Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

セントという単位

2016-06-30 10:34:10 | 新音律
個々の民族音楽の共通要素を抽出しようとすると,物理も一つの方向づけになるだろう.
 徳丸吉彦「ミュージックスとの付き合い方 : 民俗音楽学の拡がり」放送大学業書 左右社(2016/4)
には,ヘルムホルツとともにエリスの業績が紹介されていた.

ヘルムホルツの Die Lehre von den Tonempfindungen als physiologische Grundlage für die Theorie der Musik 1863 は一昨年翻訳が刊行された. 辻 伸浩訳「音感覚論」銀河書籍 (2014/12)である.
1875 年にこれを英訳したのが写真のエリス Alexander J. Ellis である.ヘルムホルツより歳上.このヘルムホルツ英語版の付録にはエリスが書き足した部分があり,現在ではこの書き足しも本文同様の価値があるとされている.日本語版はドイツ語の原本から直接訳されたので,エリスが書いた部分はない.

現在 440Hz の A 音が絶対音高の基準とされているが,上記英訳版第2版以降の付録にはこの A 音が 370-570Hz の間で変化したことを 500 年にわたり追跡し,数ページの表として示している.ここから彼の興味は民族音楽固有の音階へと発展し,「諸民族の音階」という本を書いた.日本の音階に関する記述もあり.伊沢修二,田中正平が協力したらしい.写真のエリスが羽織っているのは羽織のように見えるが...

現在誰もが使っているように,音の高さを対数で示し,オクターブを 1200 セント,半音を 100 セントと決めたのもエリスである.現在は電卓 (あるいはスマホの電卓アプリ) で音程・周波数・セント間の換算は簡単だが,上記付録には対数表が載っている...そういえば,高校で初めて対数に出会ったときも,なんでこんなに面倒なことを,と思ったものだった.

セントはまた原子炉の反応度の単位 (1 ドルの 1/100) でもある.これを先に知っていたので,セントを使う気にならず,自分の本でもセントを無視してしまった.
エリスはアメリカ人と思い込んでいたが,今回 Wikipedia でイギリス人と知った.
今後はセントと付き合うつもり.
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