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ウンソプの周りの人は、皆、善人ばかり。それぞれ苦しみや悩みを抱えてはいるけど、根っからの悪人というのがいません。
心地よいです。
ミョンヨの同級生にスニョンと言う女性がいます。
末期の乳がんになり、故郷の病院に転院して来ました。死ぬのなら、故郷で・・・と言って。
ミョンヨはお見舞いに行きました。
悲しみは悲しみで慰めないと・・・と言って、サングラスを外しました。
右目は緑内障だそうで、もう既に視力は失っていて、治療は不可能でした。
ミョンヨ、やっぱり普通の人とは違う感覚の持ち主です。
書店の建物は賃貸です。
廃屋だったと言う理由で、ずっと無料で貸してもらっていたのですが、突然家主の娘から連絡が入り、家賃を払えと言って来たのです。払わないのなら、退去しろと。
で、家主に直接会って話をしてこようとウンソプは思いました。
ヘウォンもついて行きました。
ま、単に一緒に行きたいというだけでしょうけどね。
家主のハラボジは、決して悪い人じゃありませんでした。
ウンソプが来るのを心待ちにしていたほど、気に入っているようです。
ウンソプの人柄を認めているんですね。
家賃云々は、娘が勝手に言ってることのようです。先日のフリーマーケットの様子を偶然見かけ、物凄く儲けてると勘違いしたんですね。
儲けてるのに、家賃を払わないなんて・・・となったわけです。
家主にそのつもりはありません。
廃屋だったところを書店にしてくれるという事だけで嬉しいんです。家主もまた、本が好きな人でした。
家主はウンソプに自慢の本を見せました。古書です。
ウンソプなら、その価値を認めてくれるだろうと考えていたのでしょう。
ヘウォンとウンソプはいろんな話をしました。
例えば、ヘウォンを駅で見かけて一目ぼれした話とか。
その日は休日ではありませんでした。ヘウォンは虐められる日々から逃げ出そうと、学校をさぼり死に場所を求めて列車に乗ろうとしていたのです。
そして、ウンソプもまた学校を休んでいました。じゃなきゃ、会えません。
ウンソプは前夜実母から会いたいと言う電話を貰っていました。で、安東にいると言う実母に会いに行こうとしていたのです。
でも結局その日は行きませんでした。すぐさま行ったら、育ててくれた両親を裏切ることになると思ったのです。
そんな時、ヘウォンを見かけたのです。
ヘウォンは、川で死のうと思いました。
ところが、川に入ろうとしたとき、空腹でお腹が鳴ったのです。
まずは、腹ごしらえをしてからだと食堂に行ったら、素朴な料理をテーブル一杯に出してくれました。それがとても美味しくて、ヘウォンは完食したのです。
お腹がいっぱいになったら、眠気が襲ってきてしまって。
どのくらい寝たのか、ふっと目が覚めたヘウォンは、これじゃ死ねないと思い、川に急ぎました。
靴を脱いで、川に入って行った時、誰かが名前を呼びました。
叔母のミョンヨでした。
ミョンヨは転がりながら必死に駆け寄って来ました。
結局、ヘウォンは死にませんでした。
ミョンヨが何故あの場所にいたのか、いまだに理由は分からないようです。
生きてて良かった・・・とウンソプが言いました。
死なないでいてくれてありがとう、ヘウォン・・・と。
「言ってほしい。私たちは愛なの?ウンソプ。」
うん、愛だ・・・とウンソプ。
その日、2人は結ばれました。
ウンソプは父に捨てられ、今の両親に育てられたという事実を弱みだとは思っていません。
でも、周囲の人の中に、それに対して後ろめたさを感じろと言う人がいたのは事実です。
彼らの望み通り不幸がらなきゃいけないのかと考えたりもしましたが、それは間違いだとウンソプは思いました。
自分が必ずしも不幸になる必要はないんだと思ったのです。
だからいつも自分の生い立ちを隠すこともなければ、卑屈になることも無かったのです、ウンソプは。
ミョンヨはチャ編集長をスニョンの所に連れて行きました。皆同級生ですからね。
その時、スニョンの顔に痣が出来ている事に気づいたミョンヨ。
スニョンはぶつけたと言いましたが、ミョンヨにはすぐに分かりました。夫に殴られた痕だと。姉のミョンジュも同じような痣がありましたから。
何で離婚しないんだろうとミョンヨはムカつきました。
チャ編集長は言いました。
多分、暴力を振るわない時の夫は世界で一番自分に優しくて温かい人だと思ってるんだろうと。だから、我慢すればいいと。
DVの場合の加害者は、普段優しいけど、カッとなったら自分を見失ってしまい、抑えが効かないと言いますよね。
ミョンジュもいつもそう言っていました。ミョンヨが離婚すればいいと言っても。
バカね・・・とミョンヨ。
ここで降りるとチャ編集長に車を停めさせ、歩いて行きました。
チャ編集長は、逆らわず、ミョンヨが降りたあと、後ろからライトをアップにして、夜道を明るく照らしてあげました。
こういうさりげない優しさが、この作品には溢れています。
スニョンが死にました。
知らせに来たスジョンと共にお葬式に行くと、そこでは暴力夫が号泣していました。
自分が殺したようなものだと泣き叫んでいました。
ミョンヨ、なんとも言えない気分になりました。
ミョンジュの事件・・・。
やはり殺人ではありましたが、正当防衛と言えるような状況でした。
散々殴られているミョンジュを見たミョンヨは、2人の間に割って入りました。
ところが、別れなさいとミョンヨが言ったことに激高した夫が、今度はミョンヨに殴り掛かって来たのです。
アイロンでミョンヨを殴ろうとしたので、ミョンジュが思わず夫を突き飛ばしてしまいました。
夫は階段から転げ落ちました。
でも、死んだわけではなく、逃げ出したミョンジュとミョンヨを追って来たのです。
車で逃げようとしたのを見て、ゴルフクラブで車のフロントガラスを叩き始めました。
殺されると2人は思ったでしょう。
で、車を発進させたのです。夫は車と壁の間に挟まれて死にました。
ハンドルを握っていたのはミョンヨでした。
ミョンジュは身代わりに罪を被ったのです。
チャ編集長は、別れを切り出した理由を知りたいがため、ミョンヨに自分史のような小説を書くよう望んでいました。
その中に別れた理由が書かれると思ったのです。
ある日、チャ編集長の元にミョンヨからファックスが送られて来ました。
『うちの義兄を殺したのは誰だと思う?』
とだけ書かれていました。
ミョンヨ、チャ編集長を嫌いになって別れを告げたわけではありません。
おそらく、想いは今でも残っているのでしょう。
小説を書こうと思ったのは、自分の罪を告白しようと決心したせいでしょうか。