Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ニュートンに消された男 ロバート・フック

2018-12-31 10:01:31 | 読書
中島秀人,角川ソフィア文庫(2018/12).☆☆☆★

1996 年刊行の朝日選書の文庫化.

Amazon より,*****内容(「BOOK」データベースより)
「フックの法則」に細胞の「発見」。いまも教科書で誰もが名前を目にする科学者であり、17世紀に時代の寵児として活躍した男、フック。しかし、彼の肖像画は1枚も残されていない。それは、死後にニュートンが彼を学界から消していったからだ。なぜニュートンの論敵となったのか? 彼はどんな生涯を送り、どのような研究をしていたのか? 抹殺されたもう1人の天才、その業績と実像に迫る!! 大佛次郎賞を受賞した本格科学評伝。*****

フック 1635-1703 とニュートン 1642-1727 はほぼ同時代人だが,フックは早熟,ニュートンは晩成型.学界でのふたりは,重力が2物体の距離の自乗に反比例することをどちらが早く提唱したかをめぐっていざこざを起こすが,先に死んだフックの負けである.フックの死後イギリス王立協会会長となったニュートンが破棄したので,フックの肖像画は一枚もないのだそうだ.

しかしニュートンがフックを「消した」と言うのは言い過ぎだろう.フックはダ・ビンチ型でその守備範囲は顕微鏡観察から天文学までと広い.今風に言えば実験物理ないし工学屋だが,ニュートンは理論物理ないし数学屋で,その対象は比較的深く狭い.著者の言うように,実験より理論を一段上とみなす風潮がフックの名を残さなかったのだろう.

私見だが,純粋な物理・科学の世界では,法則を誰が発見しようと・導こうと関係なく,その内容だけが問題となるはずである.ニュートンの法則,マックスウェルの方程式,アインシュタインの相対論などは,ニュートン・マックスウェル・アインシュタインがこの世に生まれなかったとしても,早晩誰かべつな人間に提唱されただろう (関孝和 1642-1708 が年代的に彼らと重なるが,彼がニュートンより早く微分と積分を統合したとするのは誤りらしい).
にもかかわらず,こういう学界のいざこざはおもしろい.法則や方程式に至る過程は,たしかにその後の科学の発展に参考になる.

数多く挿入されている古い図版が楽しい.下はフックの「マイクログラフィア 1665」の図版.ただし出典は本書ではなく,https://blogs.ua.es/fisicateleco/2015/10/el-best-seller-micrographia-de-robert-hooke-cumple-350-anos/.

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