夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「恋女房」-7-

2017-05-21 20:39:26 | 自作の小説
おゆきが仙石屋の嫁 新吉の女房と得意顔で店の者に挨拶し 大きな態度で店の客にも振る舞うようになったがー
毎晩 新吉は商売が終わると店から居なくなり朝帰りを続けていた

夕方 こっそりと出掛けようとした新吉に番頭の寅七が声をかける
「今日もお出掛けになるんで・・・」

「ああ・・・済まないがよろしく頼む」
出て行こうとした新吉の袂を駆けてきたおゆきが掴んだ「いい加減にして下さいまし!」
おゆきは目を吊り上げ歯をぎりぎり音を鳴らして噛みしめている
中々物凄い形相だ 
「いったい いったい あたしの何が気に入らないんです」
店で働く者達も見ているのに全くかまわない
「今夜と言う今夜は離しゃしません しっかと嫁のあたしと向き合ってもらいます」



「それ・・・お蘭も言ったな」少し冷たく新吉が笑う

「あの人はみっともなかった あたし庭で聞きましたもの」
そう言うとお蘭の声色を真似して おゆきが続けた
「新吉さん 新吉さん あたしゃ太助さんよりお前さんに惚れていたのさ
一つ屋根の下で暮らせるなら いつか新吉さんに抱いてもらえる日もあるかと 
太助さんの嫁になったんだ
うまい具合に太助さんが死んで 漸く漸く新吉さんの女房になれた

なのに どうして抱いておくれでない
ほら触っておくれ
この乳房

新吉さんを想って こんなに熱い・・・・・
あたしを本当の女房にしておくれよ
あたしは もう お前恋しさに狂ってしまう

もう こんなに こんなに体が火照ってさー

ー聞いていて呆れたわ!新吉さんが座敷を出るのを追いかけて 追いすがってー
みっともない 厚かましい女
死んで当然よ」

店の者達は茫然としていた

そういうおゆきもお蘭と同じ事を新吉に言っているのだ
「お前さんが抱いてくれなきゃ あたしの立場ってもんが無いでしょう

どうしておみつは良くてあたしは駄目なの
あたしだってあたしだって子供くらい産めるわ
おみつと違ってちゃんと産んでみせる

このあたしの何処が おみつより劣っているって言うのよ
あたしの何処が不足なの」

番頭の寅七をはじめとして居合わせた店の者達の方が赤面するおゆきの興奮ぶりだった


「新吉!みっともないよ 何の騒ぎだい」
奥からお才も出てくる

「おっかさん・・・騒いでいるのはおゆきです」

「どういうことだい」
おゆきには優しい声でお才が言う



「毎夜毎夜 夜遊びされたんじゃ あたしの立場がありません
亭主としての務めを果たしてもらいます」
血走った目で 塗りたくった白粉は剥げて地黒な素肌が斑に覗きひどく醜い
言い募るうちに濃く塗った紅も唇の端に流れている


「お前 そんな事は自分達の部屋に行ってからすればいいじゃないか」
宥めるようにお才が言っても


「少しも部屋にこの人が寄り付きもしないから あたしはもう体がどうにかなりそうなのに!
他の女の所になぞ行かせやしない
抱いてくれたら あたしがわかる
あたしの良さがわかる」


さすがにお才も呆れる「そんなー色気違いみたいなことを」


「うるさいわね! あたしがこの家で我慢していたのは
いつか いつか新吉さんがあたしに気付いて あたしの男になってくれる
そう思っていたからよ」



そこで番頭の寅七が口をはさんだ
「それで旦那様 このお人を本気で仙石屋のおかみさんになさるんで」

新吉は子供の頃からよく知る一回り上の男を見た
「番頭さんなら どう思うね」

「もしもおゆきさんがここのおかみさんになるのならー
あたしはお暇をいただきます」


「この仙石屋は番頭さんで持っているんだ それは困るな」

おゆきを脇においたやりとりを新吉と寅七はしている
「いいえ」と寅七は言った
「傾きかけたこの店に活気を取り戻してくれたのは
あの女雛のように愛らしいおみつ様でした
新吉様に厳しくされ 店の者からさえ軽んじられていたおみつ様が・・・
どんな客にも優しく笑顔であたたかく相手して

新吉様の 旦那様の本当の心が見えるまで我慢なさった


おみつ様が蔵で見つかる少し前 おゆきさんは蔵の方から駆けてこられた
何でこんな時分に蔵にと奇妙に思ったんですよ」




「お・・・おかしな事をお言いでないよ」
おゆきの声が上ずる




「宝福堂の吉太郎さん 酒が呑めないあのお人が泥酔して川に落ちて溺れ死んだ
それと同じ死に方を太助兄さんがしたのは何故だ」
新吉の言葉に「ひっ」とおゆきは声を上げる

「まだある
おとっつあんは病(やまい)で死んだんじゃない
毒を盛られ続けていたんだ」


「だって邪魔だったんだもの
亀三はおみつを可愛がっていたから
目障りでしかたなかった」



「おゆき」漸くお才が怪訝な表情になる「まさか お前・・・」


「うるさい うるさい うるさい
嫁になんか 行きたくなかったのよ
あたしは新吉さんの女房になりたかったんだから!

それなのに お蘭が
あの馬鹿な女が新吉さんにいやらしく迫って
許せるわけないじゃない
新吉さんの秘密を教えるからって言ったら はしゃいで蔵についてきたから
突き落としてやったのよ
そりゃあ見事に首の骨が折れて
笑っちゃったわ
びっくりした顔のまま死んでいるの


そうして あのいじましいおみつ
新吉さんが相手にしないから安心してたのに
いつの間にかちゃっかり乳繰り合って
挙句に孕んでえづいているんだもの

あんな女に あんな女に新吉さんの子を産まれてたまるもんか!
新吉さんはあたしのモノよ!」


「おゆき お前という女は・・・」
お才も蒼ざめる


「あたしを番屋に突き出したら お才おばさんが この店を乗っ取りたくて あたしを動かしたって言ってやる」
もとから少し突き出た顎を更に突き出しておゆきは言い募る
少しでも目を大きく見せようと入れた目張りも今はしっちゃかめっちゃかだ


聡くも番屋に走った丁稚の長松の知らせで夕霧雷之進が姿を見せる

おゆきは奥に走り包丁をかざして戻ってきた
その包丁を新吉に向けて構える
「どうしてもあたしのモノにできないなら あんたを殺してあたしも死ぬ」



のんびりした口調で夕霧が新吉に言う
「こんな時に何だが・・・・・色男は辛いものだな新吉
どうする これと一緒に死んでやるか」


「あたしが心底惚れて命もやりたい相手は他にいる」


幾らおゆきが必死に暴れても同心相手では一たまりもない
じきに縄をかけられる
「ちくしょう ちくしょう」
それでもなお裾を乱して喚き続け凄い恰好になっている


「これだけの人間が生き証人だ 少しは神妙にするんだな」
夕霧が言葉をかけても静かにはならない

「あたしは終らない 終わってたまるもんか」

「恋女房」-6-

2017-05-21 15:08:24 | 自作の小説
亀三の喪が明けていないから仮にではあるがー仙石屋の新吉が三人目の女房を貰ったことは おみつの耳にも届いた

生きる望みを失い ただ痩せ細っていくおみつ
そんなおみつを同心の夕霧雷之進(ゆうぎり らいのしん)が見舞った
「少しは良くなったかと思ったがー」

お春に支えられてどうにか半身起こしたおみつを痛ましそうに夕霧は見る

「落ち着いたようなら 蔵での事を教えちゃくれめえかと思ったんだが」
夕霧の問いに思い悩むような表情をおみつは見せた

「二度三度しか会った事ない ましてや役人を信用しろなんて無理な話かもしれねえが・・・・・
加助がおみつさんを襲おうとした時に居合わせたのは偶然じゃねえ」


おみつの大きな瞳が 夕霧にひたと向けられる

「俺は同心の家にガキの頃に養子に入った
もとはと言えば町人なのさ
実家の兄が嫁を貰って三月(みつき)ばかりで死んだ
その死に妙なモノを感じてな・・・
ちょいとした絡みで仙石屋を気にしている」


おみつの顔色が変わったのを夕霧は認めた
「もう一つ 教えておこう
俺の元の名は進吉で 字は違うが仙石屋の新吉と同じ(しんきち)
小さい時分は寺子屋の悪ガキ仲間だった

悪いようにはしないよ
その胸にあることを打ち明けてくんな
それがおみつさんも新吉も助けることになる」

「助ける・・・」

「おみつさんが元気にならなきゃ新吉の辛抱が無駄になる
仔細は言えねえが 新吉は闘っているのよ」


おみつはお春の支えで立ち上がり よろめきながら文机の引き出しを抜き 奥の隠し棚から折り畳んだ紙を取り出した
「余程 捨ててしまおうかと思ったのですがー」
そう言いながら おみつは夕霧に手渡す

その紙には
ーお蘭の死に理由あり 知りたくば かの蔵の二階へ来いーとあった
わざと左手で書いたかぎこちない筆運びの文字


「いたずらかとは思いましたが 気になって」
おみつは蔵へ入ってしまった
階段を上がるうちに ばたんばたんと音がして窓が閉められ真っ暗になった

押し殺した不気味な笑い声が響き その声はこうも言った
「お前のような女は新吉には似合わない
この店に居続けるなど許さない
ましてや子供など・・・
お前は悪い女だ
悪い女には罰が必要」

階段の上から押されて おみつは落ちた



「それで おみつさんは自分を落とした相手が誰か気付いたのか」

ちょっとくどいような匂いのする匂い袋
その匂い袋を使っているのは仙石屋ではただ一人きり
「はい・・・」


その人間の名前をおみつから聞いて 「やはり・・・」と夕霧は言った


去り際 お春に言葉をかける「おみつさんは大事な生き証人だ お春さんも気をお付け」



夕霧雷之進は昔は宝福堂の進吉
学問好きを見込まれて十二の時に跡継ぎのいない夕霧の家に入った

小さかった進吉に修業で作る菓子をよくおやつにくれた優しい兄の吉太郎
その吉太郎が泥酔して川に落ちて死んだ

吉太郎は下戸だった
酒は飲めないはず


おみつを助けたことが縁で夕霧と再会した仙石屋の新吉も兄の太助とお蘭の死にひっかかるものを感じていた
今度はー

元の進吉と新吉と 幼馴染は手を組んだ

ー新吉 気持ちは分かるが おめえのやってる事は おみつさんには酷(こく)すぎるぜー
夕霧は弱ったおみつの姿が忘れられない


「旦那 昼間っから随分粋な場所(とこ)にお入りで」
すっと寄ってきたのは 懐中用心必要な女掏摸お咲


「あんまり寄るんじゃねえ 危なくっていけねえや」


「はん! お生憎 あたしが欲しいのは旦那の懐中より もっと奥の胸ン中でござんすよ」

お咲は破落戸(ごろつき)に絡まれているのを助けられて以来 夕霧に付きまとっている

「おお・・・怖」と怯えてみせてから 夕霧はお咲に言う
「ひとり酒も味気ねえしな 付き合わねえか」

「あいな」いそいそとお咲は夕霧について行く

入るは夕霧が手先に使う忠七の親の店の二階の座敷

「おお お咲坊」忠七の親父の七蔵は目を細める
お咲は七蔵のお気に入りだった
七蔵は気のいい別嬪は皆お気に入りなのだが


「ところで旦那 あれは香野屋の寮 気の毒なおみつさんが療養中とか」
早速運ばれてきた酢の物をつつきながらお咲が尋ねる
夕霧が頷いたのを見てからお咲は続けた
「全く仙石屋の新吉さんも女を見る目が無いったら
今度は出戻りおゆきを嫁にしたのですってね」

お咲の「出戻りおゆき」の言い方に毒があった

「おゆきを知っているのか」

「幼馴染が仙石屋で働いていたんですよ
綺麗で気立てのいい娘だったのに おゆきさんが難癖つけて追い出してね
最後にはーお前の顔が気に入らないーって言ったとか」

「ほう・・・」


「若くて可愛い娘は仙石屋では続かないって噂だそうですよ」

「顔が気に入らないーか」

「年増の厚化粧で誤魔化しちゃいるけど色も黒いし 素顔はたいしたことない
そんなでも自分が一番でないとおさまらないー性悪女っているもんですよ」
お咲の言葉は遠慮がない
腕組みをして頷いている夕霧を見て睨んだ
「何 笑ってるんです」

「おめえの明るさが好きだなと思ってさ」

「もう! 旦那の言葉には 真心ってもんがないんだから」
お咲は真っ赤になっている


「恋女房」-5-

2017-05-20 21:06:08 | 自作の小説
欲しいモノが手に入らないならー無理矢理にでも強引にでも奪う
何をしてもどんな形でも手に入れてみせる!
そのように考える人間がいるのだった

願いの前に邪魔な存在の人間は取り除くべく障害にすぎない
命を奪うことになんら罪悪感はない
一人二人と重ねていき殺人は日常茶飯事になってしまう
罪はその身に馴染み 心が痛むこともない
ゴミがあれば掃除をする
その者にとっては それだけのこと


亀三の葬儀もあり 新吉は中々ゆっくりとおみつについていてやれなかった
絶えず用事が 誰かが追いかけてくる
いよいよ仙石屋の主人としての挨拶回りもある

そんなこんなでしみじみおみつに新吉が言葉をかけることができたのは初七日も過ぎてからの事だった

おみつのお腹に自分の子供ができていてー
それがもう居ないということも心の中で消化しきれず
どうおみつに言葉をかけてやればいいのかも分からない
何から尋ねれば良いものか

どうして蔵にー
蔵で何があったのか

新吉はお春から聞かされた話も気になっている

店のことも大事だが・・・
新吉にとっていっとう大切なのは 大事なのはおみつだった
ーこの己が手で守りきれなかったならば ならば!

新吉がおみつの休む座敷へ向かうと お才の声が聞こえてきた
「店の主人が危篤だっていうのに何を暢気に蔵なんぞへ行ったものか
まともに子供も産めないなんて どういう了見の嫁だろうね」

店のあれこれも忙しい時に お才はこんなところで油を売っている
一体この女は誰かの役に立とうなどと考えた事があるのだろうか
亀三はこの女の何を見て後妻に選んだものなのか
後妻になった時の年齢も年齢だが お才だって自分の子供を産んではいない


「おっかさん おみつの見舞いは嬉しいが おっかさんもお疲れでしょう
どうかゆっくりなさって下さいまし」

「ああ・・・ほんに 病人の見舞いは辛気臭くていけないよ
気骨が折れるったら
按摩でも呼んでもらおうかね」

いそいそとお才は立ち上がる

「・・・だそうだ お春 悪いが按摩を呼んできておくれ」

お才とお春が部屋を出ていくと やっと新吉とおみつは二人きり

「すみません・・・」とおみつが言う
「ややがもしやできたのではと思って・・・一度香野屋の母に相談して・・・と思い始めたところだったんです」

おみつには初めてのこと 子供を産んだことのないお才は頼りにならず 自分の母親を頼ろうと思うのはごく自然のことだった
しかし亀三の具合もよくなくて おみつはのんきに実家へ行くとは言い出せなかったのだ

「さて いっそお前がお才おっかさんのようなタチであれば・・・詮無い話だが」
新吉の言葉におみつがぎょっとした顔になる

「おみつは おみつだから」新吉は笑ってみせて それから深い声で言う
「辛かったろう」


わあっとおみつは泣き伏し その背中をさすってやるしか新吉にできることはなかった


新吉は忙しく やりたくないことはしない暇なお才は おみつの休む座敷に押しかけては好き放題に言い立てて どんどんおみつは弱る



間もなく噂を聞きつけ香野屋佐市が仙石屋に怒鳴り込んできた
弱ったおみつの様子に佐市は新吉に言う
「殺される為に嫁にやったんじゃない 
このままここに置いていたら 可愛い娘が殺されてしまう
連れて帰らせて貰いますよ」


「おとっつあん」
おみつが泣いて嫌がるのを無理に駕籠に乗せ連れ去った
去り際 佐市は新吉にこうも言った
「新吉さん これで縁を切らせてもらいますよ」


佐市がおみつを連れて出て行くとお才が喚いた
「ああ せいせいしたよ 塩まいてきな!」


十日ばかりすると お才はしゃあしゃあと猫なで声で新吉に切り出した
「商いは何につけても主人が独り身では外聞が悪い
ましてお前さんみたいな顔のいい男だと妙な噂も立てられがちだ

どうだえ 三人目を貰ってみては
おゆき あれなどどうだろうねえ
あれはあたしの身内だし 後添え 継子の水くささも無くなるってもんだよ

おゆきなら少し年は上だが 共に育って気心も知れてるだろ
あれは働き者の良い女だよ
この家のことも万事心得ているしねえ

確かに出戻りだが お前だってこれで三人目の女房ってことになるんだし」


三度三度 食事のたびに 寝る前の挨拶代わりにもお才は繰り返す
「どうせ おみつは戻って来ないさ
噂じゃ まだ寝込んでいるそうじゃないか

今度はおゆきにしておおきよ

男と女なんて どうとでもなるものさ

おゆきは いいって言ってるよ」


「ほら あたしを安心させておくれよ」


しつこいったらない


そしておゆきも新吉を口説く
「あたし あたしは年が上だし 言い出せなかったけれど 本当は本当は ずっと昔から新さんが好きでした
どうか どうか・・・」


「それで お前は満足なのか」とだけ新吉は問うた

おゆきは満面の笑顔「はいな」

「恋女房」-4-

2017-05-19 21:05:49 | 自作の小説
上半身だけ起こしたおみつは声も立てずに静かに泣いていた
新吉は焦る「泣・・・泣くな」
おみつに近寄り新吉はそっと肩を抱いた
すっぽりと新吉の胸におさまり おみつは微笑む
「だって・・・嬉しいんです
どんなに嫌いな気に入らない嫁でも持参金を使って 離縁したくても返せない
だから・・・辛抱しておられるのだと思っておりました
嫌な女でも店の為だと
迷惑に思われていると」

「あんなに厳しい事を言っても泣かなかったではないか」

「叱られて泣くと甘えているみたいですもの
甘えてはいけないと思っておりました
今は・・・嬉しくて幸せで泣いているんです」


「厳しくすれば泣いて帰るんじゃないか そんな考えもあった」

「あたしは おぶってもらった背中の温かさが忘れられなくて
それから縁談が来始めてからー旦那様がお嫁を貰ったと聞いて
なんでなんで こんなに胸が痛いんだろう
心の中に穴が開いたように・・・・・
何もかも終わった 悲しい心持になるのだろうって


それからそのお嫁さんが死んで またお嫁さんを探していると聞いて
今度こそ今度こそ旦那様のお嫁さんになりたい
でなければ死んでしまう!そう思ったんです」

それが恋だとは おみつは思わなかった 知らなかった

「あたしは旦那様のこの温もり 旦那様だけのこのあったかさがずっと欲しかったんです」

新吉の声に狼狽が滲む「お前 怖くはないのか  あんな目にあったばかりなのに」

「あたしが一番安心できるのは旦那様の腕の中」

おみつを抱きしめる男の腕の力が強くなる


「でも・・・堅い・・・・・」
頬に何か堅いものが食い込み それがおみつには気になった
ふっと少し腕を緩め 懐(ふところ)に差し込んだきり忘れていた物を新吉は取り出した


「それは・・・」

新吉が手拭を拡げると出てきたのは女物の下駄
ふっくらした鼻緒の曲線が優しい
「お前にー」と新吉は言った

おみつが両手で受け取ると
「死んだおっかあさんの父親は下駄職人で お才おっかさんが後添えで来てから居づらい時にはずっとそっちへ行っていた
小さいお前と出会った時もそこへ行った帰りのことさ
じいちゃんの血なのか こうした物を作るのが好きで・・・・・
お前にいい物を作ってやりたいと思ってて・・・・・
やっと気に入った物ができた」


「あたしに あたしに拵えて下さったんですか」

「ああ・・・」新吉がうなずく

またおみつが涙をこぼすので「だから もう そう泣くんじゃない」
おみつの手から下駄を取り上げ横に置き 静かに体を倒していく





離れの座敷の灯りが消えるのを憎々し気に睨んでいる人間がいる
「許さない・・・許しはしない・・・・・このままでは・・・」
幸福な者にも憎悪を滾らせる者にも夜は深まり清々しい朝へと移っていく



新吉に愛されておみつは輝きを増す
仕草もめっきりしっとりと艶っぽくなった

新吉が売り物になりそうな鼻緒に工夫を凝らした下駄を考えていた事は亀三を喜ばせた
その下駄の歩きやすさをおみつが客に話すものだから 注文が増え 鼻緒だけでも欲しがる客も出てきた


「もう安心だ」
商売に精を出すようになった新吉の姿に亀三は気が緩んだのか寝付くようになる
そうして三月(みつき)
亀三の臨終でばたばたしている間に今度はおみつの姿が見えなくなる


おみつは・・・お蘭が死んだと同じ蔵の階段の下で見つかった

息はあったが・・・命はあったが・・・お腹にいた子の命は失われた

「恋女房」-3-

2017-05-18 19:28:50 | 自作の小説
邪恋ほど募るか 燃え上がるか 人は狂うか 何も見えなくなるものか
己が恋の為ならば人を害すも理となるか
ただの邪(よこしま)な醜い欲望と気付けぬものか

自分のモノにしたいとそればかりー

面倒な用事はしたくないお才は菩提寺への挨拶すらおみつに押し付けた
それでもさすがに気が咎めたか
「行き帰りは駕籠をお使い そこは加助に言いつけておくからね 
荷物もあることだし 
用事が済んだら 早く帰ってくるんだよ」

ずけずけ物を言う住職がお才は苦手であったのだ

おみつには優しい住職だが

亀三の亡き妻のお新の法事についての話も終わり寺を出ると駕籠が居ない
少し先の店で待っていると加助が話し「こちらでございます」と先に立って歩く

どんどん寂しい方へ向かって歩くものだから おみつは少し気持ちが悪くなって立ち止まる
竹林の中へと加助は進んでいくのだ
心なしか早足で

焦れたように加助はぐいっと強くおみつの手首を掴んだ

「ほうれ じきにその店でございます」

おみつは加助の手を振り払おうとするのだが 男の力は強い
「離して!何をするのです!」

唸るような声を上げて加助はおみつを肩に担ぎ上げた
「若旦那はおみつ様の素晴らしさが分からない
あたしはおみつ様が嫁にいらした時から ずうっと恋焦がれて・・・・」

「嫌です 離して おろして!」

おみつが必死に叩こうが暴れようが加助にはこたえない
すっかりのぼせ上っている
「あたしのものに! あんな薄情な若旦那なぞ 」

「何かしようと言うのならー舌を噛んで死にます!」

加助はおみつの体を地面に下ろした
「面白い 本当に死ぬるかどうか 」

ぐいとおみつの着物の衿口を拡げようする

おみつに迫る加助の鼻先に十手が突き出された
「忠七!こやつを捕えろ」
十手を持っているのは同心
加助の体に捕り縄が回された

「お内儀 危ないところであった」
おみつを助けてくれた同心は 夕霧雷之進( ゆうぎり らいのしん)と名乗った
加助は忠七に番屋へ連れて行かせて 自身は仙石屋までおみつを送り 主人の亀三に事情を話した

加助のだいそれた振舞いを驚きつつも亀三はおみつに言う
「可哀想に 恐ろしかったろう 」

「わたしが わたしが付いていかなかったばっかりに」と悔やむお春にも亀三は言う
「お前は足を怪我していたんだ まさか加助がこんな事をしでかすなんて誰にも分かりゃあしないよ
おみつをゆっくり休ませてやりなさい
時に新吉はー」


新吉はまた出かけていないのであった

辞する前 夕霧はもう一度おみつを見舞った
「くれぐれも気を付けられることだ
この店は どうにも事故が多すぎる
鬼でも居ついているのかもしれぬ」

「鬼?」

「ああ・・・鬼は優しい顔をして近づくそうな
安心して気を許すと 取って喰われるのだとか」

意味ありげな言葉を置いて 夕霧は座敷を出て行く


夜遅く帰ってきた新吉はおみつの奇禍に顔色を変える
お才はここでも憎まれ口をたたく
「ふん 普段からおみつが色目を使っていたのかもしれないよ
だから加助ものぼせあがったのだろうよ 加助も可哀想にさ」

お才にはおみつを労わる気持ちなどかけらも無い
「なんだね その目つきは 思ったことも言えないのかね後妻だと
育ててやった恩も忘れて
だから継子(ままこ)は嫌いなのさ」


のそりと座敷に戻ってきた亀三はお才を窘める「お才!」
それから新吉に向き直ると言った
「今夜くらいはついていてやりなさい
たいそう怖い思いをしたんだ
夕霧様が行き合わせなかったら どんな事になっていたか」

夫婦の部屋として与えられている離れの座敷へ新吉が向かうと 廊下にお春が座っていた
「おみつ様は一人でいたいと仰って」
心配で離れられずーお春は怪我をした足で廊下に座っていたのだった

「分かった・・・ 今夜はあたしがついている
もしも何かあれば呼ぶから
お前は休んでいなさい」

お春を下がらせて新吉が部屋に入ると 布団の中にこそ入っているもののおみつは目をぱっちり開けていた

新吉を見て起き上がろうとする「すみません・・・」

それをおしとどめて新吉は言う
「横になっていなさい ここにいるから 少し眠るといい」


おみつは首を振った
「眠れないんです 目を閉じると・・・」
加助の顔が迫ってくると言う
「お才様は あたしがいけないって」
おっかさんと呼ばれるのをお才は嫌がり 「お才様」とおみつに呼ばせていた

「あたしが あたしが いけないんでしょうか
加助があんなことをしようとしたのはー」



「馬鹿な!」と新吉は言った
「お前はなんにも悪くない 椿だの牡丹だの桜だの桃だの 咲く花に罪があると思うか
罪があるなら このあたしだ 
お前を守ってやれない
辛い思いばかりさせているー」

「旦那様?」

「あたしはー
俺は出来のいい太助兄さんと違って無茶ばかりをやってきた
ほんの気まぐれで 通りすがりに小さな女の子を店まで送った
有難うーと礼を言われることが嬉しいことだと知った

その女の子がたいそう綺麗になって 
傾いた店を助ける持参金付きで女房になりに来るという

俺は自分の親切に たった一つした良い事が
相手に恩を着せたようで
それが汚されるような そんな気持ちになった

綺麗な綺麗な花嫁
こっちが触れると汚すことになる
俺の汚れまで着せるようで

ただ店の者が子供の花嫁に 内儀に何ができるーなんて話すのが耳に入り

せめて誰からも陰口を叩かれない女にーって 

俺が悪く言われるのはいい
お前がどうのこうのと悪く言われるのは我慢ならなかった」


ちょっと言葉を切り 驚いた表情のおみつを見て薄く笑う
「お前を嫌ってなど居ないよ 
お前を一番の女にしたかった
誰もが憧れて噂をするような

俺みたいな男がー

綺麗な体のまま お前が望む時に香野屋へ帰してやろうと思っていたんだ
そうしてお前に相応しい 似合いの男とってね

ただ傍にいると苦しい
俺は自分が仕掛けた罠にはまっていた

俺も加助と変わりゃあしない けだものだ」


「あたしは!」
おみつが何か言いかけるのを止めて新吉は続ける

「おっかさんは俺を産んで死んだんだ 俺が殺したようなもんだ
もしも本物の夫婦になったらー子供ができたら
お前は死ぬかもしれない

俺は お前が死ぬのは嫌だ」


カナヘビかな

2017-05-17 22:15:12 | 子供のこと身辺雑記
裏口横に置いているプランターにずうっといるコ
ちょろちょろした動きも可愛くて





何か植えようかなと思って土を入れていたのだけれど このコが住み着いたようで
家の出入りのたびに 今日もいるのねえ
何を食べているのかしらーなどとも思いつつ

携帯を近づけたら 四角いプランターの中をぐるぐる逃げるだけ
プランターから出ていくという選択肢は このコの中には無いようです^^;

「恋女房」-2-

2017-05-17 13:57:37 | 自作の小説
仙石屋(せんごくや)亀三は新吉に新しい女房を迎えて商売の験直しをはかろうとする
だが・・・ケチのついた店 しかも悪い名が売れている新吉に娘を嫁にやろうという人間はいない

それが・・・捨てる神あれば拾う神ありーなのかどうか思いもかけぬ縁談(はなし)がまとまった

呉服を扱う大店・香野屋(かのや) その店の器量自慢の娘おみつを大層な額の持参金付きで 嫁にくれると言う
亀三にしてみれば願ってもない



「ああ いやだ いやだ 大店のわがまま娘なんざ けったくそ悪い 一緒に暮らしたくありませんよ
顔は綺麗でも性格がさぞ悪いんでしょうよ 
さもなきゃ もう傷モノか でもなけりゃー」
と好き勝手にお才が言いつのるのをさすがに亀三も叱った
「いい加減にしねェか!」



亀三は香野屋の娘おみつに会って これが心底おみつの望んだ事と聞いてきた
昔・・・新吉が親切にしてくれて その面影がずっと忘れられなかった
嫁に行くならこのお方・・・そういじらしくも心に決めていたと言う


おみつは・・・可憐な花のような娘だった
お嬢様と威張る事なく
「うまくこのお話がまとまりましたなら どうぞよろしくお願い致します」
畳に両手をついて亀三に挨拶をした

香野屋の娘おみつには13歳になった頃から困るほどに縁談(はなし)は方々(ほうぼう)から来ていた
そのどんな縁談にも首を縦に振らなかったおみつがー
新吉の女房が死んで仙石屋が嫁捜しをしていると知りー
父親の佐市が折れるまで・・・食事をとらなかったと言う
おみつの母のお駒は佐市に縋った
「このままではあの子が死んでしまいます」

一途なおみつ

これほど慕ってくれる娘と一緒になれば さすがの新吉もーと亀三は望みをかけた

嫁ぎ先での娘おみつを案じる香野屋佐市は小さな頃からおみつの世話をするお春をつけて嫁に出す

祝言の席で花嫁らしく装ったおみつを見た新吉は終始無言だった
更にはその愛らしい人形のような嫁と 新吉は一つ床で過ごそうとはしなかった

娘時代と変わらぬ稽古事は続けさせ その立ち居振る舞いには厳しい叱責と小言
本当の意味の夫婦にはなろうとしない

おみつは一所懸命だった
庇ってくれるのは亀三だけ
お才はかなり底意地が悪い

おゆきばかりは「新さんは弟みたいなものだもの 困ったことがあったら何でも相談してね」と言ってくれたが


辛いとは一言もおみつは言わなかった
実家の香野屋にも言わないようにとおみつはお春に口止めをした
「あたしがいけないんです 気がきかないから
気にいってもらえないんです」




おみつの持参金で仙石屋は持ち直し逃げていた客も戻ってきた

自分の事は棚に上げて 新吉が細々と注意したおみつは十五で嫁いでから三年
その瑞々しい美しさが花開こうとしている

「おみつさんが使っているなら あたしも欲しい」
その美しさに憧れる女客も出てきた

相変わらず新吉には商売にやる気があるのかないのか分からないけれど

おみつという嫁さん繁盛となってきた仙石屋


ところがお才が言い出した
「子無きは去ると言いますよ 縁切りしちゃどうです あの娘」

おみつの人気が高まることが お才には我慢ならないのだった
考えの浅いお才は おみつにもずけずけ言う
「女房は跡取りを産んでこそ
子供も産めない嫁などごく潰しです
目障りったらありゃあしない」

「すみません」としか言いようのないおみつ

「ふん 新吉は散々遊んだ男だ
お前のそんな乳臭いところが気にいらないのだろうよ」



新吉がおみつを本当の嫁にしていないことは店の者も知っていて「いつまでたってもお客さん」などと
おみつを邪険にする者もいる

留守がちな新吉は そうした事には気付いていなかった
気に入らぬ嫁だから新吉は家に居付かず お才の扱いもあり おみつをいじめてもいい人間と思う者もいた

品のある女雛のように抜けるように色が白く美しいおみつ
そんなおみつに岡惚れ懸想する者も出てくる

陰でその男をけしかける人間も
「いただいちゃいなさいよ 
それで離縁となれば あんたの嬶になるかもよ」
意地悪い囁き


女を自分のモノにしたい男はそれに乗り身勝手な夢を見る
ーそうだ 俺に気があるに違いない なら手を出してやらなければー

「恋女房」-1-

2017-05-16 22:57:19 | 自作の小説
体調を崩したお師匠さんをお見舞いに行った帰り道 香野屋(かのや)の娘おみつは躓いた拍子に下駄の鼻緒が切れてこけた
付き添いの女中のお春は鼻緒の切れた下駄を持ち おみつに声をかける
「おみつ様 ちょっと待ってて下さいまし」

そのお春の持つ下駄を「貸してみない」と取り上げた若い男がいる
相手を見てお春は眉をひそめたが 男は構わず手拭いを拡げて そこにおみつを座らせた
「この上に座ってな」

おみつは若い男のひどく整った顔を目を丸くして見る

お春はその若い男が 顔だけは好い仙石屋(せんごくや)の新吉だと知っていた
遊んでばかりの放蕩息子 堅物の長男とは大違いとか碌な噂を聞かない

「商売モンだが・・・・」懐から出した何かの布を器用に下駄へ付ける
「ほら うめえもんだろ  おや おめえ 血が出てるじゃねえか」

こけた時についた傷か 目ざとく気付いた男は おみつに背を向けてしゃがんだ
「ほら 送っててやるよ その傷で歩くのは可哀想だ」

お春の道案内で おみつを背負って歩きながら男は言った
「嬢ちゃんは小さいのにえらいな 我慢強いな よく泣かなかった 
しっかりしてらァ いい嫁さんになるんだろうな」


店の近くまで来ると男はおみつを背中から下ろしてお春に言う
「俺みたいなのが送ったとあっちゃ でえじなお嬢様に悪い評判が立つといけねえ 
ここで失礼するぜ」

「あ 有難うございます あたしはおみつって言います あなたは・・・・・」
ひどく早口で問いかけるおみつに優しい笑顔を向けて男は言う
「ああ きちんと挨拶もできるんだ てえしたもんだ
俺ァ新吉っていうのよ
怪我 早く治るといいな」

時に新吉十六 おみつが十(とお)

噂と随分と違うーと そうお春は思ったものだった


それから さらさら さらさら時は流れ過ぎていき 新吉の兄の太助が川に落ちて死んだ
太助にはお蘭という女房がいたが 子供はまだ居なかった
この後家となったお蘭と新吉を一緒にさせることで 新吉を落ち着かせようと考えた新吉の父の亀三であったが

そうそうついた遊び癖は治るものでもない
兄の女房だった女にすぐに手を出す神経を 新吉は案外持ち合わせてはいなかった

亀三は溜息をつくばかり
後妻のお才は「無理ですよ 太助さんとは出来が違うんですから 」
新吉などに商いを任せては潰してしまうーとも言う
仙石屋にはお才の姪のおゆきも暮らしている
おゆきは一度嫁にいったのだが 相手が死んで出戻ってきたのだった
お才としてはなさぬ仲の新吉に商売を任せるより おゆきと番頭の寅七と一緒にさせて後を継がせたいのだ

亀三は器量にも惚れて一緒になった亡きお新に似た新吉が可愛い
死んだ太助よりも見どころがあるとも思っていた
商いに身を入れてさえくれれば

ところが今度はお蘭が蔵の階段から落ちて首の骨を折って死んだ


仙石屋さんは呪われてはいやしないかーなんて嫌な噂もたちかける
客が逃げれば商売は傾く



親馬鹿

2017-05-16 10:57:44 | 子供のこと身辺雑記
私はバカな人間なので 子供が名指しで仕事を依頼されると嬉しかったりします
長男にしてみれば そんな難しいことやない 誰でもできることやーらしいのだけれど

長男が去年も引き受けた「ポスター発表会での指導・助言」その依頼が今年もありました



(長男と依頼してこられた方の名前は隠しています)

他にも週に二回だけ ある学校に教えに行っている長男は肝心の自分の論文は来週発表があるのに 進まないーとのこと
自分の中で この道を進んでいいのか その資格が自分にあるのか
そんな迷いもあるらしいです

それでも この壁を乗り越えられたらいいなー

むしろ足をひっぱるしかできませんが(おい!^^;)

長男の今までの頑張りをー少しでも周囲が認めてくれているー少なくともアテにできる人間と思ってくれる人がいる
その期待に長男が気付けたらいいなとも思うのです

せこい喜び・笑

2017-05-15 00:07:35 | 子供のこと身辺雑記
母の日と言えばカーネーションの鉢植えだけどーって姑に買うの 少し迷っていましたが
去年も買ってるし 今年は無かったと思われても・・・と どうせ(お墓用のお花と仏壇用のお花買うのに)花屋さんに行くのだしー
そう思って 小さい方と大きい方とでも迷って 大きい方の鉢植えを買いました

プレゼントは長財布と半分に折って使う財布と それに「好きな物を買って下さい」と添える現金を少しと

土曜日は雨だったのを良い事に主人に「お墓のお花は日曜日に持っていってね」と頼んで手抜き・笑


で姑の入浴の手伝いをして帰る準備をしていたら 大阪で暮らす主人の兄が小さな包みを持って入って来てテーブルの上に置きました

母の日だから姑にカーネーションの鉢植えと何かプレゼントを届けに来てくれたようです


でもって私という人間の小ささを示す感想は

義兄の持ってきたカーネーションの鉢植えは 私が買ってきた鉢植えの4分の1あるかないかの大きさで

ーやった 大きい方の鉢植えを買ってきておいて良かったー
でした・笑


勝ったか負けたかの話じゃないんだけどね^^;

お菓子も2種類 届けておいたし


主人の兄弟に姑を粗末にぞんざいに扱う嫁って 見られたくない変な見栄もある私でした





5月も半ばの日曜日

2017-05-14 21:31:21 | 子供のこと身辺雑記
去年に続いて♪ 今年も町内の年に一度の公園の草抜きに長男が行ってくれました
「(住人としては)当たり前の事やし」

ーいいコです -と我が子ながら調子良く 自分の都合で褒めておこう・笑




長男がくれた母の日用のカーネーションの鉢植え



カゴに入って可愛いクマさんもついて綺麗にラッピングされてましたがー水やりに邪魔だし カゴを綺麗なままとっておきたくて
早々にラッピングを外してしまったガサツな私・爆




応援するヴィッセル神戸が勝ってホワイトボードに長男が書いたもの

明日が長男の誕生日ですが 授業があり家には居ないので一日早く誕生日祝いのケーキを食べました



長男は月曜日と金曜日は少しですが教え(先生)にも行っています


なんかどんどん増える気がする長男のコレクション










「恋する魔法使い」-24-

2017-05-13 12:41:12 | 自作の小説
ーやるべき事は 皇女ファナク様を無事に送り届け レイダンド国とアクシナティ国の同盟を確かなものにする
ロズモンドを道中 無事に守り・・・・・
そして帰るべき場所に帰る
何の困難もない 簡単な事だ・・・・・
何を未練に彼女の部屋の明かりが消えるまで見上げているのか
無事に彼女が眠った事を確認しなくては眠れないのかー
「馬鹿だ・・・」ベルナーの呟きに同意する声があった
「馬鹿だな」

「バイオン様 どうしてここへ」

「我々はずっとお前を見守っていた」

眼だけで問いかけるベルナー

「お前の行動に大長老アスザック様もうるさ方も満足しておられる
そこで案じられるのはログサールの失敗」
ここで長老バイオン師は 重々しく言葉を切る
「いい若い者が長く独り身でいると碌な事が無い
この機に引き合わせておきたい女性(にょしょう)がある
ま・・・平たく言えば縁談じゃな」

無言のままのベルナーの表情を長老バイオン師は視(み)る
「そなたを見込んで持ち込まれた話にアスザック様は許可を出された
そなたは絶対に会わねばならぬ
今夜 これからすぐに!」

口を開こうとしたベルナーを遮るように長老バイオン師は言葉を重ねる
「口答えは許さんぞ 我らが用意したそなたが運命(さだめ)を受け入れるのじゃ!
ついて参れ!」
すっとバイオン師と同じかの領域の人間4名がベルナーを囲む
{無言の檻}でベルナーは動きを封じられた
言葉を発する事すらできない
長老バイオン師とかの領域の人間達 5人がかりの術がベルナーを縛っていた
「術を解こうとするな お前の師アスザールとこの儂を信じよ・・・・」

長老バイオン師はベルナーを城の西の塔の入り口に連れて行き扉の前で言った
「さァ進め 振り返るな
お前の幸福が其処にある」

ベルナーが中に入ると身の自由を奪う術は解けた
塔の中には導くように灯りが置かれている
灯りに従ってベルナーが進むと 椅子に縛られている女性がいた
顔にもゆるく布がかけられている
その身体の線・・・ 姿!

「誰が こんなにひどい事を!」

頭にかけられた覆いを外し その女性(ひと)を縛る紐を外す
縛めを解かれた女性(ひと)は言った
「父と母です」
その女性(ひと)ロズモンドは答えた

ブロディル国の隻眼将軍カズール・シャンデとレイダンド国の女官長メリサンドから 
つまり彼女の両親から二人の出逢い その恋の顛末について聞かされていた
そしてー
おもむろにシャンデ将軍は言った
「これから更に大事な話がある その椅子にかけて目を閉じて心を落ち着かせなさい」

素直に従ったロズモンドをシャンデ将軍とメリサンドはあっという間に身動きできない状態にした
「わたしはあなたに わたしやカズールと同じ過ちをしてほしくありません
あなたが旅に出る前に あなたが嫁ぐ相手を決めました
今からその方がここに参ります
心を決めて静かにしてお待ちなさい」
メリサンドは娘にそう言うと部屋を出て行った

ロズモンドが事情を話し終えると 一瞬ベルナーは呆気にとられた表情になり それから笑い出した
「僕の方も似たような話で この中にいる娘が『お前の運命』だとー

だから僕は 一生独り身でいる覚悟でここに来たんだ
でも これは これは・・・」

「ベルナー・・・様?」

「様は要らないって言ったよね」ベルナーはちょっと笑うのをやめる「ああ・・・僕は・・・ここに入って君を見るまで
人生の明かりが全て消えて闇底に落ちたような気分だった」

行儀良く座ったままのロズモンド いや彼女は動けないでいる
動くことが恐ろしいのだった

「誓って領域を出てきた以上 一人で戻らなくてはいけない
誓いは守らねばならない
君を魔法使いとしての人生に巻きこんではいけない

どんなに苦しくても君を諦めるしかない

何かしでかしそうで 君の近くにいるのすらできない
でも 君の姿を追わずにはいられなかった


あの川辺で その長い髪を風になびかせ君が現れた時から その声を聴いた時から・・・・・
僕は君に恋していた

愛している

君が僕の命をこの世に引き戻してくれたんだ


教えてくれ
どうしたら 僕を愛してくれる
僕は 君に愛してもらえる」


ベルナーはロズモンドの足元に膝まずいた「どうか 僕と生きると言ってくれ」


そしてロズモンドは声を出せずにいる
言葉より先に涙が零れ落ちた
「これは・・・本当のことなの?」
振り絞るような細い声は震えている


「君を諦めようと思った
けれど僕の心の中は君でいっぱいだ

毎夜 庭から君の部屋を見上げていた
君の部屋の明かりが消えると漸く眠れる

そして君の夢を見るんだ この腕の中に君を抱く」



「ああ・・・ベルナー」





西の塔の外では心配そうに立つシャンデ将軍とメリサンド
「大丈夫じゃよ」と繰り返す長老バイオン師

シャンデ将軍はロズモンドがどれほどベルナーを想っているか そしてベルナーもロズモンドを大切に想いながら
誓いを守る為に一人で帰ろうとしていることを 長老バイオン師に話した
娘の幸せを願う一人の父親として

長老バイオン師も弟子の幸せを願い動いた
「そもそも{一人きり}で戻らねばならん誓いなどアスタリオン(ベルナー)は立ててはおらん」
ー魔法使いの正式な婚姻には大長老アスザックの許可が必要ではあったがー





さて塔の中では やっとロズモンドが答えていた
「ええ! ええ! あなたと共に生きます」


ロズモンドのその言葉で歌うたいのベルナーこと魔法使いのアスタリオンにしてレイダンド国の王子リオデール
彼は長い孤独から解放された
魔法使いゆえ誰にも真の名は教えられず 呼んでもらえず・・・・

ロズモンドにしてみれば本当の名前すら教えてくれなかったことになる
なのに なのに いつのまにか心の奥底に棲みついて
ロズモンドの心の中はベルナーでいっぱいになって
ー魔法使い 魔法使い もしもあなたが消えたなら 私の心は砕け散るー







それからベルナーはレイダンド国の王子リオデールとして皇女ファナクをアクシナティ国へ送り届け 両国の同盟を結んだ

アクシナティ国の皇帝コキンタクが不在の間に レイダンド国へ向かったはずの船団が戻ってきたり 怪しい事が続いて
皇后シュランサイは女皇帝となっていた
女皇帝シュランサイは皇女ファナクを悪人の餌食にしようとした事でも 前皇帝コキンタクを許さず レイダンド国攻撃失敗の咎とで
その首を刎ねた

女皇帝シュランサイは皇女ファナクの無事を喜び 大事な一人娘を庇護してくれたレイダンド国への恩を忘れなかった
「これからは侵略の戦いばかりの時代ではありません
互いの国を尊重し認め合う
民が幸福であってこそ
安心して互いの国を行き来できる平和があってこそ 真に国は栄えるというもの」



ベルナーがアクシナティへ向かうと時を同じくして アンドール王子とロブレイン王子はマルレーネ姫とエルディーヌ姫とブロディル国へ行き
その旅をカズール・シャンデ将軍とその部下が護衛し 姫君達には女官長メリサンド率いる侍女達も同行した

ブロディルの国王夫妻はアンドール王子がレイダンド国で暮らすという決意について最初は怒ったが
呆れるほど笑顔のロブレイン王子に一蹴された
「では 未熟な弟達がレイダンド国で暮らす方が安心だとでも?」

アンドール王子も冷静だった
「わたしは父上から王になる心得についてお教え頂いております
父上母上にはまだ若々しくお元気であられる
王位を譲られるまでには 弟達を立派な王になれるように導くことができましょう」


その気になれば口のうまいロブレインは幼くして母親を亡くしたアシュレイン姫とリザヴェート姫を褒め上げ
カサンドラ王妃に義理の娘ができることを思いださせる
「なにしろ あの暢気者のリトアールに結婚を決意させた姫ですよ」
ともロブレインは笑うのだった

マルレーネ姫とエルディーヌ姫の人柄にも安心のカサンドラ王妃
そう王妃は気付いていた
息子たちが自分を安心させる為に 自分の妻となる女性を連れてきてくれたのだと
この姫君達とならば 二人とも愛に溢れた一生をおくれるのだと

母親にとっては何よりも子供の幸福が全てなのだ 良き妻に恵まれて

半月の後 アンドール王子とロブレイン王子とマルレーネ姫とエルディーヌ姫はレイダンド国へ戻る事になる

ブロディル国のアンドルフ王はカズール・シャンデ将軍にリトアール王子とダンスタン王子を連れて戻った後は・・・・・
その率いる部隊を連れてレイダンド国で暮らすように頼んだ
アンドール王子とロブレイン王子を守るようにと
これから遠く離れて暮らす息子達への贈り物として行ってほしいと

代わりにレイダンド国からはアシュレイン姫とリザヴェート姫護衛の部隊が来る
そういう取り決めだと


こうして おとぎ話はめでたしめでたしで終ります


でも ちょっと文句を言っている人も

ああ ロズモンドのようです

「やった魚が出会いだなんて ロマンチックではないぞ
全然素敵じゃないと思うぞ
魚で恋に落ちたなんてというのはー」


おや ロズモンドの男言葉も復活しております
ベルナーは ああ 笑顔で抱きしめております

キスでハッピーエンド


(これで終ります 読んで下さった方へ 有難うございました)


オマケ
いたずら描きのロズモンド



いたずら描きのベルナー







懸念

2017-05-11 10:31:20 | 子供のこと身辺雑記
勉強した内容なんざ すっかり忘れて(あかんやん・笑)久しいけれど 高校の公民で少しと大学時代の一般教養で「憲法」の講義を受けた

テキストの憲法の本と関連して買った六法全書(重くて読みにくい文章で書かれてるシロモノ)など少し齧る程度には読んだ


少し前のニュースとして関西弁で憲法について書かれた本があることが扱われていました
いわく関西弁は吉本新喜劇などでも全国区として いまや馴染みある言葉
もっと日本国憲法を身近なものとして知ってもらう為に書いたーと著者さん方は話されてました

ただ不安に思うのは そうした解説本みたいなものは書いた人の思想が少なからず反映されます
著者さんの解釈 考え方
それによりの洗脳も可能ということ
人は影響されやすい生き物です

本に書かれていることは全て正しいと思い込む人も多いです

みんなに日本の憲法ってこうなんだよ
難しいもんじゃないよーという それはそれ
良いことだとは思います

でも どうなんだろ
危ないなあ
とも思うのです

基本で間違うと どんな良い物も時に悪用されることもありますから

面白い わかりやすいが全てでは無いでしょうと

偶然

2017-05-10 16:35:47 | 子供のこと身辺雑記
左目に注射するので帰りは眼帯して片目状態となるので 病院へはタクシーで行きます

治療も終わり処方箋が出て病院から歩いてすぐの薬局で目薬を受け取り病院の入り口近くのタクシー乗り場へ

ドアが開いて乗った途端
タクシーの運転手の方が「お客さん 呼んでくれた人ー」って驚いたように声を上げられて

私はまた他のお客さんが呼んだタクシーさんだったのかと思って「降りましょうか?」と言ったらー

病院に行くのに家に迎えにきてもらった同じ運転手さんでした

「じゃ 乗せてもらったところまでお願いします」って

しばらく この偶然の話題で盛り上がりました

「すみません 私 あんまりじろじろ見てはいけないと思って 気が付かなくて」と言ったら
運転手さんも
「よく似た人やけど 眼帯してはるしー」って

そこから目に注射する治療なので化粧もできずにってことなども話して
なかなか楽しい帰り道でした

薔薇眺む 喜び在りて 此の五月 薫風良かれ 雨も良かれと

2017-05-09 14:43:15 | 子供のこと身辺雑記
咲き終わった薔薇の花を切りついでに庭から



つるバラの黄色いの一本の苗でこれだけ広がります





これはごくごく淡い(薄い)ピンク



マーガレットに埋もれるように咲いていました



これはまた別の品種のバラの蕾

一応植えた品種はノートなどにメモしているけれど 枯れるのもあったりして次第に混乱してきます・笑






これはダブルデライト
変わった色の薔薇は分かりやすくて便利です^^;
庭の真南の端に植えていることもあり覚えやすい






これはローラ ピンクとオレンジの中間のような色のバラです





白い花が終わったあとのラズベリー(木いちご)の実です




黄色のバラ 丈が3~4mほどもあります















さきほど植えたマーガレットの「さくらべーる」 品種名にさくらってつくのも可愛くて




これは山紫陽花の蕾です 紅とかいう品種だったはず



四季咲きのドンファンという品種の薔薇です





これはパパ・メイヤンという品種の薔薇です
香りも良くて好きです





玄関横の塀の傍の薔薇 
犬が来ると折れるからロープを張っていましたが 見事に外してくれています
ここには厳重にしつこいほどにロープを張っていたのですけれど

また対策?!を考えないと

私が塀の外近くを通ったり または帰宅したら 「お帰り」とばかりに凄い勢いで犬達が塀に飛びついてきてくれます




これは玄関の外のプランターに植えたペチュニア
ペチュニアやサフィニアはなめくじが好むのでーー;なめくじ除けの薬もばらまいています