Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

冬の星座

2016-06-27 08:24:33 | 新音律
昨日の本
徳丸吉彦「ミュージックスとの付き合い方 : 民俗音楽学の拡がり」放送大学業書 左右社(2016/4)
の,94 ページで,比較音楽学の前提となる音楽観として,エドゥアルト・ハンスリックの「音楽美論」(1984)が挙げられていた,

ハンスリックの主張のひとつに,音楽の目的が感情の表示になく,またそれを音楽が行えないというものがある.彼は,音楽と感情の間には一対一の対応関係がなく,オペラの悲しみのアリアを,その歌詞を変えて喜びのアリアにしても構わないではないか,と論じる.作曲家が特定の感情を表現することを意図したと主張しても,彼はそれを検証できない命題として退ける.

異文化の音楽を彼に従って扱えば,それぞれの音楽がもとの地域で果たしていた役割には意味がなくなる.このことは,当時の「未開人」,すなわち非西欧地域の音楽に対しても,西洋音楽と同じような敬意を持って接しなければならないという主張につながった.

でもここでぼくが連想するのは文部省唱歌「冬の星座」.



 .... 地上に降りしく 奇しき光よ ものみないこえる しじまの中に きらめき揺れつつ 星座はめぐる
 ほのぼの明かりて 流るる銀河 オリオン舞い立ち スバルはさざめく 無窮をゆびさす 北斗の針と ....

という堀内敬三の詩には壮大なロマンを感じる.アメリカ産の原詩が

 Won't you tell me, Mollie darling, That you love none else but me?

というしまらないラブソングと知ったときには,がっかりしたものだ,まことに,ハンスリック先生のおっしゃるとおりである.
「誰かさんと誰かさんが麦畑」が「夕空晴れて秋風吹き」に化けるのも,音楽美論の実践というわけだ.

この項 続きます.
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