Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

昼顔

2008-08-19 | 外国映画(は行)
★★★★★ 1966年/フランス 監督/ルイス・ブニュエル
「どこまでも続く夢想」



ブニュエルは学生時代、よく見ました。今回続編となる「夜顔」が公開されるということで、久しぶりに再見。

改めて見直してブニュエルらしいシュールさを満喫しました。カルトムービーの匂いがプンプンします。セブリーヌが思い描く性的妄想のシーンになぜかくすくす笑いが抑えられない。馬鹿馬鹿しいのを大真面目にやっているショートコントみたいなんだもん。変な公爵の城に招かれて死体の真似をさせられ、雨の中を放り出されるという妄想では、「ウィッカーマン(オリジナル)」を思い出しました。この妄想シーンのおかしさというのは、ドヌーヴのまるで感情を表に出さないお人形のような目のせいもあります。一体、どこを見ているのってくらい、虚ろなの。昼の顔と夜の顔を持つセブリーヌだけど、本当は一日中夢を見ているのではないかしら。ずっと、心ここにあらず。

ドヌーヴの美しさには本当にうっとり。惚れ惚れします。ピン1本でまとめたアップのヘアスタイル。あれは、日本人のストレートな黒髪では、絶対に不可能。ピンを外してはらりと垂れる艶やかな金髪。金髪の美しさはもとより、その髪の豊かさに驚きます。ふわっふわの髪。そして、サンローランの素敵なお洋服。脱いだら陶器みたいに白い肌。やっぱり、ドヌーヴは最高。

セブリーヌが思い描く歪んだ性への欲望を、逆に男目線からの表現と捉える方もいるようです。さて、本当にそうでしょうか?夫とはできない。しかし、行きずりの男には快楽を感じる。それは、自分に罰を与えるという行為に潜む性的快感に根ざしているのかも知れませんし、そもそもマゾヒスティックな資質が彼女にあったのかも知れません。いえ、女というものは、自分を満たしてくれるものに対して根本的に貪欲な生き物と言えるかも知れません。短いカットバックで、セブリーヌの少女時代が映し出され、何かトラウマを抱えていることも示唆されます。しかし、作品の表面上はセブリーヌの本当のところがわからない、という見せ方にしている。そこが、この作品のすばらしさではないでしょうか。まあ、あの美しいドヌーヴを鞭で打つわ、顔に泥は投げるわ、雨の中に放り出すわで、さぞかしブニュエルは映画内プレイを堪能したんだろうというのは確実に推測できます。