー

 

読んでいる間 その物語世界に誘われる

江戸 そこに生きる人々 そこの空気を嗅ぐような

起きる事件にも すっぽり取り込まれ 次はどうなる どうなるんだーと

そんな力が このシリーズにはあるのです