私は小泉元首相が厚生大臣の頃、毎月3,000円づつ献金をしていた。実際には、2回送った後、丁寧な手紙で、「おこころざしだけで結構です」と書かれた返事が来たので、これはだめだと思って献金を止めてしまった。後に達筆の手紙の送り主が飯島秘書であることが分かった。日本では議員が金を配って票を買うとの認識があるが、これはあべこべで、個人献金は理想形である。欧米ではひも付きでない個人献金が主体となっている。それにも拘らず断ってきた。この姿勢は理解し難いし理念が感じられない。バックに大手銀行などがいるので、小額の献金は処理が手間でうっとうしいと思ったのだろう。
当時の小泉議員に注目したのは、財政投融資、あるいは特別会計の問題点を指摘していたからだ。私は日本を形成するメカニズムについて関心があり、日本をウオッチしてきたが、財政投融資なる言葉は、その私でさえ、初めて聞くことになった。その後、自民党をぶっ壊すと宣言し、田中真紀子の支援を得て大旋風を起こし首相になった。小泉首相について評価するのは、国民に隠していた特別会計を表にさらし解決すべき課題として定義したこと、およびイラクに自衛隊を派遣したことである。
イラクへの自衛隊派遣は知識人の反対が多かった。しかし、もし、自衛隊を派遣していなかったら、現在も日本経済は低迷していただろう。バブルを間接的に崩壊させたアメリカは、諜報機関を駆使して日本経済をコントロールする手段を得た。アメリカは日本を徹底的に利用しつつ自国や旧英連邦の経済発展を実現し、同時に日本を叩くという同盟国にあるまじき行為に出たし、もっと決定的なのは世界の工場を日本から中国にシフトさせた。アメリカがおかしい、ブッシュがおかしいというのは簡単だが、現実的な選択として、アメリカと協力関係を維持しない限り、日本の経済成長OKの判断は出てこない。
小泉首相の取組は郵政民営化などのピンポイントで物足らないものだったが、首相がトップに立ってリードするという前例を作り日本の転換点を作った。公約通り自民党をぶっ壊さなかったが、結果として金権体質の橋本派などは崩れてきた。改革のパイオニアとして100点満点の70点をつけたい。因みに、私の基準で60点以上の合格点をとれる首相は3分の1以下である。
安倍首相は人気抜群な点を買い、各ジェネレーションをすっ飛ばして小泉元首相が起用した。次々法律を整備してゆく実行力には注目していたが、やがて、あの若さながら古い体質の政治家であることが露呈してきた。戦略性も感じられない。発言が軽いし、目標がしっかりしていないからブレが大きい。ドタバタ劇は彼の得意技となった。彼の言う、美しい国日本とは、多分、彼の育ってきた恵まれた環境を語っているのだろう。日本のどこを見ても美しさは昔のことではないか。彼が率先して富士山のゴミを拾いに行けば、いかに日本が汚いか分かるのいではないか。
前にも述べたように自民党は、農家・医師会・大企業などの自動投票マシーンを持つ上に、公明党の支援を受けて本来なら盤石な態勢だ。利権と政治ががっちり噛み合っている。自民党は強力な集票マシーンとして動いていた土建業界が失速したものの、公明党が十分その穴埋めをしている。その自民党が、社会保険庁の問題で、今回の参議院選は安倍首相にとって逆風となっている。国民の怒りが尋常ではないということである。安倍首相は矢継ぎ早に、参院選挙に向けた手を打ちパフォーマンスを見せている。安倍首相の真価が問われるのは、逆風の中での今後の指導力であろう。今少し、動向を見てみたい。