福永武彦「夜の三部作」小学館 P+D BOOKS (2016/8)
「P+D」とは、ペーパーバック&デジタルの略称.現在入手困難となっている昭和の名作の数々を,B6判の ペーパーバック書籍と電子書籍を同時に、同価格で発売・発信する...のだそうだ.
ペーパーバックを図書館で借用した.
Amazon の商品の説明 (内容紹介)*****
人間の奥深い内部で不気味に蠢き、内側からその人を突き動かそうとする“暗黒意識”を主題に書かれた『冥府』『深淵』『夜の時間』の三部作。
作家・福永武彦の死生観が滲み出た作品群だが、各ストーリーにつながりはない。
「僕は既に死んだ人間だ。これは比喩的にいうのでも、寓意的にいうのでもない。僕は既に死んだ」という書き出しで始まる『冥府』は、死後の世界を舞台にした幻想的な作品。
『深淵』は敬虔なクリスチャンの女性と、野獣のごとき本能むきだしの男との奇妙な愛を描いた物語。二人それぞれが一人称の告白体で、サスペンス的な要素も色濃い作品。
『夜の時間』は、男女の三角関係を、過去と現在の二重時間軸構造で描くロマンあふれる作品。
解説は芥川賞作家で、福永武彦の長男でもある、池澤夏樹氏。
*****
池沢氏が著者の子息ということを初めて認識した.でも解説の評価は自分とはだいぶ異なる.以下はエンタメ作品ばかり読んでいる者の感想.
「冥府」は天国でも地獄でもなく,死者たちが再生するまでの中継地で.池沢流に言えば難民キャンプみたいなところ.
SF っぽく,生前に死後の世界を論じた学者が登場したので期待したが,その方向には進まなかった.かわりに語り手の「僕」に「踊り子」が配されるというサービスがあった.
死ぬということは,いつまでも醒めない夢をみている状態ではないかと思うことがある.そんな自分にはぴったり来る部分があった.
「深淵」では登場人物2人が交互に語る.クリスチャン女性の出だしは「童貞聖マリアさま」という呼びかけである.男は「己 (おれ) 」という一人称を使う.最後は新聞記事で終わる.
池沢氏によれば「福永の作品の中でもとりわけ優れたもの」だそうだが前半は発展がなく退屈.結末には意外性がない.しかも後味がわるい.
いちばん長い「夜の時間」については,いずれ,また.
☆☆☆
「P+D」とは、ペーパーバック&デジタルの略称.現在入手困難となっている昭和の名作の数々を,B6判の ペーパーバック書籍と電子書籍を同時に、同価格で発売・発信する...のだそうだ.
ペーパーバックを図書館で借用した.
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人間の奥深い内部で不気味に蠢き、内側からその人を突き動かそうとする“暗黒意識”を主題に書かれた『冥府』『深淵』『夜の時間』の三部作。
作家・福永武彦の死生観が滲み出た作品群だが、各ストーリーにつながりはない。
「僕は既に死んだ人間だ。これは比喩的にいうのでも、寓意的にいうのでもない。僕は既に死んだ」という書き出しで始まる『冥府』は、死後の世界を舞台にした幻想的な作品。
『深淵』は敬虔なクリスチャンの女性と、野獣のごとき本能むきだしの男との奇妙な愛を描いた物語。二人それぞれが一人称の告白体で、サスペンス的な要素も色濃い作品。
『夜の時間』は、男女の三角関係を、過去と現在の二重時間軸構造で描くロマンあふれる作品。
解説は芥川賞作家で、福永武彦の長男でもある、池澤夏樹氏。
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池沢氏が著者の子息ということを初めて認識した.でも解説の評価は自分とはだいぶ異なる.以下はエンタメ作品ばかり読んでいる者の感想.
「冥府」は天国でも地獄でもなく,死者たちが再生するまでの中継地で.池沢流に言えば難民キャンプみたいなところ.
SF っぽく,生前に死後の世界を論じた学者が登場したので期待したが,その方向には進まなかった.かわりに語り手の「僕」に「踊り子」が配されるというサービスがあった.
死ぬということは,いつまでも醒めない夢をみている状態ではないかと思うことがある.そんな自分にはぴったり来る部分があった.
「深淵」では登場人物2人が交互に語る.クリスチャン女性の出だしは「童貞聖マリアさま」という呼びかけである.男は「己 (おれ) 」という一人称を使う.最後は新聞記事で終わる.
池沢氏によれば「福永の作品の中でもとりわけ優れたもの」だそうだが前半は発展がなく退屈.結末には意外性がない.しかも後味がわるい.
いちばん長い「夜の時間」については,いずれ,また.
☆☆☆