Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

2008-08-18 | 日本映画(は行)
★★★★☆ 2007年/日本 監督/吉田大八
「サトエリ、大健闘」




なかなか面白かったです。兄や妹にある田舎者の鬱屈感を見ていると「松ヶ根乱射事件」を思い出しますが、最終的には妹の再生物語へと収束します。なので、「松ヶ根」のようなシュールな感じではなく、ホラーテイストのホームコメディといった感じでしょうか。ストーリーの不気味さとは相反して、演出はとてもポップな雰囲気であまり生々しさを強調していない。なので、観る前は結構構えていたのですが、さらっと見れてしまいました。

自意識過剰オンナ、澄伽のキャラクターは、私の敬愛する漫画家岡崎京子氏の作品によく出てくるタイプですね。「ヘルタースケルター」の「りりこ」なんぞを、実際に佐藤江梨子はお手本にしたのではないかと思ってしまいました。抜群のプロポーションを存分に活かし、存在感を見せます。ミニのワンピースから覗く長い生足が、古い日本家屋の階段を降りてくる。そのアンバランスさ、気持ち悪さを存分に楽しみました。この役は、まさに当たり役でしょう。目を剥いた顔も怖いし。

舞台は田舎ですが、結局テーマは自己表現の方法、ということでしょう。4人の家族、それぞれが自分本来の姿を己の中から解放したいと思っている。その方法が間違っているのが、姉。もがいているのが、妹。諦めているのが、兄。知らないのが、兄嫁ではないでしょうか。それぞれのキャラのヘンさは少々あざとく感じられるものの、のどかな田園風景が舞台というのが効いていて、しっかりとキャラが際だっています。また、設定の毒々しさの割には、誰もが見やすい作品に仕上げられているのは、CM出身監督だからかも知れません。ただ、ワタシの個人的な趣味としては、もっと鋭角な切り込みが欲しかったところです。でも、ホラー漫画がいいです。この漫画のクオリティの高さが間違いなく作品を支えてます。初長編にしては、非常に完成度高いのではないでしょうか。これからが楽しみな監督です。そうそう、エンドロールでわかった「明和電機」がツボでした。