Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

福永武彦「夜の時間」

2017-03-10 09:10:14 | 読書
昨日の「夜の三部作」の三作目だが,単行本の刊行は「夜の時間」が 1955 年,「冥府・深淵」が 1956 年らしい.

「夜の時間」にはA (男性) B (男性) C (女性) D (女性) が登場し,時間的には (記述の順序ではない),まず ABC の三角関係.B が自殺して D が登場し,ACD の三角関係となる.
B が実質的には主人公.ドストエフスキーかぶれで自分は神であるとし,自分の運命は自分で決めるとした結果,自殺する.B は幽霊になってまで長広舌を振るうのだが,16 トンにはピンとこなかった.作中で C が言うように,わからなくてもいいや という気になった.
B の超越者哲学は腰砕けということになり,結末は意外に常識的.A・C にとってハッピーエンドになるのは読者サービスだろうか.それにしても D がかわいそう.

昭和20-30 年代の教養ある男女の会話も行動も,まどろしく また奥ゆかしい.

この ABC の三角関係が明らかになるまでにかなりのページが必要だった.著者は加田伶太郎の名義で (このペンネームはダレダロウカのアナグラム) ミステリを数編書いている.この小説もすこしミステリっぽい.
漱石の「こころ」もミステリっぽかったな,と思ったのを思い出した.

三部作では内容はこれが普通の小説で,最初の「冥府」から,空想から科学へ的な順番に並べられたようだ.これが逆だったら,読者は自殺した B が冥府に行ったら...などと妄想を働かせたかもしれない.

「福永武彦研究会」というホームページがあって,「夜の時間」をテーマにした会合の配布資料が置いてあった

☆☆☆
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