Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

歌う鳥のキモチ

2018-11-12 09:34:29 | 読書
石塚徹,山と渓谷社(2017/11).

もともと小鳥にはあまり関心がない...とはいえ,ウェブの情報だけをたよりにカッコウの歌について中途半端な考察を披露したことはある.

そんな私にも,とてもおもしろかった.
☆☆☆☆★

第1章・基礎編では「鳥の歌」について誰もが持つ素朴な疑問(「春になると歌い始めるのはなぜ?」「夜明けに歌うのはなぜ?」「なぜ、ものまねしたい?」など)をひとつずつ解いていく.
第2章・応用編はノビタキ、キセキレイなどを題材に、第1章で概観したことの実証レポート.
第3章「歌う鳥の私生活」は、本書のメインディッシュ.個体識別されたクロツグミたちがの,日本の繁殖地までの大海外旅行,なわばり形成,つがい形成,造巣・産卵・子育て,その合間をぬっての浮気,一夫二妻,スニーカーとしての振る舞いなどのドラマ.登場鳥物たちは歌のTPOから個体を特定され,ルビオ,ドール,レモンなどと名前をつけてられ,長期にわたり,時には年をまたいで観察される.
第4章「聞く人のココロ」では、ビギナーを対象にした聞き分けの話や、歌のレパートリーによる個体識別方法を紹介.

小鳥の歌の目的は縄張りと求愛で,自分の子孫を残すための本能に基づくものである.その意味ではキモチと言っていいのかと思うが,人間のキモチも煎じ詰めれば縄張りと求愛に還元されそうだ.そういう目で登場する小鳥たちをみると,あれは誰・これは誰と,繁殖期にある若い友人たちに対応がつきそう.

この本は研究のまとめ的な側面がある.あえて言わせていただけば,一冊の本に図表を盛り込みすぎ.個々の図表が小さすぎるのだ.最後の引用文献も改行なしでびっしり,おまけにページの順番と文献番号の対比も不思議なルールに則っている.
学術的な図表とは別に挿入されている,著者自身によるイラストが楽しい.でもイラストがページをさらにせせこましくしているのもジレンマだな.

山渓のウェブでは鳥の歌声つき動画をみることができる.本書の巻末の声紋集 (これも小さすぎてよく見えない!) は動画と一緒に見なければつまらない.いっそこれらも含めた電子本を作ったら? ...kindle 版では電子本の良さを十全に生かせない.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

reading

/Users/ogataatsushi/Desktop/d291abed711d558e554bf7af66ee57d7.jpg