Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

犯人に告ぐ

2008-08-20 | 日本映画(は行)
★★★★ 2007年/日本 監督/瀧本智行
「うねり足らず」




最近、この手の作品って、どこを基準に評価していいのか、正直わからなくなってきています。「火サス」よりはまし、とバッサリ切り捨てることもできるし、サスペンスとしてそこそこ楽しめます、と言うこともできる。結局、最近の「警察もの」で映画としての醍醐味を出すのは、意外と難しいんでしょうね。とりあえず犯人(対象としての悪)があって、最終的につかまれば物語としてのカタルシスは、あるわけです。しかし、昨今のミステリー小説っつーのは、家族とか組織の人間関係における人間ドラマをやたらと盛り込んでいるわけで、ある意味そのことによって「犯人を捕まえる」という物語の求心性は失われるわけです。

この作品の場合、その対象としての悪を犯人ではなく、「植草」というエリート官僚に向けていて、そこはなかなかに面白いところです。しかしながら、その対立が弱いわけです。振られたオンナの胸くらいでクラクラきちゃってリークするなんて。植草は、スターになっていく巻島に嫉妬しているんですが、男の嫉妬は醜いです。カッコ悪いです。そこんところをもっととことんやっちゃっても良かったんじゃないでしょうか。植草を演じている小澤征悦がすごくいいです。口角をあげてリップクリームを塗り塗りするシーンなんて気持ち悪くて。彼のおかげで作品が引き締まっていると言えるほど。だから余計にもったいないんだなあ。

この「組織内人間ドラマ」と「テレビで犯人に話しかけるというセンセーショナルな捜査」の2本の軸がうまく融合せずに終わってしまった感じです。おそらく原作では深い人間描写によって、1本のうねりになっているんでしょう。観客は犯人逮捕へ感情を高めればいいのか、植草の横やりを見守ればいいのか、どっちつかずのまま放り出されるような感覚。

で、意外とあっけなく犯人が逮捕されるんですね。しかも、逮捕の瞬間は描写されない。こういうスカし方って言うのは、好きです。しかも、一瞬だけ映る犯人役の俳優(ネタバレなので記名を避けますね)が、とてもすばらしい存在感を放ちます。さすがだね。彼のこの不穏さと言うのが、逮捕の描写がない物足りなさを補っている。笹野高史も非常にいいし、脇役のきらめきが印象深いです。

で。主役の豊川悦司ですが、これはもうファン目線なのでなんとも…(笑)。いつもより足の長さは目立ってません。ゴム草履も履いてません。キスシーンもありません。ん、でもラストのベッドに横たわる横顔を見ていると添い寝したくなりました。…すいません。