公開講座で,ジャズはクラシックに比べ,いかにいい加減であるかの例として,これを聞いていただいた.モンクのソロの終わりで「コルトレーン,コルトレーン」と叫ぶ,有名なテイクである.
後で考えたら,ジャズの LP としても珍しい.モンクだから可能だったのかしれない.
「コルトレーン...」については,コルトレーンが居眠りをしていたからだとか,モンクが間違えて早く終わったくせにヒステリー?を起こしてコルトレーンを呼んだのだとか,いろんな説があるようだ.LP には油井正一氏の分析が載っていたと思う.
この後コルトレーンのソロがバックと裏表ずれるが,若輩のコルトレーンが合わせて辻褄を合わせる.
ここではソロはピアノが先発だが,その後のソロ順は決まっていたのだろうか.
ジョンではうまくいかないが,「コルトレーン,コルトレーン」ならちゃんとリズムに乗る.これを2小節のボーカル (で悪ければボイス) と考えると,モンクはぴったり2コーラス分の持ち分を消化したことになる.2小節を使って次の奏者を指定したという新説はどうだろう.
コルトレーンの次は tp, b とソロが続き,ds ソロがあってこれで終わりかと思うとさにあらず,ts, as の後にまた p が登場するという変な構成.アート・ブレイキーの ds ソロがカッコいい.
セプテットで入れ代わり立ち代り延々とソロが続くのに辟易された方もおられたようだ.
この曲は演奏してもとても面白い!
You needn't はお前は要らない,すなわち,お前はクビだという意味だと聞いたことがある.後から歌詞が付けられているが,そちらは Love is over みたいな内容.
1957 録音.Thelonious Monk – piano, Ray Copeland – trumpet, Gigi Gryce – alto saxophone, Coleman Hawkins – tenor saxophone, John Coltrane – tenor saxophone, Wilbur Ware – double bass, Art Blakey – drums